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経営組織論と『経営の技法』#37

CHAPTER 2.2.3:水平分業のメリット・共通費の節約
 まず、並行分業が持つメリットとして共通費の節約が挙げられます。これは、分業を行うことで、本来はそれぞれの仕事で必要になる資源を共同利用することで節約できることを意味します。たとえば、コンビニチェーンは全国にありますが、商品を店舗ごとではなくチェーンで開発して各店舗に置くことで開発の費用が節約できます。あるいは、一店で仕入れることで、各店舗がそれぞれ仕入れるよりも安く仕入れることができます。また、レストランの支店などでは、本店の評判が良いことで支店にもお客さんが多く集まることが考えられます。これも評判を共有することで評判を上げるためのコストを削減できる点で、1つの共通費の節約です。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』31頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村・久保利・芦原/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 これは、たとえば各部門が法律問題に直面するたびに社外の法律事務所に相談するのではなく、社内に法務部を設け、会社の法律問題の相談や対応を集約する場合に、当てはまるメリットです。
 たしかに、前々回検討したように、契約書を作る業務などは各部門が自ら行うべきですが、その場合でも法的な専門性の高い条項について、専門家のサポートが必要ですし、契約書全体についてもやはり法的なチェックは必要です。そして、各部門がバラバラに法律事務所に相談する場合よりも、法務部を設けた方が、同じ会社なので似たような問題を繰り返し検討する場合などのコストを削減することができます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 株主と経営者の関係で見た場合、共通費の節約はコスト削減につながりますので、会社の生産性を高め、会社の価値を高めます。収益率と同時に会社の価値も上がるので、投資家にとっては、当然喜ばしいことです。

3.おわりに
 無駄な出費が無くなることは、会社からそれだけ贅肉が減ることになりますので、会社組織をスポーツ選手に例えた場合、体が引き締まって、それだけ競争力が高まり、競技に挑んで勝つ可能性が高まることになります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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