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鈴木竜太教授の経営組織論を読む

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「法と経営学」の観点から、「経営組織論」を勉強します。テキストは、鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)です。教授にご了解いただき、同書で示された経営組織…
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2021年2月の記事一覧

経営組織論と『経営の技法』#268

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❸資源の統制力  資源の依存度を決める3つ目の要因は、他の組織が持っている資源の配分や使用法の決定に対する裁景権の大きさです。別の言い方をすれば、資源の統制力です。自分たちにとって必要な資源を持つ組織に対して、もしその資源の配分や使用法に関して裁量権を多少でも持てれば、依存度は低くなります。反対に、資源の使用について何も口を出せなければ、依存度は高くなってしまいます。  たとえば、特定の小麦粉を扱う業者に対して、

経営組織論と『経営の技法』#267

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❷資源の入手可能性  資源の依存度を決める2つ目の要因は、その資源の入手可能性です。もし必要な資源が特定の組織からしか得られないものである場合、その資源を持つ組織に対しての依存度は高くなってしまいます。なぜなら、その組織からしか資源が得られないからです。  たとえば、パンに使われる小麦粉にはさまざまな種類がありますが、もし自分たちのパンの味を出すために特定の小麦粉を使用し、その小麦粉が特定の業者からしか入手するこ

経営組織論と『経営の技法』#266

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❶資源の重要性の要素(緊要性)  資源の重要性のもう1つの次元は、資源の緊要性です。これは組織の生存や存続につながる資源の重要性です。もちろん、資源の相対的な取引量が多ければ、資源の緊要性も高いことが考えられますが、資源の相対的な取引量が少なくても、資源の緊要性が高いケースもあります。たとえば、機械を扱う工場などにとっては、電力は操業に欠かせない資源です。電気が止められてしまえば、操業ができなくなってしまいます。

経営組織論と『経営の技法』#265

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❶資源の重要性の要素(取引量)  1つは、その資源の相対的な取引量です。これは、自分たちが取引している資源に占める特定の資源の割合を指します。これが大きいと、資源の重要性が高くなります。たとえば、パン屋さんにとって、小麦粉の相対的な取引量は高くなります。なぜなら、パン屋さんの商品はほとんどパンであり、パンを作るには小麦粉が不可欠だからです。ですから、パン屋さんは小麦粉を卸す業者に対して依存度が高くなり、業者が小麦

経営組織論と『経営の技法』#264

CHAPTER 11.1.1:資源の依存度の要因 ①3つの要因 ❶資源の重要性の意味  このような資源の依存度は、大きく3つの要因によって決まります。それらは、資源の重要性(資源の相対的な取引量と必要性)、資源の配分と使用に関する自由裁量、資源コントロールの集中です。  まず 資源の菫要性は、依存する側にとってのその資源の重要性を指します。もちろん、資源が重要であればあるほど、相手に対する依存度は高まり、相手からの影響力は強いものになります。  このうち資源の重要性には、少し

経営組織論と『経営の技法』#263

CHAPTER 11.1:資源依存パースペクティブ ②具体例と定義  しかし この関係は、常に均衡がとれているわけではありません。自分たちはAという組織の持つ資源を必要としていても、Aは、自分たちが持っている資源を特に必要としていないこともあります。たとえば、資金繰りで困っている企業は、しばしば銀行から借入れを必要とします。銀行は資金を貸す代わりに、企業経営に指図をしてくることがあります。もし資金を貸した企業が貸倒れになってしまえば、銀行は損害をこうむるからです。  これらの

経営組織論と『経営の技法』#262

CHAPTER 11.1:資源依存パースペクティブ ①イメージ  組織活動を行ううえでは、自分たちと異なる目的を持つ他の組織の影響はなるべく受けたくはありません。しかし、どうしても他の組織の力を借りなければ、目的が達成できないことも少なくありません。もちろん、これは他の組織にとっても同様のことです。  このような組織と組織の関係は、資源の依存関係で成り立っていると考えることができます。つまり、ある組織が自分たちに必要な資源を持ち、一方で自分たちが他の組織が必要としている資源を

経営組織論と『経営の技法』#261

CHAPTER 11:外の力を活かす  第8章で述べたように、組織は環境の中で活動を行っています。また、環境によって組織は影轡を受けます。しかし、環境は組織にとって影響を受けるだけの存在ではありません。特に環境の中でも他の組織との関係は、組織に力をもたらしてくれることがあります。  たとえば、自社が持っていない技術を他の企業から得ることによって短期間に製品開発につなげることも可能になります。自分たちの組織だけで十分に目標が達成できれば、それに越したことはありませんが、現在の企

経営組織論と『経営の技法』#260

CHAPTER 10.3.2:実践共同体における学び ③応用とまとめ  業務外の交流会や勉強会においても、継続的に活動をしていく中で、黙って他人の意見を聞いている段階から、だんだんと発言をしたり、自分が情報を提供する側に回ったりするようになります。このプロセスが学習になるわけです。  このように考えれば、単にOJTで経験を積ませることや、本を読ませたり自己学習を促したりするだけでなく、このような場を作ることで学習を促すことができますし、職場が実践共同体の色彩を強めるほど、そこ

経営組織論と『経営の技法』#259

CHAPTER 10.3.2:実践共同体における学び ②意義  このようなプロセスを、正統的周辺参加(メンバーシップを持ったコアではない仕事への参画)から十全的参加のプロセスと呼びます。正統的周辺参加の段階は、メインの仕事をするわけではありませんが、先輩の仕事を手伝ったり、サポートなどをしたりすることを通して、あるいは仕事中のちょっとした先輩の言葉などを通して、さまざまなことを学ぶことになります。  そして立場が変わり、また別のことを学ぶことになればこの実践共同体に参加してい

経営組織論と『経営の技法』#258

CHAPTER 10.3.2:実践共同体における学び ①2つの段階  私たちは、組織内外のこのような実践共同体での活動を通して学習をしていくと考えられるのです。たとえば、組織の中のプロジェクトチームも職場も、会社の外の交流会も学校も部活も実践共同体といえます。私たちは、この実践共同体にメンバーとして参加しながら活動をし、だんだんとそこでの役割を変えながら、実践共同体の活動に関与していくことになります。  たとえば、仕事においても新人は、いきなり大きな仕事を託されることはほとん

経営組織論と『経営の技法』#257

CHAPTER 10.3.1:実践共同体とは何か ②3つの要素  協働の感覚とは、自分たちの共同体がどのような価値を持ち、どのような目的で活動しているかをきちんとメンバーが理解していることを指します。  相互依存の関係性は、メンバー間の関係が一方通行の関係でなく双方向であり、互いに依存的な関係であることです。つまり、共同体のメンバーがお互いにとって必要な存在である状態であるほど、学習はより行われることになります。お互いが共同体にとって必要であるからこそ、教え合い、学び合いが起

経営組織論と『経営の技法』#256

CHAPTER 10.3.1:実践共同体とは何か ①イメージ  学習の場は、さまざまな形で作ることができます。たとえば、職場における朝礼もそこでアドバイスをもらうことや、モデルとなるような人の活動を知ることで学習につながるかもしれません。あるいは、個々人が独立で仕事をしていくのではなく、同じ場を共有しながら一緒に仕事を進めていくことも、そこでさまざまな学びが生まれるのであれば、1つの社会的な学習の仕組みということができるかもしれません。これらの仕組みは、日常的な業務の中におい

経営組織論と『経営の技法』#255

CHAPTER 10.3:実践共同体 ②相互作用の必要性  もう少しいえば、学習が新しい知識や気づきによってもたらされるとするならば、自分の外側のものや人との相互作用によって初めて学習は起こると考えることができるのです。そう考えれば、学習というのは、社会的なプロセスの1つだと捉えることができますし、組織において学習を促すには、より良い社会的な学びの仕組みを作ることが大事なのです。  たとえば、スポーツチームやオーケストラでは、練習に参加して自分の技術を磨くことも上達において重