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なぜわれわれはカードゲームを作ろうとしているのか

どうもかざかざです。

そもそもなぜわれわれがカードゲームを作ろうと考えたのかのお話です。初心を忘れないために書いておきたいと思います。

前の記事での述べたことですが、この企画は、認定NPO法人サービスグラントが今年開講したソーシャルアクションアカデミー2022ソーシャルアクション学科で生まれた企画の1つです。このアカデミーの枠組みの中で様々なNPOの取組みについて代表の方や担当者から直接お話を伺う貴重な機会を得ました。それぞれのNPOの取組もさることながら、自身の問題意識をもって社会的課題の解決にむかって実績を積み上げてきた関係者の行動力に圧倒されること大でしたが、お話を伺う中で自分の中で引っかかってきたキーワードが「グレーゾーン」でした。

グレーゾーンとは

ここでいう「グレーゾーン」とは、名前の付いた「社会的課題」に類する困難や要素は持つもの、行政やNPOの支援の対象から漏れてしまうような、カテゴライズが難しい層を指しています。例えば、発達障害では、グレーゾーンという言葉とセットで語られることも多いですが、発達障害については、診断を得づらいという事情が背景にあります。

行政や様々なNPOが様々な問題意識で社会的課題に取組み、解決に向けて活動していますが、その支援の対象から漏れてしまいがちな、「グレーゾーン」の子どもたちが抱える生きづらさを少しでも解消できるアプローチはできないかと考えたのが、このカードゲーム制作の動機です。

社会的課題と大小様々な名前のない「こまった」

生きづらさは大小様々な名前をつけづらい個別の「こまった」として具体的に表に出ているのではないかと思います(以下はあくまで一例です)。

生きづらさの中多様な「こまった」が示された図。例として掲載されている「こまった」は次のとおり。自宅に居場所がない 子ども 、朝食がとれない 子ども 、子どもが発熱。しかし、仕事が休めない 家族 、人と話すが苦手 子ども 、部屋の掃除ができない 家族 、ゴミが捨てられない 家族 、男手がないので、家事での力仕事ができない。 家族 、落ち着いて勉強できる環境がない 子ども 、日本語を母国語としていないので、行政から情報を受け取りづらい。 家族 、学校でいじめを受けている 子ども 、PCの使い方がわからず、インターネットで買い物できない 家族 、養父との関係がよくない 子ども 、塾にいけず、授業についていけない 子ども 、蛍光灯が交換できない 家族 。
大小様々な名前をつけづらい個別の「こまった」(一例)

この「こまった」が集まると、生きづらさになる。行政やNPOはそれぞれの社会的課題に即して、当事者のこれらの「こまった」を拾い、必要な支援をしてるのだと思います。しかし、行政やNPOの支援が入らない子どもたちやその家族は1つ1つの「こまった」に自分たち自身で向き合わなければならなりません。1つ1つの「こまった」は仮に小さいものであっても、それらが積み重なっていくと、当事者の生きづらさにつながったり、家庭の生活のバランスが崩れ。そして、深刻化すると、行政やNPOの支援が必要な状態になる。

行政やNPOの行う特定の課題に対するアプローチで多様な「こまった」に対応することは難しいと思うので、ゆるやかな人間関係で解決する方法を考えてみたい。心理的な側面に対する支援や私生活に及ぶ支援が必要なことを考えると、誰でもというわけにはいかない。そこで、顔の見えた関係同士による特定個人を対象とした支援、というと、ちょっと固い言い方ですが、知っている者同士の助け合いをもっと活性化できないか、特に子どもにとっては、家族や学校の先生以外の大人によるアプローチが必要ではないかと思いました。

そこで、1つの解として考えたのが地域、特に自宅からおおよそ徒歩15分圏内のご近所と言える範囲での大人と子どもの顔の見える関係づくりです。子どもにとって「ちょっとそこに行ってくる」と言える徒歩15分圏内。

徒歩15分圏内であれば、生活圏がかぶるので会う頻度が高い、そして、一度知り合えば、同じ生活圏なので共通の話題を持ちやすい。もちろん隣人関係で全ての「こまった」が解消するのは難しいかもしれませんが、軽減はできるのではないか。

すでにそういうご近所での助け合いは普段からいろいろなところでされていて、表面には出てこないけど、多くの「こまった」が解決されているのだろうと思います。だから、それをさらに活性化するような。

そうだ!カードゲームを作ろう!

子ども目線でみた周囲の大人の人間関係を整理してみました。

現状から親友レベルまでの次の5段階が示されている。現状(地域での人間関係があまりない)、顔見知り(挨拶できる大人がいる)、知り合い(今日あった出来事をを話せる大人がいる)、友達(特に何かなくても普段からコミュニケーションが取れる)、親友レベル(地域を自分の居場所だと感じ、困りごとを自覚した時に相談できる相手がいる)。
子供目線でみた周囲の大人の人間関係

理想は親友レベルですが、現状が、地域で知っている大人といえば、家族か学校の先生くらいで、それ以外の大人と関係があまりないところからのスタートだとすると、まず目指すべきはゼロイチの、現状から顔見知りになるとところです。

楽しい時間を少し共有するだけでも顔見知りづくりに繋がるのでないか、その有効なツールになるのではないかと考えたのが、カードゲームです。

初めての人同士やあまり話したことがない人と場を共有した際に、間が持たなくなってしまう状況は、大人にとっても辛いのですが、カードゲームを間に挟むことで、ゲームという共通の話題ができるので、ゲームをしながら話してもよいし、黙っていることも許容されます。この「無理に話さなくてよい」という気分は重要です。向き合ってゲームをしますので、知らない者同士が最初にコミュニケーションを取る場として、有効なツールになりえると思いました。私自身の経験でも、学校の休み時間や修学旅行に普段話さない人とワイワイやっていた記憶が。

10分から15分でも楽しい時間を共有し、顔を覚え、ゲームの中で声を掛け合うことができるなら、全く知らない人同士の関係から「顔見知りに」にステージアップできるかも。ゲームしたあとにまちで、顔を合わせたら、「あ、あの人だ!」「お、この前のあの子だ、元気そうだな」と思い、挨拶したりするような関係に近づくのではないかと。

既存のカードゲームを用いてゲーム大会を開くというアプローチも考えられるのですが、どういうカードゲームならそれが実現できるのだろうという深く考えるプロセスをツールを作りながら踏みたかったということと、単純に自分たちのアイデアで新しいゲームを制作し、新たな遊びをこの世の中に1つ追加したかったという単純な動機もありまして、今回のプロジェクトではカードゲームを制作することとにしました。

このカードゲームが目指すところ

冒頭から大きなことを書きましたが、これから作ろうとするカードゲームが目指すところは、上でも述べましたが、このゼロイチのところ、困りごとに周囲が気がついたり、気にかけたりできるよう人間関係の第一歩のきっかけづくりになるツールを作ることです。

子どもは、家族や学校の先生以外に、徒歩15分圏内に言葉を交わせる大人ができたり、家と学校以外に、地域という場があることを知ることができたり。

大人も自分の周辺にどんな子供が住んでいるかを知ることができたり、自分の近所の課題を自分ごととして少し考えるようになったり、同じ地域のことを考える大人の友人ができたり。大人たちが自分の住む周辺にどのような子どもが住んでいるのか知るだけでも違うはず。

カードゲームで一緒に遊んだ子どもと大人にそんな行動変容が起こるようなカードゲームを目指したいと思います。そして、そのためには、このカードゲームはまちのイベント、カフェや地域の共有スペースで使ってもらいたいので、主催者が選びたくなるようなカードゲームを目指します。

地域の周りの大人たちと子供の関係ができることにより、地域が心理的安全性の確保された居場所になり、子供の生きづらさを少しでも解消することを目指して、頑張りたいと思います。

かざかざ

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