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あらたなる電子書籍シリーズ

Piyomaru Softwareは、これまでに電子書籍を80冊以上刊行しています。ちょっとした大学の名誉教授でも、「著作80冊」という人は見かけないので、数だけでいえばけっこうなレベルです。個人で書籍を出しているユニットとしては、国内外でも類を見ない活発な出版活動を行なっているものと自負しています。一般流通には出していないので、同人誌と言われるカテゴリになってしまいますが、それでもこの量は見かけません。盆と暮れの2回出しています、という話しか聞きません。

息を吐くようにプログラムを書ける開発力と、謎の企画力、元編集者ならではの文章力でもって、電子書籍をいろいろ出しています。企画、執筆、プログラミング、作成補助プログラムの開発、デザイン、発行、告知とすべての作業を1人で行なっている、いわば電子書籍のワンマンアーミー。まぁ、大手出版社と比べてしまうとその軍事力たるや幼稚園児レベルおかわいらしいものなので安心してください。

さて、話を戻します。電子書籍を出すときに、何冊かの本を連続して出す「シリーズ」を設定することもありますし、1冊だけのものもあります。

ここでは、「シリーズ」について述べます。何冊か同じ枠組みで出す本のことです。

雑誌でも連載記事を新たに起こすときには、半年ぐらいの連載計画を立てて、「連載3回やったら書くことがなくなる」ようなことのないようにします。これは、技術書でも漫画でも変わらないでしょう。短期から中期の連載に耐えられない計画が、長期連載を行えるはずがありません。

シリーズを計画するさいには、想定読者層をもとに、

「だいたいこういうことで困っている人が多そうなので、このあたり向けに書いてみよう」

と考えます。

自分が設定している想定読者層は、

(1)上級者
(2)中級者
(3)初級者

の3つです。ええ、まんまですね。ひねりもなにもありません。カレーでいえば、辛口、中辛、甘口ぐらいととらえてもらってもかまいません。

そして、おおかたの方が予想するとおり、シリーズを立ち上げて1冊目の調子がよかったから計画にもとづいて続刊を……ともくろんでも、やはり右肩下がりに売れ行きは落ちてしまうものです。

実は、シリーズ化しないほうがいいんじゃないかという話もありますが、大きな話を説明するのに、テーマを細分化する必要はあるのでそこもなかなか難しいところです。1冊でなんもかんも全部説明しろと言われても、ページ数が膨大になるし、中身も薄くなってしまいます。おまけに作るのに時間もかかるので、お値段もそこそこすることになります。つまり、高くなってしまうわけですね。

そこで、新シリーズを展開しようかという話になってくるわけですが、直近で立ち上げた「ゆっくりAppleScript解説」シリーズが、予想よりも受けが悪くて驚いています。

わかりやすく内容を噛み砕いて、絵本のような仕上げで作ってみたのですが、これがびっくりするぐらい受けていない。もっと難しいテーマの本は売れているのに、これが笑ってしまうぐらい受けていない。

同じく初心者向けではあるものの、「これは趣味で書いているので、どっちでもいいです!」と割り切って書いた「魔導書シリーズ」のほうがまだ反応がいいぐらいです。

もともと、初心者向けの本は本当に難しいです。どのぐらいの塩梅で書いたらいいのか、相手が言ってくれるわけではないので、「このぐらいかな?」と思ったところが当たることもあれば、当たらないこともあります。むしろ、当たらないことのほうが多いと感じています。

理想をいえば、「ああ、この本を買っただけで魔法の力を授かれるような、そんな本で、読まなくても頭の中に入ってくるといいなあ!」という本が作れればよいのですが、そういうのは無理なので、読んでいただく必要はあるわけです。

ただ、ものすごく噛み砕いて親切に説明しても、なぜかそれで気分を害される方もいるようで、なかなか難しいところです。

なので、「ものすごくどえらいテーマを構えつつも、読んでみたらなんか思ったよりも難しくなくてよかった!」ぐらいの味付けがどうも好まれるようです。

こんなかんじ(↑)に。

あからさまに「初心者向けですよ」「痛くないですよ!」という本よりも、上級者向けに設計した本の方が売れているという事実。これは悩ましいところです。たしかに、初心者は自分の実力がわからないので、どの内容が分からないといった分析ができません。上級者ほど客観的な自己分析ができるので「このあたり読んでおこうか」という話になりやすいことでしょう。

ただ、初心者でも時間がたてば中級者ぐらいになるかもしれませんし、そのきっかけになるような初心者向け本は出さないとダメ、とは思っています(もっと大きな本を出すために、テーマを分割してまとめていた、という事情もあります)。

初心者向け本は作るのに手間暇がかかり、価格も上げられず、それでもそんなに売れないので、作るのが本当に難しいです。そのうえ、初心者ほどプライドが高いので、あからさまに初心者向けという体裁の本だと売れないという。

なので、新シリーズを企画するとしたら、初心者向けではないものになりそうな気がします。

ただ、本当に難しい本を上級者だけが読んでくださるわけではないため、説明は極力わかりやすくしています。むしろ、しつこいぐらいに丁寧に!

ガンダムでたとえると「未経験者でもなれるエースパイロット! いきなり単機で敵の要塞を落として戦争を終わらせるノウハウ教えます!」とかいった、どえらい感じでしょうか。その割に、中を開けてみると説明が懇切丁寧で、時間をかければ敵の宇宙要塞ぐらいは落とせるかな? ぐらいの味付けの本だとよさそうです。

買って読んだ人は「よかったよ!」と言ってくださるのですが、なかなか広まらないし買っていただけないという本もあるので、そのあたりの匙加減は本当に難しいところです。

まとめてみると、

(1)ものすごく大層なことを取り上げているようなタイトル
(2)……の割りには、実際に読んでみると平易でわかりやすい
(3)価格と分量を考慮すると、これはお買い得!

というところでしょうか。まー条件がわかったところで、あらためて「どんなシリーズにしようか?」という話は解消されていないのですが。


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