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「やりがい」か「働き方」か

 全国的に教員不足が深刻な問題となっている。埼玉県内の公立学校では、本年度の始業日の時点において小学校で45人、中学校で12人、高校で7人、特別支援学校で23人がそれぞれ不足していたことが明らかになった。

 埼玉県教育委員会では、大学生を対象にした「教師塾」を実施し、学校現場で仕事体験をしてもらうことで教職の魅力を伝え、教員の確保に取り組んでいるという。

 しかし、こうした「やりがいアピール」で人材を確保することは、すでに難しくなっているのではないかと思う。


 それを裏付けるデータがある。

 パーソル総合研究所が、2022年に20代前半(20歳~24歳)の若者を対象に行った調査によると、この世代が「仕事を選ぶ上で重視すること」として挙げているのは以下の項目だ。

パーソル総合研究所「働く1万人の就業・成長定点調査2022」より

 1位が「休みが取れる/取りやすいこと」、3位が「仕事とプライベートのバランスがとれること」と、「働き方」に直結する項目が上位に入っている。

 それに対して、「やりがい」に関連する「自分のやりたい仕事であること」は5位、「やりがいを感じられること」は6位に留まっているのだ。

 今の若者たちが何を大切にしているのか? その一端はこのデータからもわかるだろう。

 ・・・また、平成29年(2017年)に立教大学・中原淳研究室と横浜市教育委員会が共同で行った調査の結果のなかには、こんなデータがある。

立教大学中原淳研究室・横浜市教育委員会共同研究(2017)より

 これによれば、現在の仕事に「やりがい」を感じている教員は全体の78.2%と8割に近い。しかし、その仕事を「若い人に勧めたい」と考えている教員は34.0%に留まっている。逆に言えば、およそ3分の2の教員たちは、自らの仕事を「若い人に勧めたいとは思わない」と考えているのだ。

「やりがい」はあっても「勧められない」という理由の一つが、その「働き方」にあることは間違いない。

 こうした現職教員たちの姿から、学校現場で仕事体験をする大学生たちは何を感じるだろうか?

「やりがい」を伝えるはずが、同時に長時間労働の実態も含めたその過酷な「働き方」のことも伝えることになり、結果的に「教員離れ」を加速させてしまう可能性があるのだ。

 だからこそ、教員の長時間労働を是正することが急務なのである。


 ・・・もちろん、本当に必要なことは、「やりがい」よりも「働き方」を優先させるということではなく、「やりがい」と「働き方」の両立を目指すことなのだが。

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