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【リーグワン観戦記7】フォーリーとルーカスの作り出すイリュージョン

交流戦の始まったリーグワン。まあ、正直、このスタイルに何の意味があるのかはあまりよく分かりません。12チームで、総当たりホーム&アウエーではダメなんですかね。。そうなると、シーズンが長くなりすぎるから?
ともあれ、今節注目したのは、クボタとリコーの10番対決、バーナード・フォーリーおじさんと、アイザック・ルーカス王子。タイプの違うSOですが、ともにエンターテイナー。この2人を見るだけでも楽しそう。

最初に躍動したのはルーカス。久々の先発ですが、早速ギャップをついて大きくゲインを。右サイドを駆け上がり22mラインを超えて、ここで繋げばトライ!というところで、そのボールをはたいたのが、フォーリーでした。いきなりの邂逅。フォーリーは、なんと言っても、SOとしては日本人にはないレベルでの、ディフェンスの強さ、そして、人に対する強さ、体の強さだけでなくて、気の強さがあります。

前半の前半はクボタの時間。モールもそうですが、ちょっとリコーはこの時間は眠ってい感があって、ぼんやりしているうちに3つトライを取られた、という印象です。特に、フォーリー →立川 →フォーリーのループから取られたトライは、ディフェンスはもう少し粘りたいところでした。

結局前半20分で24−0、ああ、ワンサイドなのか、、という印象もありましたが、ただ、やっている方はそういう印象ではなかったはず。局面局面では、リコーのアタックがクボタを切り裂いていましたので。

前半25分過ぎから、リコーがようやくお目覚めで、クボタのゴール前でパワープレーでのトライを目指します。ただ、ロックのツインタワーを欠くとはいえ、クボタのここを打ち破るのは至難の業。何度もはね返されてきたわけですが、ここの風向きを変えたのが、フォーリーのシンビンですね。。まあ、本能で手が出てしまった、、というところですが、このシンビンでリコーが元気付けられたのか、クボタがぼんやりし出したのか、とにかくそのペナルティからあっさりトライを取り、さらに、鬼のいぬ間に、とばかりに、ルーカスのさりげないため(後ろのセンターに放そうかな、と見せて)からの柳川への絶妙なパスは、極上。この、ラインの真ん中あたりを一気にブレイクされると、トライまでいくケースが多いですね。

ということで、前半はクボタが10点リードですが、お互い少しディフェンスに粘りがなく、簡単にトライを与えている感があります。

後半に入ると、最初にクボタが突き放すのか、と思いましたが、リコーもディフェンスをしっかり粘り出していて、簡単には得点を与えません。すると、ターンオーバーからくるしい繋ぎでしたが、平がラインぎわをかけるところを、うちから追ってきたルーカスへ見事なキックパス。やりたいこと、やって欲しいことのイメージが共有されていた素敵なプレー。試合が一気にもつれていきます。

後半はクボタのラインアウトでの苦戦が目立ちました。ツインタワーがいないことで、マークスのスローにも影響が。。

島田の痛いエラーからの失点や、PGでの点の取り合いがあり、37−28でクボタが10点リードの残り5分。ここから、リコーが一気に2トライを取り、試合をひっくり返します。後半30分で、この試合初めてのリード。24点差をひっくり返すという荒技。

ただ、残り10分。パワープレーに勝るクボタとしては、PGで逆転できる1点差は、敵陣にさえ入れば、なんとかなるだろうと見えるところ。

案の定、早速次のリスタートからクボタが敵陣に入り、ラックからペナルティをゲット。正面30m程度のキック。今日は全て決めてきたフォーリーからすれば楽勝・・・と思ったキックを、外してしまうフォーリー・・・この人は、置いたキック、止まったキックは、時折やりますよね。。横浜とのサヨナラコンバージョンも外しましたし。。

が、風向きはクボタ。自陣から出れないリコーは、残り5分のところで、ヘッドコンタクトでイエローを受けてしまう。そのPGは、今度は左45度というところで、先ほどよりは角度もあるのですが、今度はフォーリーは涼しい顔で決めていきます。

さっきのキックは何だったのか。あれを外しても、心が折れない、ぶれない、これがワールドクラスのメンタルなんですかね。。

しかし、次のリスタートでリコーが圧力をかける。アタックで前進しているという雰囲気ではないですが、ルーカスがいる分、そこにスピーディーにプレッシャーをかけようとするので、ディフェンスラインが乱れがち。いまいち、捉えきれないところで、正面でペナルティを犯す。それを見たルーカスは、ドロップゴールを狙うも、これはヒットせず。

後半39分30秒から、マッガーンがゴール正面、30mほどのところでプレイスする。風は少し向かっているものの、このレベルの選手が外すところではない。

蹴った瞬間は、入ったと思ったそのキックは、風の影響か、あたりの影響か、少しずつ左へ左へ傾いていき、ほんの少しだけ、ポールの左がわに外れていく。会場も、選手たちも、一瞬何が起きたかわからない。一番、目を白黒させていたのは、クボタのベンチ、、に見えました。

マッガーンは今季好調ですし、チームを支えていますが、ここを外してしまう。。後半30分以降の試合の流れは、ワールドカップの「これで負けたら終わり」という試合のようで、激アツでした。そして、その中で見せた、選手たちのメンタル、心の動きが見えて、見ている側の方が、ドキドキしてしまいました。

フォーリーの外した正面30m、マッガーンの外した正面30m。順番が逆ならば、試合の結果も逆だったわけで。

スリリングな展開で、ラグビーの面白さが随所に詰まっていました。リコーは得点力が確実に上がってきていますので、ディフェンスをより強固にできれば、上位をあと1、2チーム倒せるのでは。

10番の2人が作り出したエンターテインメイト。ルーカスはランで魅せ、フォーリーは最後に1人舞台を演じて見せました。今後も楽しみな2人です。


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