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介護と仕事

 政府は今年度、会社員が親などの介護で離職するのを防ぐ手立てについて企業向けのガイドラインとしてまとめるという。

 介護を家族内の問題としてではなく、企業の経営上の課題と捉え、社員向けの相談窓口を設置するなどの具体的な支援策を盛り込む見通しだ。


 学校現場に目を向けてみると、介護の問題を抱える教職員はけっして少なくない。

横浜市教育委員会・立教大学中原淳研究室の共同研究(2017)の結果より

 2017年に横浜市教育委員会と立教大学中原淳研究室が共同で行った調査によると、未就学児の子育てをしている教員が全体の22.3%だったのに対して、介護をしている教員は9.8%となっている。
 しかし、「50歳以上の教員」に限ると、介護を抱える教員の比率は26.4%に跳ね上がる。校長などの管理職を含め、ベテランと呼ばれる50代以上の教員の4人に1人は、親などの介護をしながら仕事をしているのだ。

 介護と子育ては並列で語られることが多い。だが、2年前まで母親の介護をしていた私自身の経験を踏まえて言えば、両者には大きな違いがある。

 まず、入学や卒業といった節目のある「子育て」に比べて、「介護」については先の見通しがもちづらいということが挙げられる。

 次に、「保育園のお迎え」や「我が子の入学式」など、周囲からも様子がわかりやすい「子育て」に比べて、「介護」はその実態がわかりにくい。そのため、同僚などへの支援を求めづらいという傾向がある。
 前述したように、当事者の多くが管理職やベテランということになると、問題の抱え込みも生じやすいだろう。

 また、これは状況にもよるが、「子育て」は大変な一方で、子どもの成長という「喜び」や「生きがい」と表裏一体でもあるだろう。しかし、「介護」はかならずしもそうではない。親の老いを受け容れ、その死が近づいてくることに向き合っていく心境は、当事者でなければわかりづらいだろう。


 私の身近にいた元同僚の中にも、介護離職をした方が何人かいる。その中には、もっと公的な支援があれば仕事を続けられたかもしれない、という方もいることだろう。
 そして、もっと同僚に打ち明けることができていたら、という方も含まれているのかもしれない。

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