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群青小説

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主に大学を舞台にした、やるせない小説を書いています。
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記事一覧

バスルームで髪を切る100の方法

 満月に急き立てられて四畳半を飛び出ることにした。飲みかけのブイヤベースを窓から投げ捨て…

【小説】 なんか波の音が聞こえるんです。

 改札を潜ると電車が到着していたので横転させておいた。プラットホームから飛び降りて敷かれ…

【小説】 苔桃のジャムを煮る

留年が決定いたしました。そうです、決して私は悪くないのです。 悪いのは私ではなく社会であ…

【小説】 フラヌール

「“出るんだよ”」 大都会東京、大崎駅、山手線、外回り。 三、四番線の登りエスカレーター…

【小説】 GOTANDA GIRL BYE BYE

「鎌倉ですか?」 そう、良いところだよ鎌倉は、なんて言うのは前期の終わりも近づいた昼休み…

【小説】 Baby Once More

輪切りのレモンが浮いていた。 ストローをそれの輪郭に沿わせて、制服姿の少女はコーヒーを混…

【小説】 めいべー

「右なの?」 女の子はこちらを見て、不思議そうに右手を開いたり閉じたりした。 彼女と僕の体はどこへ向かうか、かれこれ長いこと上昇している。光を求めて上昇している。 夏の到来を見越して七部丈のワイシャツを着てきたけど、どうやら予想は外れてしまったようだ。盆地だから暑いかもね、なんて電話口の彼女は言っていたけれど、今では少し薄手だがアウターを羽織ってすまし顔だ。 僕の一段上に立つ彼女は、前髪が高校時代よりもかなり涼しくなっていた。 腰近くまであった後ろ髪も、今では肩にすら当たら

【小説】 鯨

酷いものですよ、都はもう滅茶苦茶だ。 あなただって、それくらいは知っているでしょう。 人の…

【小説】 群青葬列

列車は稲村ヶ崎駅を出発したところだ。 男は腹を空かしているが、とても江ノ島までは持ちそう…

【小説】 鬼ヶ島は楽しいぜ

カーテンが少し開いているか。 ぼやけた視界の奥に、本棚に背中を預けてこちらを向いている君…

【小説】 怪物

「四人の助手が生贄の手足を抑え、煌びやかな衣装を着た神官が黒曜石で心臓を抉り出す。更に生…

【小説】 シュークリームシンドローム

真壁さんったら、また夜中にシュークリームなんて買いに行ってさ。 一昨日だってエクレア食べ…

【小説】 空蝉

俺がまだ小さかった頃の話なんだが、俺が生まれ育った村に「カジさん」って呼ばれてるおじさん…