経営組織論と『経営の技法』#239
CHAPTER 10.1.1:経験による学習 ③内省的観察(step2)
次の段階は、内省的観察です。内省的観察は、学習者が仕事の現場を離れて自分の行動や経験、出来事の意味を多様な観点からり振返り、意味づけることを指します。このような内省的観察を行ううえで重要なことは、未来志向であることと、相互作用を伴うことです。未来志向であるということは、次はこうしよう、といったように、単に振り返るだけではなく次からの行動につなげようとすることです。このような志向がなければ、内省を行ったとしても、それは学習にはなかなかつながりにくく、いわゆる「反省だけなら猿でもできる」といった状態になってしまいます。
そして 相互作用を伴うというのは、自分1人だけで内省的観察を行うのではなく、上司からのフィードバックや同僚との対話などを通じた観察が有効であるということです。内省的観察の重要性がこれまで自分が考えてもいなかったような視点を得ることと考えれば、他者からの視点によるフィードバックや対話が重要であるのは自然なことです。
(図10-1)経験による学習と成長
【出展:『初めての経営学 経営組織論』222~223頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】
この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
最近の人事制度で言えば、目標設定とフィードバックのプロセスのうちの、特に後者のフィードバックのプロセスが、ここでの内省的観察に相当します。
自分でやる気がない従業員にも、内省的観察を迫る、という面があり、本来、自己責任で学習すべき大切なプロセスを、会社が提供してくれます。ビジネスマンとしての経験が豊富な先輩が、時間を割いて、自分自身の良い部分と悪い部分を、決められた頻度でフィードバックしてくれるのです。学校では、授業料を払ったうえで、成績を付けてくれましたが、必ずしも教科ごとのフィードバックまで期待できません。ところが会社では、給料をもらったうえで、フィードバックまで受けられるのです。
甘い、と言えば甘い状況ですが、恵まれた環境でもあり、折角なので自分自身の成長のために大いに活用するべきプロセスです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
このような教育的なサポートは、さすがに経営者になると誰もしてくれません。
というよりも、投資家である株主から経営者を見た場合、自分を育ててください、というような経営者は、経営者として任せる以前のレベルです。
やはり、経営者は自ら内省的観察を行い、人知れず努力を重ねて欲しいものです。
3.おわりに
内省を実行に移す前に、次にもう1段階、指摘されているところです。次回は、その抽象的観念化を検討しましょう
※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?