旅に何を持っていく？

現役を引退して初めて行ったのが、オーストラリア エアーズロックだ。

引退したばかりで、陸上から離れて仕事をしていて、もう陸上に関わらないと思って日常を過ごしていた。
当時、いただいたお休みでオーストラリアへ2泊の旅へ行った。
直感で行きたい！エアーズロックを見たいと思った。きっかけは忘れたので、そのくらい取るに足らない事だったのだと思う。テレビで見たのか、誰かに聞いたのか…本当に忘れてしまった。

さぁ、旅に何を持って行こうかな？と荷造りをしていた。ランニングシューズは持って行こうと思った。引退後は、1歩も走っていなかったのになぜか不思議とバックパックに入れていた。

エアーズロックに着く前、上空からエアーズロックが見えたときは感動した！何もない大地に突然、大きな岩が現れた…
これが見たかったエアーズロックか！！

早く着いて、近くで見たいと、すごくワクワクした。

ひとり旅がなぜ好きだ。なぜ好きなのかふと考える時がある。それは、この引退後の初めてのひとり旅に理由がある。

まず大自然を目の前にし、色んなことを思った。きれい、すごい！だけでなく、なぜかふっと自分の過去がフラッシュバックしたりもした。
悲しいこと、何ともならないこと、後悔した事…がふと浮かんできた。しかし、大自然の中にいると、自分がめちゃくちゃ小さく感じた事を思い出す。
当時は、引退について考えることはほとんど無かったけど、やっぱりモヤモヤしたものがあったんだろう、それが頭に浮かんできた。

しかし、大自然の中にいると不思議なエネルギーをもらえる。自分の考えてることがちっぽけに感じる。
エアーズロックをボーっと眺めてる時間は、ずっと自分と会話をしていた。
今振り返っても、静かに大自然に見守られながら、落ち着いて自分と対話をしていた時間だったと思う。

引退後初めて自ら走ろう！と思ったのは、この旅行中だった気がする。最終日の朝、徒歩圏内にエアーズロックが見られるポイントがいくつかあったので、走って回ろうと思った。

ホテルにあった簡単な地図を片手に、ビューポイント目指して早起きして走り出した。

自分でも不思議だった。
まさか自分から走るなんて…

久しぶりにワクワクしながら走り出した。

どうして、これが出来なかったんだろう？と思うとなぜか涙が出そうになった。

現役選手の最後のころは、どうしても楽しい気持ちになれなかった。たくさんの方々に、色んなアドバイスをいただいたが、なかなか自分の気持ちは改善されなかった。そんな気持ちだから、体も当然動かなかった。

久しぶりに走りながら、大自然の中なら走りたい！って気持ちになるんだなぁ…と、不思議だなと思った。

振り返ってみてこの旅は今の私に少なからず影響を与えていると思った。
そこで見た大自然が忘れられず、その後も旅の行き先は自然のあるところを選択していることが多いように感じる。
また、そこで見た一面の星空が忘れられず、旅先では必ず星空を眺めに行く。
また、ひとり旅のひとりの時間は、自分と向き合う時間でもある。
そして、1人だからこそ、他の旅行者と会話する機会がたくさんある。
今でも、エアーズロックで出会った人、その方と話したことを覚えている。

ヨーロッパから旅行に来てた家族には、
2日間だけなんて、信じられない！と言われた。
その家族は、2週間くらい旅をするらしい。
それも、衝撃だった。
だけど、私はそれで知らないことがたくさんあると知ったし、自分のいる世界はとっても狭かった！これから、そんな知らない世界をたくさん知りたいと思ったことを思い出す。

そんな、ひとり旅だった。

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