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無題2

昨日と同じ道を今日も歩いた。
まるで昨日の土砂降りなどなかったのように、道は雨粒の一欠けらも残さず乾いていて、イヤホンから流れる音楽は、今日はちゃんと耳に届いた。
昨日より長く川べりを眺めた後、折り返して昨日の止まった信号で同じように立ち止まった。眩しくライトは光っていたけど地面はぼおっと照らされているだけで、青信号と共に私の横を通り過ぎて行った。

昨日の残り香は、靴下越しにかすかに感じるサンダルの湿り気と玄関にかけっぱなしのお気に入りの水色の折り畳み傘だけだった。
もし世界に一人取り残されているとしたら、昨日雨が降ったこと記憶を信じることは難しいかもしれないなどよくわからないことを考えながら、昨日よりも見やすくなった景色をぼんやり眺めながら町を歩いた。

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