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今日会いに行きたい!気になる土偶#027志木市立埋蔵文化財保管センター

秋晴れの気持ち良いお天気で
スタートした10月。
陽ざしはまだまだ強いですが、
外の空気を思いっきり吸いながら
お散歩がしたくなりますね。

私もわざわざ遠回りして、
大きな公園の中をふらふらっとしながら、
いつものスーパーへ向かいました。

公園の大きな噴水と
それを囲む通称じゃぶじゃぶ広場には、
小さな子どもがひざ下まで水につかり、
キャッキャはしゃいでいます。
平和だなあ~と感じる光景ですね。

そんな公園を進んでいくと、
かわいい片方だけの小さな靴が
転がっていました。

私は靴を手にして、
どの親子のものだろうと探していると、
一組のベビーカーを囲んだ親子の姿が
目に入りました。

母親らしき人は必至に探し物をしている様子、
一方父親らしき人はのんびり構えている感じ、
ベビーカーの赤ちゃんは
小さなおもちゃに夢中です。

私がベビーシューズを差し出すと、
「有難うございます。探していたんです!」と
何度もお礼の言葉をいただきました。

お母さんはさっきまでの必死さから
ニコニコと笑顔へ。
そこにはベビーカーを囲んで
幸せそうな家族の姿がありました。

今日ご紹介するのは、
そんな家族を表している様にも見える、
埼玉県志木市の顔面把手付土器です。

西原大塚遺跡
志木市立埋蔵文化財保管センター

顔面把手付土器は縄文時代中期の今から5,000~4,000年前に、中部高地地方を中心に一部の関東地方と、かなり限定的な地域のみで作られました。
その特殊性や希少性から、儀式やお祭りに用いられたものと考えられています。

土器の口縁部には人の顔や動物を表したような把手が付いていますが、その表現は基本的な表し方が共通しているようで、一体感を感じるものになっています。

土器に人の顔の様なモノと動物の顔の様なモノが一緒に表現されているのは、人間の命と動物の命は同等であると考えられていた縄文時代を表しているようです。

動物の顔のようなものは、学芸員の方によるとヘビではないかと言うことです。
縄文時代には、ヘビは男性を表していたとも考えられています。

この土器は女性を思わせる顔と共に、生命力を表すヘビのような動物文様を取り入れ、男女の性を土器の中に組み込んでいると思われます。

つまりヒトの顔と動物の顔は女性と男性を表していて、子孫繫栄などを祈って作られたものと考えられるようです。

またこの土器のカオは向い合っていますが、一般的にもこのように内向き(土器の内側向き)が全体の約8割と圧倒的に多いとされています。
その他には、外向き・両面がカオという種類が確認されています。

内向きが多い理由はわかっていませんが、土器の中を覗き込むようにも見えることから、器に入れた供献の食物を食する姿である、子どもを抱えている、などの説があるようです。

先ほどのベビーカーを囲んだ家族は、
こんな風に見えました。

真剣なお母さん
のほほんお父さん
マイペースな赤ちゃん

縄文土器に込められた願いや祈りは、
それは今も日常にある〝ささやかな幸せ〟
であった気がしますね。

お読みいただき有難うございました。




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