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今日会いに行きたい!気になる土偶#050神奈川県立歴史博物館

「土偶ってどのくらいの大きさ?」と時々聞かれることがあります。確かに本などの写真からは、実際の大きさがイメージしにくいですよね。

土偶の大きさは指先ほどのものから、日本で一番大きい高さ45㎝の国宝「縄文の女神」までと実に様々ですが、5~6㎝程の手のひらに乗るサイズが一番多いようです。

「縄文の女神」は大きいだけでなく、均整のとれた八頭身の全身立像、土偶の中でも群を抜いた美しいプロポーションで知られています。

縄文時代中期(約4,500年前)/山形県立博物館

一方、背の高さではなく、顔の高さ(大きさ)で「日本列島最大級の縄文のあたま」と言われているのは、以前にもご紹介したこちら。
高17.7㎝、幅19.4㎝、奥行き16.2㎝は、ほぼ人間の顔と同じくらいです。

神奈川県立歴史博物館 

「縄文の女神」と同じ縄文時代中期(今から約5000年前)のものと思われる、神奈川県横浜市「公田くでんジョウロ塚遺跡」出土の〝頭部〟です。

顔の作りは、繋がった眉・吊り目・ぽかんと開けた口、高く結ったような髪型に耳飾りの表現と、縄文時代中期の中部高地(山梨・長野)で流行った様相です。

その中でもちょっと他とは違うのは、大きな鼻の穴が作られていること!しかも正面に向けられています。偶然なのかはわかりませんが、鼻だけ見ると動物のようにも思えてきますね。

全体はとても良く磨かれていて、肌はつるつる!柔らかな光沢を帯びています。
口の周辺が赤く塗られているよう跡が僅かに残っているので、漆を施された可能性があるようです。

後頭部の造作も凝らされています。
大きく結われた髪はヘビのように見え、その両脇の渦巻文様の中に十文字のような文様があります。
全体的にとても丁寧に作られていて、女神的な〝頭〟にも思えますね。

では、この「縄文のあたま」は、いったい何でしょうか⁈

実ははっきりとは分からず、「土偶」とも、土器に付いている「顔面把手」とも言われています。

もし土偶であるとしたら…
頭の大きさからすると、全身は人間のような大きさになってしまいますね!
巨大土偶、等身大土偶なんて呼ばれそうです、が、現実に考えると粘土でそのような大きいものを作るのは難しそうです。

顔面把手とすると…
1つ問題があるそうです。それは土偶の首が筒形になっているので、土器の口縁部に取り付けるのが難しいということです。
確かにこの顔の下には丸い首、土器の縁に付けるには難しそうです。

でも、この土器の縁のようであれば可能にも思えますが…。それにしても土器自体が相当に大きくなってしまいそうです。

顔面把手付土器 長野県 岡谷考古美術館


そのようなことで、土偶でもない、顔面把手でもないとすると?

もう一つ考えられるのが、
「釣手土器」の上部の装飾という説です。

「釣手土器」とは、見たままに釣手が付いた土器で、祭祀の際の道具として使われたとされるものです。

例えば、この上部にある欠けた顔のように⁈

釣手土器 山梨県立歴史博物館

あるいは、こんな感じでしょうか?

釣手土器 山梨県立歴史博物館

いずれにしても、他に手掛かりとなり情報が何もないことから、大きさや首の形から推測するしかないようです。

その公田くでんジョウロ塚遺跡」ですが、この〝ジョウロ〟ってなんだか気になりませんか。
そこにはこの土偶を表記する際のこんな事情が…
ワープロを使っていた当時(昭和ですね)、上臈じょうろう塚」という地名が漢字変換出来ずにカタカナ表記に、さらに書き間違えたか何かで「ジョウロ」となってしまい、そのまま発掘の届けを出す際に「ジョウロ塚」となってしまったとか。

「ジョウロ塚」の大きな頭部は、私たちに何らかのメッセージを送っているのでしょうか。

参考資料
縄文土器ガイドブック 井口直司 新泉社 

最後までお読みくださり有難うございました☆彡

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