立田 順一

横浜市在住。教育関連のことを中心に書いていきます。

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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

突然の電話「立田さんには、4月からの1年間、企業等への派遣研修に行っていただきます」  教育委員会の担当者から学校に電話がかかってきたのは、3月中旬のことだった。  私は大学を卒業後、すぐに横浜市立小学校の教諭として働きはじめた。それから20数年間、何度か市内での異動はあったものの、小学校以外の職場で働いたことはない。私にとって、その連絡は晴天の霹靂だった。  と言いたいところだが、予感がまったくなかったわけではない。当時の横浜市教育委員会では、毎年、副校長昇任試験の合格者の

    • 「厳罰主義」の背景

       今から4年前、川崎市立の中学校に勤める30代の女性教員が、市の制度である特別休暇を申請した。  この特別休暇の制度は、コロナ禍で保育所の臨時休業や登園自粛要請が行われたことに伴い、自宅で未就学児を世話しなければならない教職員向けに新設されたものある。  しかし、この制度を利用しながら、何日間か子どもを保育園に預けて出勤したところ、それが特別休暇の不正取得に当たるとして、市教委が給与など28万4718円の返納を求めてきたのだ。  これを不服とする女性教員が、市の人事委員

      • 暑は夏い⁈

         暑は夏い!  いや、夏は暑い!  今日も東京都小金井市の最高気温は35℃を超えた。  ・・・駅から職場に向かう途中、買い物のついでに涼んでいこうと思い、コンビニに立ち寄った。  コンビニの入口の前には犬が繋がれていた。  店内にペットを持ち込むことは禁止だから、飼い主の方も仕方なく外に繋いでいるのだろう。  だが・・・。  犬よ、君の言いたいことはわかるぞ!

        • 瀕死の患者に水虫の治療

           全国的に教員採用試験の志願者減少に歯止めがかからない。  各地の教育委員会では、 ・大学3年生から受験可 ・試験日程の前倒し ・社会人の優遇(教員免許がなくても受験可能等) ・試験内容の負担軽減  などの策を打ち出しているが、期待したような効果は出ていないようだ。  やはり、「教員の長時間労働」という根本的な問題を是正しないかぎり、人気を回復することは難しいだろう。  結局のところ、先ほど挙げたような策は、 「瀕死の患者に水虫の治療」  を施しているようなものなのであ

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        45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(1)

          どちらの姿が見える?

           『妻と義母』という有名な「隠し絵」がある。  一枚の絵でありながら、そこに描かれているのが「若い女性」と「年老いた女性」の二通りに見えるのだ。  ・・・片方の姿が見えると、もう片方を捉えることができなくなってしまうから不思議である。  今月13日に米国ペンシルベニア州で起きたトランプ前大統領の暗殺未遂事件の際、その銃撃直後に撮影された写真が世界中で話題になった。  青空の下にはためく星条旗をバックにして、シークレットサービスに囲まれながら、右耳からの流血を気にするこ

          どちらの姿が見える?

          安かろう悪かろう

           今月7日に実施された千葉県の教員採用試験に関して、受験者の間から、 「ずさんな試験運営で、不公平だった」  という声が上がっているそうだ。  これに対して千葉県教委は、出題ミスなどの対応で解答用紙の回収に時間を要し、次の試験開始が約1時間遅れたことなどを含めて、 「訂正文の配布などで受験生の混乱を招いた」  と認めてはいるものの、 「試験の公平性は確保されていた」  と説明をしているという。  今回の試験は千葉市内にある幕張メッセで行われたが、本年度から教員の働き方改革

          安かろう悪かろう

          えらい人

          「将来、えらくなりたいとは思わない」  と考える若者が増えているという。  ・・・Goo辞書で検索すると、「えらい(偉い/豪い)」の項の先頭に載っている意味と用例は、次のとおりだ。   責任が重くなることを回避したいという思いもあるのだろう。また、国会議員や首長、企業の経営者などによる不祥事が相次ぐ昨今である。若者たちが「ああいう人間にはなりたくない」と思ってしまっても仕方がないのかもしれない。  しかし、この辞書の「えらい」の項には、2番目に次のような意味と用例が載っ

          えらい人

          地球温暖化

           連日、厳しい暑さが続いている。  しかしながら、電気代が値上がりしている影響からか、エアコンの利用を控えめにしているところも少なくないようだ。  先日も、あるビルの入口にこんな貼り紙があった。  ・・・ビルの近くにはヤンキー風の高校生の一団がいたが、その中の一人が貼り紙を見てこう叫んだ。 「エアコンが28度? それって、地球温暖化じゃん!」  ・・・温暖化の影響で、君の脳が溶けはじめているのかもな。

          地球温暖化

          一貫性のある行動

           このところ、兵庫県の斎藤元彦知事への批判が続いている。とりわけ、知事のパワハラや物品の授受を巡る疑惑を告発した県幹部の男性が、県議会の調査特別委員会(百条委)への証人出席を前に亡くなったことで、批判の声はさらに高まっているようだ。  そうしたなか、宮城県の村井嘉浩知事の発言が注目を集めている。斎藤氏は平成25年に総務省から宮城県へ出向し、村井知事のもとで市町村課や財政課の課長を務めていた経歴があるのだ。また、令和3年に斎藤氏が兵庫県知事選に出馬した際には、村井氏が自ら神戸

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          「粗探し」をする人

           某自治体の教育委員会で教員研修を担当している指導主事の方から、こんな悩みを聞かされた。  今年度、この指導主事の方は特別支援教育に関する年間10回の連続講座を担当しているのだが、毎回の「振り返りアンケート」に、かならずネガティブなコメントを書き連ねる受講者がいるのだという。  たとえば、4月に行った1回目の講座の後には、こんなコメントが寄せられた。  ・・・こうした声も踏まえて、2回目の講座ではグループでのディスカッションを中心にした内容にしたところ、同一人物からのコ

          「粗探し」をする人

          子どもには見せられない

           子どもには見せられない姿、というものがある。  赤信号での横断やゴミのポイ捨てなどのマナー違反をやってしまいがちな人も、近くに小さい子どもがいると「自粛」をすることが多いようだ。  そういう姿を子どもには見せたくないという思いが、行動に「待った」をかけるのだろう。  宮城県の大河原町議会で、73歳の男性町議が本会議中にスマホでゲームをしていたことが発覚し、大きな問題になっている。  当の佐藤貴久町議は、 「皆様に大変ご迷惑をお掛けしましたこと、深くおわび申し上げます

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          それは「偽物」なのか?

           徳島、高知両県の県立美術館は、所蔵している油彩画に贋作の疑いがあると発表した。  贋作の疑いがかけられているのは、徳島県立近代美術館がフランス人画家ジャン・メッツァンジェの作品として所蔵している「自転車乗り」と、高知県立美術館(高知市)がドイツ人画家ハインリヒ・カンペンドンクの作として所蔵する「少女と白鳥」である。  どちらもドイツの「天才贋作師」と呼ばれるウォルフガング・ベルトラッキ氏が手がけた疑いがあるとされており、6月上旬に美術関係者から情報提供があったことで疑惑

          それは「偽物」なのか?

          ピーマンが苦手な子どもへの対応(そして、その応用)

           ピーマンは、ビタミンCをはじめとする栄養素が豊富に含まれた野菜として知られている。  しかしながら、その独特の苦味のせいか、ピーマンを苦手としている子どもたちは少なくない。  そんな「ピーマン嫌い」の子どもに、無理なくこの野菜を食べさせる方法がいくつかある。  一つ目は、園芸ショップなどでピーマンの苗を買ってきて、子どもに育てさせるという方法である。  毎日の水やりなど、丹精を込めて育てたピーマンであれば、収穫後に自分で口にしてみたいと思うことだろう。  しかし、

          ピーマンが苦手な子どもへの対応(そして、その応用)

          アップデートする力

           7月7日(日)に投開票が行われた東京都知事選挙で、約15万票を集めて得票5位になった安野貴博氏が注目を集めている。  得票数の4位までは、当選した小池百合子都知事、石丸伸二氏、蓮舫氏、田母神俊雄氏が占めた。  選挙期間中に大手メディアが取り上げたのは、議員経験者であるこの4氏に絞られていた。安野氏が完全に泡沫候補扱いだったことを思えば、これだけの支持を集めたのは驚異的だともいえる。  安野氏がこの選挙で訴えていたのは、 「テクノロジーで誰も取り残さない東京をつくる。デ

          アップデートする力

          読書感想文の「書き方」

           昨年の夏、読書感想文の「書き方」に関する記事を書いた。  要は、 「本の感想を書くのではなく、  本を読む前と読んだ後とで  自分自身がどう変わったのかを書く」  ということだ。  感覚としては、感想文を書くというよりも、理科の実験のレポートを書くことに近いのではないかと思う。  これは私が独自で編み出したというものではなく、以前から「読書感想文必勝法」などとして一部では知られていた方法だ。  著名人の中にも、こうした方法で読書感想文を書いていたという人が少なくない

          読書感想文の「書き方」

          教育DXによって拡大する「格差」

           昨夜の懇親会では、教育DXの先進的な取組について刺激的な話を聞くことができた。  現職の小学校教諭であるAさんは、グループでの話し合いを「見える化」する『ハイラブル』というシステムを用いて、その実証的な研究授業に挑戦するのだという。  教職大学院生であるBさんは、指導教員に随行して、GIGA端末とクラウドをフル活用した「複線的な授業」を参観し、それをもとにした研究を進めている。  いずれも、数年前には想像できなかったような光景が、公立学校で現実のものとなっているのだ。

          教育DXによって拡大する「格差」