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今日会いに行きたい!気になる土偶#046大磯町郷土資料館

今日ご紹介するのは…なんと4本足!
丸みを帯びたお腹からは、
しっかりと地面を踏み込む足が伸びています。

「動物を象った土製品ね!」
いつもご覧くださっている勘のいいフォロワーさんは、すぐにこんな想像をされたかもしれませんね。

では、全体像をご覧いただきましょう。

ジャジャーン!

神奈川県大磯町 城山遺跡出土

なに?何の動物?

首から先がない。
顔が無いから何だかわかりませんよね。

上から見ると、
こんなに大きな穴が開いているのです。

そう、実はこれは動物を象ったものではなく、
注口土器と呼ばれる縄文土器なのです。

大磯町郷土資料館

注口土器はその名の通りに液体を入れて注ぐための土器で、現在のやかんや急須、ピッチャーのようなものです。

縄文時代中期頃(約5000年前)に登場した縄文土器の一種で、水などを飲むための日常品ではなく、何らかの儀礼の場で使用されたものと考えられています。

縄文時代にはヤマブドウやキイチゴなどの「果実酒が作られていた」と推測されています。
祭祀などの特別な時に、特別に作られたお酒を注ぐための特別な容器であった可能性があるようです。

この土器が出土した神奈川県南西部に位置する大磯町には、縄文時代中期~後期の遺跡が28ヶ所も確認されています。

現在と同じく、温暖な気候で海と山両方の自然で満たされていた場所であったと想像されますが、面白いことに…海の近くに関わらず、なぜか明らかに貝塚であると思われるものが発見されていないのです。


土器や土偶の出土数も多くはなく、その上貝塚も見られず…当時の生活の様子を知る手がかりがあまりありません。

ただ土器作りが盛んではない地域であったことは間違いがないようです。その証拠には、この注口土器をはじめ他の出土した縄文土器も、関東地方全体の土器の形式に乗っ取った作りであり、この地域の特性が見られないということにもあります。

そんな中で作られたのが、動物らしき足を持つ注口土器。残念ながら、この謎の土器に迫るすべは今のところないようです。

縄文時代はさておき…
この地域一帯では古墳時代後期の横穴墓が多く見られます。


郷土資料館のある大磯城山公園は、旧三井財閥別荘と旧吉田茂邸を整備した公園にもなっています。
海はもとより箱根、富士山も望める場所は、縄文時代からずっと素晴らしい景勝地として人気があったのですね。

「今日会いに行きたい…土偶」と言いながらこれは完全なる土器。
でもこの足を見たら「動物の顔」を想像せずにはいられない!ということで、土偶仲間として登場させていただきました。

*参考資料
縄文土器ガイドブック 井口直司著 新泉社

最後までお読みいただき有難うございました☆彡

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