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家庭環境と幸せの因果


私の幼なじみ達は揃いも揃って
家庭環境が良くないのが多くて
普通の家庭環境の子と一緒にいると
色々感じてしまうことがあって
定期的に集まって傷を舐め合っては

「今世で幸せになるのはムリ、来世に期待」 

それがみんなの口癖だった


私が3年前悟と暮らし始めた時

「私たちみたいに家庭環境悪が悪い人間でも
幸せになれるって証明してくれ」

って言ったあの子の悲痛な叫びがこびりついて
私をなんとなく縛っていた

幸せが義務のような責任のようなプレッシャーのようなそんな感じ

私がもし悟との生活で
幸せを感じられなかったら

「私たち家庭環境が悪い人間は
一生幸せになれない」 

「親にすら愛してもらえなかった私たちは
誰からも愛されるわけがない」

そう証明してしまうのかなって思うと怖かった




「私結婚するの」

それはそれは幸せそうに
昨日教えてくれた

それから

「私、幸せが分かったよ」

って泣きそうな顔で教えてくれた

「幸せってね、
欠けたものがキレイに埋まる感じ
満たされてく感じがするんだよ
それから居心地が良くってね」

色んな言葉で
身振り手振り説明してくれるその子に

「うん、あったかい感じがするんだよね?」

そう私が言った時
はっとその子と目があって
何も言わなくても深い共感で溢れて

分かる、分かるよ

ってそれだけ絞り出すように言って
外なのに恥ずかしげもなく
大の大人が抱きしめあって
しばらく泣いた

あんなに毎日辛くて泣いていた私たちが
全てを諦めてなんとなく遠巻きに
世界を見ていた私たちが
来世じゃなく今世で
幸せの感覚が分かるようになっていたことが
嬉しくて喜ばしくて
仕方なかった



「親にしてもらえなかった事を
人は恋人に求める」
って言う

その子はその人に
鼻水垂らしてゲロを吐いて泣きじゃくって
そんな醜態も気にせず抱きしめられた時
心があったかく満たされて
全てを理解したみたいに
幸せの意味が分かったって言った

その子の親は、その子が幼い時
そういう事を何もしてやらなかったから
でもその子はずっとそれをして欲しかったから
その人のおかげで全部埋まったんだって

私にはそんな決定的な瞬間はなかった
けど
悟との何気ない日常が満たしてくれた

悟は毎日

「日和今日はどうやった?」

って私の1日の話に毎日耳を傾けてくれた

イヤなことがあると

「顔暗いけどなんかあった?話聞くで」

って聞いてくれた

私が何も言わなくても

「お腹空いてるやろ?」「眠たい?」
「疲れた?」

って私の気持ちを分かってくれた

いつも私の味方だと言ってくれた

喘息がひどい時ずっと背中をさすってくれた

寝付けない時、
私が眠れるまで一緒に起きてくれた

それから悟は私が嫌がることは何もしなかった

他にもたくさんある
でも書けない

それはつまり
私が親にして欲しかったけど
してもらえなかったことで
それはまだ私の中で生傷で
未だに吐き出せないでいる

悟にしてもらった幸せを感じることを
書けば書くほど
私が親に愛してもらえなかった証拠を
増やしている気がする

だからもう書けない

私はまだ親に愛されてなかったと
認められるほどの器がない

「子を愛していない親なんかいない」
そういう言葉何回も聞いたけど

実際、いるんだよ

その言葉を聞くたび私たちは
追い詰められる

親が子供を愛するのは当然で当たり前なのに
じゃあどうして私たちは
愛してもらえなかったんだろう
私たちに原因があるのかなって
そう思い始めたら
自分たちが無価値に思えてくる

私の方がずっと不幸だよって
マウント取ろうとしてくる子もいるけど
私にはまだ
不幸自慢でお涙頂戴出来るほど
図太い神経はない
いくらでも不幸自慢のネタはあるけど
口に出したら現実だと実感するから
もう何も思い出したくもない
全部無かったことにしたい
私は悟にすらまだ何も話せてはいない

私も私の幼なじみもみんなそんな感じ
みんなじゅくじゅくの生傷抱えて
仲間内でしか心中を吐露できない
みっともなくてダサい人間たち

でもそんな幼なじみたちの中の
私とその子のたった2人だけど
生傷抱えたままでも
幸せになれることを証明したのは
大きな一歩だと思いませんか









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