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個展カウントダウン<17日>:パリ、ポンデザールの眺め

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皆さんこんにちは。成瀬功です。

パリ滞在記。初めてのパリへは、撮影機材は4X5という大判カメラを持っていきました。シュナイダーというレンズメーカーの大判用レンズの描写に惚れ込んで、これでパリを撮りたい、と思って持っていきましたが、三脚も大きく、ジェラルミンケースに格納したカメラと備品合わせて、総重量10キロ以上の大荷物を担いで、極寒の中、毎日8時間は歩いていました。

パリには、セーヌ川にかかる橋がいくつもあります。その中で、唯一他の橋と作りが違い、車の通れない橋があります。それが、ポンデザール(芸術橋)です。そのポンデザールは、シテ島という島に一番近く、その島を正面から眺められる非常に景観の美しい橋です。私は、まず初日にこの橋を渡ってみました。

その橋から眺めるシテ島は、この上ない美しさに見えました。普通なら、その美しさを写真にすると思われるでしょう。でも私は、美しいものはそれのみで美しい、という考えから、敢えて撮らないことを信条としていました。ですので、ポンデザールを渡った時も、「このシテ島の風景を写真に撮るようになったら俺はもう失格だ」と感じて通り過ぎていったのを覚えています。

私はとにかく歩きました。朝までに用意したフィルムは10ホルダー分の20枚。それを大事に一枚ずつ丹念に撮影していきました。2月の真冬のパリの日照時間は短く、なかなか陽が差してくれません。今回ご紹介している写真も、ほんの一瞬陽が差した瞬間を逃さず撮影したものです。モノクロ写真は光と影の芸術です。光がなければ影もありません。私は凍える思いをしながら街を練り歩き、光と影を求めて彷徨い続けました。

寒さと荷物の多さに疲れ切って、カフェに入り、そこで頼んだショコラショー(ホットチョコレート)の美味しかったことと言ったら、いまでも忘れることができません。毎日ヘトヘトになるまで歩き、夜は次の日のためにフィルムをホルダーに装填し(完璧な暗室の中でしか作業できないため、夜、持参した暗幕を窓に目貼りして作業をする必要がありました)、翌朝は夜明けと共に撮影を開始し、陽が暮れるまで歩き続ける、という日課をこなしていきました。

旅程は3週間でした。そして2週間が経った頃、私にある異変が起きました。それについては、次回お話ししましょう。

それではまた次回まで。

成瀬功

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