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フィクションのリアリティ

アニメや漫画のアンチの言い分で
「この設定にはリアリティがない」という言葉があります。

最初から嫌いなら、じゃあ見なければ良いじゃんと言う話ですが
これを主張する人の大多数は「今まで好きだったのに、この展開は気に入らない!」という思いを
「リアリティ」と言う言葉に乗せているだけじゃないかとい思うです。

そこで、フィクションに於けるリアリティとは何なのかを考えてみました。


■リアリティとは「設定」ではなく「心情」が重要

これは至極当たり前ですが、フィクションの創作物の「設定」にリアリティなんて必要ありません。

設定にもリアリティが必要などと言ってしまえば
魔法も異世界もこの世には存在しません。
隣の家に住む可愛い幼馴染も
イケメンアイドルと偶然出会って恋に落ちる事も
全てリアリティがない=悪と言う事になります。

そうなると社会派の刑事ものや医療もの司法もの…
描けるジャンルは恐ろしく狭くなります。

それにフィクションの刑事ものにしても
現職の人から見るとリアルではない事も多いそうなので
(鑑識は刑事と一緒に現場検証しないとか)
結局、万人が見て「リアル」な設定の物語なんてものは存在しないので
理想として掲げるだけ無駄なのです。



■心情にリアリティがないとは

ではリアリティに重要な「心情」のリアリティですが
残念ながら「これがリアルな心情だ」という確固たるものは存在しません。
起きた物事に対して抱く感情は皆同じではないからです。

ですが、例えば「優しい母を敵に殺され復讐を誓う主人公」という設定の場合

母親が殺された翌日に仲間を集めて自宅でピザパーティーとか開いていたら
誰が見てもリアリティがないですね?

パーティーを開きながら、心の内では復讐するつもりがあったとしても
物語の流れが不自然で心情が伝わらないと、リアリティがなくなるのです。

母への愛や強い復讐心を演出するなら
・母の形見のペンダントを身に付ける
・母が殺された日から喪服として黒い服しか着ない
・母が敵に付けられた傷と同じ所を自分で切り復讐心を忘れない様にする
などのエピソードで心情を描く事で
読者に主人公が母親が殺される前と後の心情の変化を伝える事が
リアリティに繋がるのだと思います。

キャラクターの心情の変化に違和感が無いこと=リアリティなのです。


■キャラクター設定のリアリティの鉄則

これは私が創作をする上で気を付けている事と
面白い作品に共通する鉄則です。

設定にリアリティある場合はキャラクターの性格(心情)はリアリティがない
設定にリアリティがない場合はキャラクターの性格(心情)はリアリティがある

設定がリアルな場合、例えば普通の高校生や会社員なんかの場合は
ギャグにしてもシリアスにしてもキャラクターの性格まで実在しそうなリアルな人物にすると
地味で何の面白味もないし、そもそも事件が起きないので物語が進行しません。

「こんな奴現実には居ないだろ」くらいで丁度いいのです。

そして、設定が現実的でない場合は、キャラクターはリアルに描かないと
地に足がつかない話になってしまいます。
魔法が出てきて、オリジナル異世界で、あり得ない性格の人物しか出て来ない物語だと
誰もどこにも共感出来ないので、起きる問題に親身になれません。

自分にもこういう側面あるなぁと思わせるくらいリアルに描いて初めて共感して貰えます。


■まとめ

私は、どこにもリアリティがない作品なんて存在しないと思っています。
なのでフィクションの創作物に対して「リアリティがない」と評価すること自体
全て間違いだと思います。

よく使われるリアリティのないという文句は、大抵作中の細かな設定に対してです。
これは「リアリティがない」のではなく、その人個人が「共感出来ない」だけなのです。

自分の思考だけがリアルで、唯一の正解と思い込んでいる視野の狭さが原因なのです。

リアリティというものを知るには、リアルを知らなければいけません。
現実世界の色々な人を見て、共感する力を養わなければフィクションも楽しむ事が出来ないのです。

もし私が「あ、この物語リアリティがないな」と思ったら
自分の視野を広げ、リアルに対する価値観を成長させる段階に到達したのだなと
考えるようにしたいと思います。