見出し画像

迫りくる人間拡張時代、未来はどうなる?

※下記は当イベントのアーカイブ動画になります。


12月3日に、Human Augmentationをテーマにしたイベント「XX年後の未来を覗く。Human Augmentaion革命」をMicrosoft様と共催させていただきました。大変ありがたいことに、登壇者は、日本マイクロソフトCTO 榊原 彰 氏、Human Augmentaionの第一人者である東大教授 暦本 純一 氏、ウルシステムズCEO 漆原 茂 氏、テレイグジスタンスCEO 富岡 仁 氏、そして弊社のGPである中島 徹と、非常に豪華なゲストをお呼びしてイベントを開催させていただきました。
後日多数の方から、アーカイブ動画やイベントレポートを出してほしいとのご要望を頂き、(1か月経ってしまいましたが)本noteにて公開させていただきます!

今回は、パネルディスカッションをレポートさせていただきます。パネルディスカッションでは、漆原さんにモデレーターを務めていただき、視聴者の皆さまからのQ&Aに回答させていただきました。

ーどんな近未来を頭の中で考えていますか?

暦本先生「攻殻機動隊などのアニメを始めとして、Human Augmentaion分野に関しては、日本は先駆的であり、コンセプチュアルには先行していると思います。なので、子供の夢を研究・事業で力いっぱいにやれる世界が来てほしい、未来をどんどん作っていける世の中を作りたいと思います。」

榊原さん「マインドアプロ―チングができる世界を期待しています。突如、ヘリコプター操作のスキルをDLできる、みたいな。意識をDLするのも良いけど、身体を伴うスキルだとすると、知識をDLするだけじゃなくて、筋肉の動き方もコピーしないといけない。そうなったら、Human Augmentationの総力戦になります。あと、その先にあるのは、スマートシティとの関わり方で、とある必要な場所にいくと必要なスキルが身につけられる、みたいな外界とのインタラクションを踏まえた世界が実現すると面白いですよね。」

中島さん「日本だとロボティクスを想像することが多いですが、もっと違う分野同士が混合すると変わってくると思います。バイオインフォマティクスみたいに、コンピューターサイエンスとバイオサイエンスが融合するとか、異分野が交わることで新しいものが生まれてくると思います。」

富岡さん「抽象度高い言い方をすると、ロボットとインターネットで構成されたネットワークの中で、人間が繋がって自由自在に複数の時空間に存在し、あらゆるインタラクションが生み出したいというのがゴールです。身体の制約から解き放たれて自由に暮らしていけたらいいなと思います。」

ー世界を変えるために生活者側も意識を変える必要がある?


暦本先生「新型コロナウイルスがきっかけで、生活者側の意識も変わりましたよね。例えばZoomは突然出てきた技術ではなくて、ただ受け入れ側が変わっただけです。学会でも、この研究はいつ実現されますか?という質問を頂きますが、それはつまり、いつ受け入れ側のマインドが変わりますか?ということになります。技術が完璧になるまで生活者が変わらないわけでもないので、必要なのは、技術でのブレイクスルーでなくて、人々のマインドチェンジだと思います。」

榊原さん「ファーストレスポンダー、例えば医療関係者や救急士の方々が緊急対応するというのがリモートで可能になるとか、自動化されるとか、そういったある分野は社会の急用性が高まっているのではと思います。」

ー皆さんが注目している技術は?

暦本先生「具体的にどれか1つというのは難しいような気がしていて、Human Augmentationの要素技術を組み合わせることが必要と思います。でも1つ挙げるとするなら、Neuralinkみたいな侵襲型のブレイン・マシーン・インターフェース(以下、BMI)には興味があります。また、今、ノイズキャンセリングが搭載されたイヤホンが定着していますが、あれはいわゆるスパコンを耳に指して歩いているようなものです。あの小さなイヤホンに、アプリを入れることは可能性が高いと思っていて、音声や言語を聞き分けできるようになる等の聴覚拡張は近々市場として大きくなると考えています。」

榊原さん「各部位と統合的に繋がって、それぞれにフィードバックをすることが必要だと思っています。例えば、BMIだけやっています、筋肉だけ増強します、ではなくて、相互的にFBできる技術を組み合わせて作るべきではないかと考えています。」

富岡さん「気になっている技術は、侵襲型BMIに着目しています。侵襲型BMIを通じて、どうロボットを制御できるか?を期待しています。Telexistenceは、遠隔地で手足を動かすことで、ロボットの部位を動かす仕組みですが、侵襲型BMIの技術がやってきたら、遠隔操作する人は手足を動かす必要がなくなります。非侵襲型BMIを使った操作については、今はまだノイズが多いですが、例えば意識の指令を電気信号でコントロールできるようになれば、まだまだ進化できると思います。」

ー参入障壁も高く、大企業も手を出しづらい分野。資金も少ないスタートアップではどうしているか?

富岡さん「Telexistenceは特にロボティクスとかVRとか単体でなく、複数のシステムを組み合わせるので、開発にとんでもないお金が必要となります。日本の資本市場だけでは難しくて、アメリカへの資本市場にアクセスしないと難しいと思います。」

ーどういう技術を持つ会社に資金投入が考えられるか?

中島さん「面白い技術を持っているのは大前提ですが、もう1つ大事なポイントは、事業化できるかどうかを見ています。事業ハードルが結構高いので、Exitがしっかり跳ねるかどうかで見ており、それは複数の技術を融合してできるかという点に着目しています。例えば最近は、バイオサイエンスと、電子工学やロボティクスが融合していく技術を見ていますが、そういった技術は革新的なものになりうると思います。加えて、投資するか否かの点ですが、実態として何をするか?も大事です。事業として売上を上げていかないといけない、そのためにはB2Bができるかどうか、B2Bのニーズをしっかり掴んでいるかどうかを意識しています。」

富岡さん「3年半前に始めたとき、我々も技術ドリブンで始まっているので、作りたいものを作りましたというように議論があさっての方向に行きやすかったです。そこでまずは、盤石な基盤づくりをするためにB2Bを狙いました。」

ー自動化・自立化すれば、人がいらなくなる世界になりうる。人間の拡張性と人間が不要になる境界線は?

暦本先生「これを考えるには2つの軸があると思っていまして、1つは人の性能効率化の軸と、もう1つは人の満足度や欲求の軸です。義足等は性能効率の軸だと思います。将来は完全自動化になるかもしれませんが、人間ができるところはやっていくんじゃないでしょうか。ここには、ハイブリッドがあると思います。ただ一方で、パフォーマンスに関わらず、ぐっすり寝れるパッチは自動化しないですよね。テクノロジーが来ることで、これまで無理だと思ってたことが実現することは嬉しい、それは自分の楽しみなのでロボットには渡せないという考えになると思います。私は、そこに境界線があると思います。」

ービジネス面では儲かるのか?お金は集まるのか?

中島「私は、今こそまさに張り時なんじゃないかと思います。市場調査を信じるのではなく、自分たちで市場を切り開いていかないといけないと思います。」

富岡さん「技術が飛んでいるからこそ、事業計画は地に足ついた数字で勝負しています。最初は話を聞いてくれないところが多かったですが、他プロダクトと変わらず、B2BでPMFできてやるべきことをしっかりやれば、軌道に乗るはずです。」

暦本先生「私は事業ではなく研究室ですのでスケールが小さいですが、国のお金だけじゃなくて、Human Augmentation社会連携講座を通じて、Sonyさん・凸版さん・Tier4さんとかと、Human Augmentation分野に興味のある企業さんたちのおかげで、大学でやってる研究レベルでいえば、かなり支援してもらってます。」

ー技術・事業化ハードルは?

榊原さん「基本的に、技術の発展面では楽観的に考えています。社会のマインドセットは一気に進む時点がいつか来るので、3~5年先にあたりをつけるということだと思います。何より難しいのは、法律を変えることだと思っています。Human Augmentaion分野でいうと、特に医療系はハードルがかなり高いのではと考えていて、例えばBMIをやるのに必要なことは必ず増えてきます。ポリシーメイキングやロビー活動をどこまでできるか、政府であり法律でありの後押しがないと実現できないと思います。」

ー人間複製等のテーマはポジティブにもネガティブにも。人間の存在観念に影響を与えるのはどうなのか?


暦本先生「最近、大学でも遠隔授業が普及していますが、外から自分を見ている感覚になります。実は、分身化はもう始まっていると思います。生徒も録画した授業を2倍速で見ている時代で、フィジカルの空間で1対1でやっていたような時間には戻れないと思います。いつか、人と話しても面倒になったら倍速で進むとか考え出すと、分身の第一歩なのではと思います。フィジカルな私もあった上でのアバター的な私を、社会は受け入れ始めている。」

中島さん「死生観や倫理観っていうところは、Human Augmentaionへの投資はやっている以上すごい気を遣っています。VCの仕事というのは、色々な会社に投資するので、結果として社会をアクセラレートすることになります。なので、不老不死みたいな分野は手を付けてはいけない領域であり、そこまでは踏み込まない、投資しないと決めています。」

ー最後、ご登壇者の皆様からHuman Augmentaion分野でチャレンジする方々へのエールを!


富岡さん「日本のアカデミックの方々がこの分野で提唱されていることは非常面白いと思います。ただ、アカデミックから、ビジネス・社会実装に行く過程に大きな溝があると思っていて、そこがアメリカと比べると日本は結構欠けている印象です。アカデミック以外にも、ビジネスサイドも重要になりますので、ビジネスサイドの方々も是非一緒に挑戦してほしいです。」

榊原さん「Human Augmentaion分野をやっていると、自己の存在だとか、人間としてどう生きるべきかとか、そういうことを考えるきっかけになります。その点を考えてみると、ますます深みが増してやりがいが増してくるんじゃないかと思います。皆さんは社会にとって非常に重要なことをされています。頑張ってください!」

暦本先生「私は長くコンピューターサイエンスをやってましたが、インターネットにが社会に浸透して、人々の生活は変わりました。それと同じように、人間自身の存在も拡張できる、ますます”人間”に近づいてきています。サービスや技術を取り込む側が未来を創っているので、どんな未来を創りたいかという点が大事になります。私の創った未来はこう浸透した、という方が増えていただけると良いなと思います。」

中島さん「Human Augmentaionはこれから未来を創っていくところです。是非ともみなさんに参入してきてほしいのは当然思うところですが、特にエンジニアの方が自分のテクノロジーを持って、新しい世の中を創るんだという意思が大事です。でも同時に、投資家や企業の方々など支えてくれる方も非常に重要です。まだまだという段階でも、人を出したりとか、導入するとかどんどん盛り上がる人たちが増えてきてほしいと思っています。」

漆原さん「結構遠いのかなと思ってた未来が意外と近いのかなということ
に気づかされました。投資家だけでも、エンジニアだけでもできない。色々な立場の人が協力することで、素晴らしい未来を実現できるのではと考えています。」

今回ご登壇いただいた皆さま、イベントに参加してくださった皆さま、最後まで読んでくださった皆さま、ありがとうございました!

Human Augmentaionに携わりたいという方へ

「Human Augmentaionという領域に、もっと色んな人たちが参加してほしい」
私たちは15th Rock Venturesの兄弟組織に、Spireteというスタートアップスタジオを運営しています。アカデミックから事業化までバリアがあるところを、企業さんの力を借りて乗り越えようということをしています。そこで今回、日本初のHuman Augmentaion分野に特化したアクセラレーションプログラム「Human Augmentaionイノベーションチャレンジ」を実施することにいたしました。より多くの人にご参加いただきたいと考えているため、Spireteスタッフだけでなく、大企業の方・コミュニティメンバーの方々とも一緒に共創していきたいと思います。そして、優勝チームには、15th Rock Venturesから500万円を出資させていただきます。

スタートアップとして応募したい方(法人化されてなくもOK)、コミュニティメンバーとしてサポートしたいという方、このプログラムに少しでもご興味をお持ちになっていただいた方は、ぜひお気軽に下記アドレスまでご連絡ください!
contact@15th-rock.com

嬉しいお知らせ

1/5付の日経産業新聞の1面にて、Human Augmentaionを特集いただきました!弊社の投資先であるLongan Vision社、15th Rock Venturesについてご紹介いただいております。

日経新聞写真


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?