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困ったらアウトローはもう古い?東北学院バッテリーの巧みな配球術

○1回戦 東北学院5-3愛工大名電

東北学院が愛工大名電に勝利すると予想できた人は果たして何人いたのだろうか。

私学4強+至学館+誉を撃破し、愛知県大会を完全制覇した愛工大名電は優勝候補の一角とされていた。 

さらに東北学院は春夏通じて初出場のチームであり、選手の所作を見ていても、失礼ながら強いチームには見えなかった。

しかし東北学院がこの試合を制した。

東北学院はなぜ勝てたのか。

勝因は巧みな配球術にあったと分析する。

◆アバウトに投げ込む


東北学院の伊藤投手は地方大会36回を投げ、与四死球3というコントロールの良さが目立った。
しかし、コースにピンポイントに投げ分ける能力が高いというわけではない。
ほとんどの球をおおよそ真ん中を狙ってアバウトに投げ込む投球スタイルだった。
そうすることで、シュートするストレートは打者の直前で少し動き、コースに決まることもあった。

また、加藤捕手も伊藤投手の特徴をしっかり理解しており、ストライク先行のカウント(0ー2、1ー2)以外は真ん中に構えることが多く、そこにシュートするストレート、スライダー、チェンジアップ、スプリットを要求していた。

コースを狙わずに真ん中にアバウトに投げ込むことで、ストライクが先行し、常に投手有利なカウントでピッチング ができていた。

◆アウトコースは意外と打たれる

以下は東北学院バッテリーの配球(コース別結果球数)である。

アウト(バント以外)
真ん中13球 外角5球 内角7球

ヒット
真ん中2球 外角5球 内角1球

比較対象として愛工大名電バッテリーの配球も記載しておく。

アウト(バント以外)

真ん中7球 外角8球 内角6球

ヒット
真ん中3球 外角6球 内角0球

特徴的なのは、両チームともに、最もヒットを打ったコースは外角である。
そして意外にも真ん中はそれほど打たれていない。

◆インコースはアウトコースに勝る


先程のコース別結果球数を見てわかる通り、この試合でインコースがヒットになったのは一球だけである。
しかも打ったのはドラフト候補の田村俊介選手である。
つまり、ドラフト候補レベルは別としても、高校生レベルであれば、インコースを打つのは至難の業なのだ。
東北学院バッテリーはコースを狙わずに真ん中にアバウトに投げ込むと先述したが、インコースを狙って投げた場面ももちろんあった。伊藤投手のシュートするストレートが内角に決まるとかなり打ちづらそうだった。

◆困ったらインコース

困ったらアウトローという言説が野球界には存在するが、高校野球においてはそうは言えないだろう。

アウトローに完璧にコントロールできるのであれば、困ったらアウトローは有効かもしれないが、高校生レベルのピッチャーの場合、アウトローを狙ってもやや高めに浮き痛打されることが多い。

しかし、インコースであれば高めに浮いても打ちづらい(死球になるリスクはあるが)

特にストレートがシュートする右投手は右打者へのインコースストレートが効果的だろう。

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