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『かがみの孤城』を読んで


 その本をくれたのは、父だった。
 『かがみの孤城』
 辻村深月さんの本。

 父は、昔から自分がなんとなくいいなと思った本を、わたしにプレゼントしてくれる。父はその本たちを読まないけれど、わたしには、読ませたいみたいだ。

 素直に、本を開いた。読み始めたら、止まらなくなった。主人公は学校に行けなくなってしまった中学1年の女の子。名前はこころ。行けない辛さがわかる。彼女と同じようなことがあったら、わたしは家にすら、怖くていられないかもしれない。

 不思議な縁で集まった、「雪科第五中学校」に行けない、行かない子どもたちが過ごす、城。そのままの自分を受け入れてもらえる居場所。仲間との関わり。温かいだけじゃない、本音でのやりとり。

 こころは、誰かに気持ちを受け止めてほしいと思いながらも、学校に行けなくなった「きっかけ」をどうしても口にできない。

 城に通うようになり、そのことを仲間に話せ、その辛さを受け止めてもらえて、お母さんにも言えるようになった。それからのお母さんの姿に、胸が熱くなる。とことん味方になる、その決意と強さが伝わってくる。

 ラストは、もう涙、涙。いろいろな感情が渦を巻き、表現しきれない。ただ、強く祈る。その後の子どもたちが笑顔で過ごしていくことを。個性豊かな子どもたち、読み手も誰かには、共感できるのではないだろうか。映画化され、コミックスも出ている。

 わたしの息子も学校に行けない時期があった。だから、わたしはこの物語のいろいろな人に共感しやすいのだろう。

 どの子にも、いや、どんな人にも、こんな城があったならいいのに。ひとりじゃないって、思うだけで、力が湧いてくるように思う。


 辛いとき
 誰かに助けてと言えたなら
 ひとりじゃないと思えたら
 そのままを認め合えたら
 ありのままで自分らしく生きられたら
 そんな環境を手にできたら

 きっと
 その先は明るい
 いろいろがあっても
 時間がかかっても
 楽しく歩いていけるはず

 そんな気持ちにさせてくれる本だった。たくさんの人に、読んでほしいです。



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