新刊会議備忘録【同人スペースまとめ】
あなたはこれまで同人誌を何冊作ってきただろつか?
私はよくわからないが多分60冊くらい出している。年間4〜5冊くらいのペースで発行している計算だ。仕事しながら徹夜して、仕事終わったら原稿をして本当に何してんだろうな………となること数知れず、しかし、今では年に最低3回はイベント出ないと生きられないくらいの根っからの同人野郎である。
……が、実は今年、3冊しか同人誌を作っていない。
今年3冊しか作ってなくてさ〜〜〜マジですくな〜〜〜!!!と愚痴ったところ「そんだけ出せば十分だよ、普通の人は本なんか一生に一冊も出さないから」と当たり前すぎるツッコミを入れられてしまった。そりゃそうだ。誰だって仕事でもないのに本を企画して作るなんてしない。同人誌でもなければ素人には縁がない話だ。
さて、また話は変わるが、同人誌を作る作業自体については割とノウハウ的なものがあると思う。しかしながら「じゃあどこが着想なんだよ」という話題は割とフワッとしてる部分がある。
ありがたいことにわたしの本を読んでくださる方には「やまろくの同人誌はオモロい」と言ってくださる方が多い。おもろくはないが、真面目に作ってるだけではあるけれど、じゃあ自分ってどういう風に同人誌を企画してるのか?ということをこれまで言語化をしたことはなかった気がする。
……という経緯で、プレ的に行った『やまろく新刊会議』である。ゲストににゃおさんをお呼びして相槌を打ってもらいながら自分の頭を可視化する作業をスペースで行なった。
ノー打ち合わせのために録音はしなかったので、こちらのnoteに備忘録として残しておく。
何か読んだ方の同人誌づくりの一助となれば幸いだ。
同人誌を企画する
○会議の前準備:出したい本をフワッと書き出し
事前に決めていたのは上記くらい。ちなみにこの時点ででるイベントも決めていない。いつなんのイベントがあるのかもスペース内で確認した。
イベント合わせである必要性はないのだが、明確な締め切りがないと目安が立てられない。いつでもいいや、はスケジュール管理においてかなり難しい話だ。今回は「本一冊作るのにどのくらいの時間がかかるか」も交えながらスペースをしたかったのであえて決めていなかった。
【スペース開始!】
①イベントを決める
自分のスケジュールと照らし合わせて出られそうな時を設定。
わたしとしては大事なのは「本の内容は締め切りを設定したら決めるので、イベントに出るときは書く時間を考えない」ことである。〆切が決まらなければページ数も内容も決まらない。作業時間が読めないからだ。本文ができる時間を逆算して出るイベントを決める、もいいけどその間に自分の心が移り変わらない根拠も自信もない。オタクは時にビッチよりも移り気なので、まずはお尻を決めてしまう。
②本の内容を検討
出した案の中で、作業量のごとの分類を行う。
上記の案であればこんなかんじ
・再録系(作業量少ない)→pixiv再録、note再録
・短編集系(40p未満)→ネームドモブ短編、E×Fのゆるい詰め合わせ
・長編系→A×Bなれそめ、C×Dなれそめ
わたしの場合であるが、大体短編集であれば2週間、長編であれば1〜2ヶ月を要する。にゃおさんからは「各系統一冊ずつ出すとして新刊3冊かぁ」という採算度外視発言があったが、決めたイベントの日程だったら全然できる範囲ではある。
ここでどんな本にするか内容を確認。それぞれの書きたいところ、こういう装丁をしたい、というのをざっくばらんに、説明してみる。
すると、案外本の内容についてそこまで深く考えられていないものが出てくることがわかる。
今回で言えば以下のように。
pixiv再録:
・七年分のweb再録なのでとことんやりたい
・しかしいかんせん七年分なので50万字くらいある
・通常の再録の作業より時間がかかる
・分冊方式予定。イベント頒布するとなるとかなり搬入量が多くなるし、頒布の手間もある→自家通販も検討?
note再録
にゃおさん「これは気になる」
・noteのまとめ+エッセイ的な関する話を一本書き下ろしたい
・7年間の時間でジャンルに対する自分の感情よ変化がどうなったかを書きたい
・自分がゴリゴリ出る内容というよりは、ジャンルと自分、という観点を大事にしたい
ネームドモブ短編:
・素案はいくつかある
・テーマが決まってないので選定はできないが、さっくり読める本にしたい。
・カップリング要素は無しにしたい
E×Fのゆるい詰め合わせ
・なんとなく本編の絡みで萌えたので……………
A×Bなれそめ
・本編のこの時期というところだけは決まってる
・多分めちゃくちゃ長くなるからプロット含めて3ヶ月は欲しい
C×Dなれそめ
・装丁でやりたいのがあった
・中編くらいのイメージ
…こんな感じに。意外と言葉にしてみると考えていたつもりでもなかなか話の内容まで決まってないものが結構多い。
既にコンセプトまで決まってるものはあとは原稿するだけとなる。上記二つの再録系がそれに当たる。一方、長編系はだいぶフワッとしてるので本当に出したいかも含め、再考が必要になる。
本の内容について自分だけではなく誰かに突っ込んでもらったり提案してもらうことが非常に重要だ。こういう本出したいんだけど、という気持ちだとか熱意は大事だけど、実際に形にする作業は気持ちだけではどうにもならない部分がある。
だからこそ「自分が何を作りたいのか」が具体的に思い描けるくらいに企画を考える必要がある。
この段階でわたしは装丁を決めることが多いので、本の内容を言ってる間に「こういう装丁だといいかも」とか「こういう本のイメージにしたい」とかとにかくイメージを具体化していく。
同時に、pixiv再録集のように頒布に難がある可能性があるものがあれば、それも含めて考える。
この時、出された意見は絶対に懐疑的に見ないこと。ブレインストーミングと一緒である。意見はとりあえず聞いて横に置く。
逆を言えば、出された意見に否定をすることあれば、そこが同人誌の核となる部分、ということでもある。そういうものがあればしめたもの、そこをメインに考えていく。
そんな感じで小一時間話した結果、
・note再録は確定
・短編集はネームドモブだとざっくり出せそうだし装丁も盛れる(締め切り的に)
・長編は要検討
・pixiv再録はおもろい形で出そう
という結論に。
ここを踏まえて、さらに私がどうするかを考えていく。
企画で大事にすること
スペースの中ででた大事だなと思ったこと箇条書き
・同人誌はコンセプトが大事
迷った時に立ち帰れる指標がだいじ
・同人誌を作るのにパッションは必要だがパッションだけで解決できない部分はある。好きなことをすればいいと言うけど、その好きなことを細分化したり、焦点化する作業が必要
具体化する作業がパッションを形にする方法
・同人誌に対して真面目に考えてるだけでおもろいことをやろうとはしていない
自分の好きと向き合う作業になる。わたしの場合であるがおもしろいことは何一つない。真剣にジャンルへの愛を表現する方法を考えてる。
・ふわっとした気持ちだけで本は作れるけど、じゃあこの装丁の意味ってなんだろうとなったときにちゃんと説明ができる本を作りたい
これは願望
作り出すものに意図しないものは何もない
とはいえ意図せずエモを感じたら実際やってみて違うこともある
・とはいえ作り始めの頃は勢いは大事
ある程度麻痺して気が狂ってないと同人誌はできない
・装丁、本のコンセプトは連想ゲーム
風吹けば桶屋が儲かるでいいんだよ
・正直書き手が大事だと思ったとこととかが伝わらなくてもいい。こちらは言いたいこと、伝えたいことは書くけど、それがどう受け取られるかは読み手次第でいいと思う。それがたとえマイナスな感情であっても心を動かしたと言うのであればその時点でわたしの勝ち
こんなふうに企画しても読み手に受け取ってもらえる感想は全然違う。意図しない意見は、大事にしたい
精神論的なこと
同人女の感情みたいな話とちょっとでたので。
・数字を気にするのは当たり前 感想が欲しいのも当たり前 絶対数字は気になるし評価も気になる だけど自分のため、自己満足でやっていると言う感情も同居する
数字は今のご時世当たり前に気になるところなので、気にするなという方が無理だとおもう。それがいい悪い、ではなく、数字を気にする自分とやりたいことを気にする自分を同居させてもいい。
・1回目は勢い、2回目は合意、3回目以降はその先を考えろ
同人誌2冊目くらいまでは何も考えなくても出せる
・パッションのくくられる中にもいろいろやってることはあるはず 原稿以外の手続きとか。本を出す手間とか努力とかそう言うものを作り手になって感じたのであれば、それを完遂できた自分を褒めてやって欲しい
ついパッションという見栄えのいい言葉に隠されがちだが、細々した作業を仕事外でやってるのは本当に大変
・誰かと比べたり誰かに思いを馳せるよりも同人誌を作ると言う細々した行為を成し遂げられた自分にはなまるあげて
「書き手の気持ちに立って本を作る人がすごい」という気持ちも大事だけど、それは同人誌を作った人しかわからない。わからないし、見えない苦労は想像がつかない。人を褒めるより、人に思いを馳せるより先に、まずは自分で自分を褒めて。
余談)同人のあるべき姿論はあるけど、時代と共に変わっていくものもあるのでそれに対応できることも大事。企画をすると言うことは責任が伴うので、そう言う責任をちゃんと負えることも重要
「好きなものをつくる」という気持ちだけではできない。手続きや金銭面、大きな企画になればなるほど主催の負担は大きくなる。好きという気持ちだけでどこまで自分が責任が負えるか?を考えることは大事
同人活動、楽しいんだよね
昔よりも考えることは増えたけど、それでもこういうことを考えながらやる同人誌づくりはやっぱり楽しい。みんながみんな、同じ楽しみをできるとは思わないが、わたしはこういう風に楽しんでるよ、という備忘録でもある。
そんなわけで、次回は3月に出ます。
約一年ぶりのイベント参加、新刊何冊出るか楽しみにしててください!