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当たり前のことは今更言われないという話

「おひとりさまの教祖”上野千鶴子(74)が入籍していた」

2023年2月21日、そんなニュースが目に飛び込んできた。

上野千鶴子といえば日本のフェミニズムの旗手で、独身を貫く女性の味方として最近は人気を博していた人物だ。
1人でも楽しく生きられる、ということを発信しておきながら、実は自分は男性と「おふたりさま」をしていた。上野氏の意見に共感しておひとりさまを貫いてきた女性たちにとって、これほどショックなニュースはないだろう。新世代の価値観を発信しておきながら、結局自分は「パートナーと過ごす老後」という旧来の価値観を選んだのである。

このニュースをみて僕はなんだか胸糞悪いニュースだなあと思ったが、考えてみると他にも「これからの時代はこう!」という無責任な言説は巷にあふれていることに気づいた。

例をあげていこう。ぱっと思いつくものを下にリストアップした。

  • 低収入でも幸せ

  • フリーランスで自由な生活

  • これからはジョブ型

とりあえず3つだが、探せば他にもたくさんあるだろう。いずれも最近よく聞く言説だが、どれも鵜呑みにすると危険なんじゃないかと思った。これらに共通しているのは、「そう言う場合もあるが、多くの場合においてそうではない」ということである。

例えば最初の「低収入でも幸せ」は、「金は幸せに直結しない」「金じゃなくて○○が幸せになるために重要」といった議論とともに主張される。確かに金さえあれば幸せになれるわけではないし、幸せと感じるためのファクターが金の他にもあるのは事実である。しかし、これが意味するのは「高収入だからといって必ずしも幸せになれるとは限らない」ということであって、「低収入でも幸せ」であることを意味しないのだ。この2つを混同した主張が目立つ。

そうやって考えていくと、無理のない範囲で稼げるだけ稼いでおいた方がベターなのだが、こういう当たり前の主張はあまりなされない。逆に、そういった当たり前に対してある意味「逆張った」意見が取り沙汰され、注目を集めることになる。今回であれば「低収入でも幸せ」がそうである。

他の例に関しても同じだ。フリーランスで自由な生活、というが、フリーランスは自分で仕事をとってこなくてはいけない点や、収入が不安定な点がネックだ。優良企業に就職してサラリーマンとして働くのが良い、という当たり前の主張に対する逆張りとしてフリーランスは持ち上げられている。

また、今の日本のほとんどの企業がメンバーシップ型であるという当たり前があるからこそ、これからの時代はjob型だ、という主張が目立って取り上げられる。

メディアはいつも大勢に対する小さな変化を大きく取り上げるが、それで大勢を見失ってはいけない。「これからの時代は~」という意見を目にしたら、その裏にある当たり前を要チェックだ。

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