見出し画像

経営組織論と『経営の技法』#261

CHAPTER 11:外の力を活かす
 第8章で述べたように、組織は環境の中で活動を行っています。また、環境によって組織は影轡を受けます。しかし、環境は組織にとって影響を受けるだけの存在ではありません。特に環境の中でも他の組織との関係は、組織に力をもたらしてくれることがあります。
 たとえば、自社が持っていない技術を他の企業から得ることによって短期間に製品開発につなげることも可能になります。自分たちの組織だけで十分に目標が達成できれば、それに越したことはありませんが、現在の企業組織の環境において、自分たちだけで十分である企業組織はほとんどないでしょう。製品が複雑になったり、市場が広範かつ多様になったりしている現在、他の組織の力を自分たちの組織の力にすることができるのであれば、組織としては有効な方法であるといえるでしょう。しかし一方で、他の組織も同様のことを考えていると思えば、自分たちの力を他の組織に使われてしまうことも考えなければなりません。
 この章では、自分たち以外の、外の力を組織に取り込むという観点から、組織間の関係について考えていきます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』245頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 会社組織をスポーツ選手に例えましょう。つまり、市場という競技場で、鉄鋼業や銀行業、外食業などの競技種目に関し、常に戦っているスポーツ選手が、会社です。
 そして、競技種目には、1人の選手同士が闘う個人競技だけでなく、複数の選手同士が闘う団体競技もあります。さらに、個人競技の中でも、長距離走のようにお互いの駆け引きが必要な場合は、敵の敵は味方のような、競争相手なのにお互いに協力し合う場合があるかもしれません。
 このように見ると、単に身体能力を高めるだけでなく、競技種目に応じた身体能力を考えて、身体能力を高めていく(鍛えていく)ことが必要であり、会社組織もこのような視点から考えなければなりません。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 ここで、駆け引きをすることも、競技本来の競争をすることも、さらにそのために体を鍛えることも、全てスポーツ選手の能力として必要です。
 経営者は、スポーツ選手の身体に相当する会社組織を動かす役割を担いますが、この全てをバランスよく継続的に行うことが必要です。投資家である株主から投資対象となる経営者の資質の問題として見た場合、このようなトータルな能力が求められるのです。

3.おわりに
 他社との関りを、スポーツの中でのチームプレーや駆け引きのようなスキルの問題で片づけるのではなく、さらにそれをスポーツ選手に求められる能力の問題と位置付け、組織作りにまで考えを及ぼしていきましょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?