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経営組織論と『経営の技法』#266

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❶資源の重要性の要素(緊要性)
 資源の重要性のもう1つの次元は、資源の緊要性です。これは組織の生存や存続につながる資源の重要性です。もちろん、資源の相対的な取引量が多ければ、資源の緊要性も高いことが考えられますが、資源の相対的な取引量が少なくても、資源の緊要性が高いケースもあります。たとえば、機械を扱う工場などにとっては、電力は操業に欠かせない資源です。電気が止められてしまえば、操業ができなくなってしまいます。しかし、工場において電力は必ずしも相対的な取引量が多い資源ではありません。また、緊要性はその状況によって異なることがあります。
 資源の重要性においては、単にその資源が手に入るかどうかという点だけではなく、その資源が安定的かつ確実に手に入るかどうかも大事な点です。もし自分の組織にとって重要な資源が必要なときに安定的に入手できないとするならば、その組織の活動に大きな支障が生じます。
 たとえば、最近は士に埋めておくと土に返るような生物由来のプラスチックもありますが、産業で用いられるプラスチックの大部分は石油由来のものです。しかし、日本では石油をとることができず、主に中東の国から石油を輸人して調達することになります。1970年代にオイルショックが起こったように、さまざまな国際的な要因によって石油の価格は上がったり、輸入量が制限されたりします。それにより、食品の容器などプラスチック製品を製造する企業は、主たる原料が手に入らないため、価格を上げたり、製造する量を調整したりしなくてはならず、それは組織活動に大きな影響を及ぼすことになります。
 このように、組織の活動を行うために重要な資源を見極め、その資源を安定的に確実に手に入れることが、まずは組織の活動を行うためには大切になります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』247~248頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 たとえば、震災などで電力の供給が止まった時のために、自家発電装置やバッテリーを準備している会社もあります。サプライチェーンが途切れてしまうことの重大性は、東日本大震災をはじめとする最近の度重なる天災を通して多くの企業が実感し、在庫の確保や、原材料の供給ラインを複数確保しておくなど、真剣に対策を講じ始めています。
 また、江戸時代の大店は、有名な江戸の火事に備え、店をすぐに再建できるように、必要な長さに切り、穴を空けた木材を木場に一式保管しておいて、直ちに店を組み上げられるように準備していました。
 さらに、コロナ対策では、予め現金を確保したり、保険を見直したりして、取引が縮小した場合でも従業員の給与や賃料、光熱費などの固定費を支払い続けられる手段を確保している会社を多く見かけました。
 資源の依存度が高まると、会社経営上のリスクも高まりますので、それだけリスクへの対応が重要な問題になってきます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、単に目先売れていればいい、というだけでなく、このような資源の重要性を理解し、対策を講じておける能力が重要になります。

3.おわりに
 資源というと、物理的な資源がイメージしやすいですが、たとえば従業員などの人材も重要な資源です。特に、人口減少、少子高齢化が進む中で、人材確保が経営問題になっている会社も増えており、資源の依存度という視点は、幅広い問題に応用されるべき重要な視点です。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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