空にて反抗を掲げた十二の詩篇
天国に風はない
天国に風はない
だから僕らはトリガを握った
地獄よ来たれ
私の命を摘みに来い
鉛の心に鉄の翼
業風掴みて舞ってみせよう
壱/楽園は地上
私の国は奪われて
頭を地に投ぐ人々が
生きて死んでるこの場所が
天国だぞと奴らが言うのだ
弐/二十四の鬼火
僕らは囲いを抜け出した
当てはなくとも避行した
やがて流浪にて研磨され
天威が届かぬその場所で
鬼火と化した瞳が映した
参/鉄翼在りて
私たちは見つけたのだ
火を纏って昇る鉄の塊
弾丸を放つ空の行き手
諦めを前に諦めなった
誰かが残した鋼鉄の羽
肆/昇ずる鼓動
僕たちは抵抗の決意を定めた
機関へと燃料と鬼火を焼べる
弾倉に弾丸と言葉を装填する
プロペラを動力と意思が回す
十二の鉄翼達は上昇していく
地獄の炎で不当な天国を焼き
熱き自由の青嵐を吹き流す為
伍/焦天の機動
私は航路の先に見る
空に満ちる天国を維持する天詞達
地に停滞を強制する強奪者の意思
人の壊死を誘引する無思の機械共
鉛の心が鬼火で溶け出し
意思の鋳型が射線を成す
私がトリガを引き
言霊と弾丸が貫く
燃焼の加速が空を切り出し
風を張らんで翼を走らせる
胸の燻ぶりが自由の風で吹き上がる
十二の鬼火が天国の空を焼き尽くす
そして私たちは楽園の地図を焦がして穿った
陸/延焼する園
僕らは次なる空へ行く
鉄翼と弾丸で天を焼き
楽園の地図の焦げ穴を
灰と帰すまで広げんと
漆/意思の燎原
私たちが天国に穿った風穴
流れ込む風が地上へ吹いた
鬼火は人々の燻りへ移りて
燎原となり楽園中を渡った
捌/同翼異思
彼らが来た
同じ翼に異なる意思で
天国を寄越した神の為
相容れぬ航路が接する空で
異なる言葉でトリガを引き
僕らと彼らの交差の果てに
同じ緋色と鉄が咲き散った
玖/消え逝く炎
私たちは鬼火と翼で戦い続けた
天国の守護と力を撃つけ合って
多くの鬼火が空へ溶けていった
始まりの場所で弔辞を掲げては
悲嘆と痛みを未来へ投げ置いて
先へ逝った者たちの遺志と力を
鍛造しては心と鉄翼に組み込み
更増し強靭なる鬼火と翼で飛ぶ
何れ私も逝かん故航路の彼方で
待っていてくれ魂の分け火たち
天国の焼尽はもう間もなくにて
拾/風は止みて
僕らは子供だった
大人の怠慢を解さなかった
億劫だけで全てを消すなど
ありえはしないと決めつけていた
光の臼が天国を挽いた
僕は空からそれを見た
溶けて混じった瓦礫達
黒い立像になった人々
空の叫びは何処へも伝わらず
僕の手はトリガから剥がれて
風が止んで灰がただ積りいく
十一/鬼火二つ
彼女と彼が向かい合う
残機は一つ
鬼火は二つ
終の抵抗をどちらが示すか
言の葉は不当で
力こそ雄弁だった
互の拳を振り抜いて
思いの交換は一発だけ
倒れて仰ぎ見ゆる相棒の
笑顔と鉄翼へ乗り込む末影
十二/空へ
ああ、君がゆく
天国を強いる物達へ
地獄の自由を示す為
蒼穹へ駆けていく
十三/継ぎ火
我は我らの碑を建てた
誰も見向かぬ地の果てに
正しき反抗を刻んだ十一の
かくも果敢に敗れた墓標達
そして死ぬる我が十二個目
何も示さぬ碑を残し
去りて最後に残りたる
天国を焼く鬼火を継ぐ為に
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