問題と回答について
日本の教育における重篤な課題のひとつは「問題提起する力」を育まないことだと僕は思っている。国語にしろ、算数にしろ、理科にしろ必ず答えが用意されたテストばかり受けていると、社会人になってから素直に上司の命令を聞くだけの「指示待ち人間」になったり、点数稼ぎにばかり精を出す社畜型サラリーマンになってしまいそうで冗談抜きに怖いと思うのだ。
人が社会に出ると、問題解決力が要求される場面に必ずぶち当たる。職場によって問題提起の段階から仕事を任せられる処もあるし、簡単な課題から与えられること処もあるであろうが、とにかく問題を設定することと解くこと、打ち手を考え行動することが我々ビジネスマンの仕事である。
2年ほど前にコンピュータ業界の雄、マイクロソフトの入社面接の中で上の図のような問題が出されたとのニュースをFacebookのタイムラインで見た。
「10*6/2=30」
パッと見て多くの人がそう答えてしまう問題なのだが・・・
正解は「そもそもこんな三角形は存在しない」だ。
僕自身はどうだったかを正直に言うと、「違和感」は覚えたものの瞬間的に正解に至ることはできなかった。図形問題を考える時に補助線を引くことを習慣にしていれば、あっという間に解けるのだが・・・無念。
<直径が10の円に内接する三角形の高さ(半径)は最大でも5!>
面接の中で、ということなのでこの問題を解けたかどうかが、試験を受けた方の合否にどれほどの影響を与えたか定かではない。Facebookのコメントには「こんな問題おかしいだろ」とか「さすがMS、鬼だな」とか「IQ高い人なら判るでしょ」みたいなコメントが並んでいた。
入社試験で「圧迫面接」をやるような企業が多い日本では、受験者は自分の短所を隠し、強みをアピールしようとする傾向が強い。人事担当者がふるいの上に受験者を載せ、「使えそうにない」人からしゃかしゃかと落とすのだ。だけどグローバルな海外企業はどうなのだろう。大きな企業の入社試験を受ける人は自信があり、企業に入ってやりたいことがあるから試験を受けるのではないだろうか。受験者にとって試験官はディベートで打ち負かす相手で、負けられないライバルなのかもしれない。そう考えれば試験官が出す問題にも疑問を持ち、「解なし」という回答を出すことができるのかもしれない。
『疑いは発明の父である』といったのはガリレオ・ガリレイだ。ウチの子供も大人も大好きな番組、「カガクノミカタ」(NHK)の中盤にこのフレーズがばばんと登場するので、我が家では一種のバズワードとなっている。
「カガクノミカタ」はおそらく子供向け教育番組にカテゴライズされるのであろうが、大人が見ても非常に面白い。番組の構成はこんな感じだ。
タイトル:今回のミカタ ○○してみる
冒頭:その日の「素朴な疑問」を提示 (問題提起)
前半:街頭インタビュー的に回答案をいくつかピックアップ
中盤:今大人気のイラストレータ、絵本作家のヨシタケシンスケさんのアニメーションが流れる。アニメのキャラ、あたりまえたろうとあたりまえつこが魅力的すぎる。「あたりまえってなにかしら」ってフレーズが今日も頭の中でリフレインしている。
後半:回答にアプローチをするが、結論は出さないまま番組は終了
僕が気に入っているのは世の中には「様々なミカタがある」ことを教えてくれるところと「結論を出さない」ところ。この番組を見た後で我が家ではショートディスカッションを毎回のように行っている。僕と妻が子供に対して「どうして○○だと思う?」と聞くと子供は「う~ん、わかんない」とか「たぶん△△が□□だから」と素直な意見を返してくれる。僕はその回答が明らかに違うと思ったときには訂正するが、それ以外は「なるほどね、お父さんはこう思うな」とか「じゃあ○○だったらどうなるかな」と返答している。家族間でこんなやり取りができるのは本当に楽しいし、小さな幸せを感じるひと時でもある。
ちなみに「カガクノミカタ」が始まる前にやっていた「大科学実験」もウチの子は大好きだった。こちらは科学的な仕組みを大規模でやったらどうなるかというもので、ダイナミックに成功するかぼちぼちな感じに終わるか「やってみなくちゃわからない」ということが主題で、子供たちに「実験」の大切さを薦める内容であった。そう、実験は本当に面白いのだ。
もちろん、この番組も悪くはない。だが、結論が提示されることで子供は「ふ~ん、そうなんだ」というように「判ったつもり」になってしまう怖れも多少含んでいると僕は思っていた。現代を生きる子供たちには、すぐに回答を与えるのではなく、気づきや考える時間を与えることが必要なのではないだろうか。
今の日本には偉そうにふんぞり返った政治家さんたちが作ってしまった社会問題が山のようにある。いじめとか、モンスターパレンツとか、ブラック企業とか、明らかに無くした方が良いモノがたくさんあるし、食料品の廃棄量とか、日本中に設置されてしまった自動販売機とか、身体を弱くするためのワクチンとか、健康だと損をする保険だとか、24時間営業し続けるお店とか、重すぎる税金だとか、ちぃとは減らして欲しいモノもたくさんある。
巷では「AIによってこれからの働き方は激変する」みたいなトピックスで溢れているが、「問題提起する仕事」はこれからも人間がするべきではないだろうか。いつの時代も「人間は考える葦である」のだから。
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