読書の記録 2月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

2月
①思考の整理学 外山滋比古
②爪と目 藤野可織

①高校入学時にも読んだように記憶するこの本が図書館でふと目に留まり再読することにした。この本は表題通り、思考やアイデアをいかにして整理、時には醸造、貯蓄、応用するかについて書かれた本。人間の思考という抽象的な話題に対して持ち出してくる具体例やアナロジーが秀逸で読んでいて飽きない。読後すぐに取り入れているのは出てきたアイデアは眠らせても良いんだということ。人に語ったり書いたりした時点で表現欲が満たされて考えることをやめてしまったり質が落ちたりしてしまうのだという。

②好きな本は、と聞かれて答えるのは川上未映子の『乳と卵』。関西弁で書かれた筆致はそれまで経験したことのない読書体験だった。藤野可織の『爪と目』はそんな『乳と卵』にまつわる論文を読んでいる時に知った本。タイトルの『○と△』や芥川賞受賞作といった共通項に誘われて手に取った。

一言で感想を言えば平易な文章で書かれた緻密で、難解な物語。3歳の女の子(「わたし」)視点で描かれる本作は、彼女の視点が縦横無尽に動き、彼女が実際には見ていない領域にまでその視点が入り込む。具体的に言えば、「わたし」が幼稚園へ登校した後の継母(「あなた」)の行動について「わたし」視点で述べている、という筆致。タイトルの爪と目に対しての描写があからさまでなく、巧妙かつ的確な配分で書かれていると思った。
難解だと感じたのは、「わたし」視点で物語が進むことにより、登場人物の心情に関しての描写が少なく、解釈する際に読み手の想像力に委ねられる部分が大きいと感じたため。
この一文が痺れる、という文がそう頻繁に現れなくとも読み飽きることなく最後まですらすらと読めてしまう。
手でつまんでお菓子を食べる行為、コンタクトレンズを入れた目が渇く描写には繊細さとともに、まだ語彙力に乏しい3歳の「わたし」の言葉にできない虚無感やわびしさのようなものが感じられた。最後に近づくにつれ、口数少ない「わたし」の内面のメラメラに狂気を感じていく。

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