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海外でノートパソコンを失くしても絶対にしてはいけないたった1つのこと

Twitterを見ていたら海外でパソコンを盗まれたというツイートが流れてきたので、5年ほど前の記憶がよみがえってきた。当時ロンドンで暮らしていた私は夏にちょっとした旅行に出かけました。その時の話です。

向かった先はスペイン・バルセロナ。真夏でも過ごしやすいロンドンとは違い、8月のスペインは暑かった。

リュックに着替えとパソコンを詰め込んで、泊まったのはサグラダ・ファミリアから5分ほどのドミトリー。値段の割にはそこそこキレイだった。そんな中、初日の夜に事件が起こる。



ない。



パソコンがない。



パソコンと着替えしか入ってないはずのリュックにパソコンが入っていない。初日に所持品が50%offの大特価に。

夜ご飯を食べて、ドミトリーに戻った直後のこと。二段ベッドが5つある大部屋にいたのは、私とブルガリアから来た青年3人組だけ。

防犯にはかなり気をつかっていたので、外を歩いている時にパソコンが盗まれたというのは考えにくい。そもそもバルセロナに着いてからずっと歩き回っていたので、パソコンをリュックの中から一度も出していなかった。

つまり、可能性があるとすればドミトリーに戻ってきてから。パソコンがないことに気づく数分前、買ってきた水のペットボトルを共同冷蔵庫に入れるため、荷物を置いて部屋を出た。荷物から目を離した時間は体感で3分ほどだった。


なるほどそういうことか。


正直ベースで申し上げます。ブルガリアの3人組、君らだろ。

数分とはいえバッグを放置したのは軽率だった。だがしかし、この状況で犯行が可能なのは彼らしかいないわけだ。もちろん証拠はないけど、心の中ではもうチェックメイトをかけている。

とはいえ、さすがにそこは小心者なのでめっちゃくちゃ低姿勢で尋ねる。渡辺俊介かな?ってくらいの低さから「エクスキューズミー」と。振り返る3人。6つの目がこちらを向く。何見てんだよ。


ブルガリア「どうしたの?」

私「実はパソコンをなくしたみたいで…」

ブルガリア「パソコン? ユーの?」

私「うん。ミーの」

ブルガリア「盗まれたの?」

私「うん、たぶん(君たちに)」

ブルガリア「え、マジで!? 大変じゃん! どこでなくしたの?」

私「いや、わかんないけど…(ここだよ)」

ブルガリア「困ったね。レセプション(受付)で聞いてみようか」

私「レセプ…? は? なにそれ? 日本語で頼む」

なんか思ってたのと違ったんだよね。

なんかこう、「え、いや、お、お、おれたちじゃねえよ?」みたいなわかりやすい動揺とか、そっけなく「知らないよ」とかそんな感じじゃないの? 想像と違ってこっちが動揺してる。

いい人? ブルガリアの方々めっちゃいい人じゃない? 犯人じゃなくて善人? 「善人」って書いて「ブルガリア」って読む?

一緒に受付まで行ってくれるブルガリアの方々。一瞬でも彼らを疑った自分を恥じる。こんなにいい人たちが人のパソコン盗むわけがないじゃないか。

受付のお姉さんも話を聞くなり「本当に!? 大丈夫? 警察行ったほうがいいよ」って。何なの? みんなすごくいい人なんだけど。「善人」の訓読みって「バルセロナ」だったりする?

なんにせよ、警察という単語が出てきて、ここでいよいよ本格的に焦りはじめる。でも、その日は夜も遅かったので、ひとまず寝た。8時間寝た。異国でパソコン失くした人の睡眠時間としては平均より長い方だと思う。

しかも寝たら大抵のことは忘れる性格が本当に厄介。朝起きると、やっぱり盗んだのはブルガリアの方々なんじゃないかと思い始めていた。

しかし、私が起きた時にはもう彼らはいない。聞けばその日の朝イチでチェックアウトしたというではないか。

逃げられた!

そう思った。思うしかなかった。

やっぱりそうか。だって失くすとしたら、あのタイミングしかないし。

少し親身になってくれたからって簡単に心を許すものではない。我ながら西野カナのトリセツ並の情緒不安定さでどうかと思うが、3人組への怒りがふつふつと湧いてくる。やり場のない怒りとはまさにこのことである。

1年以上海外に住んでいて、物を盗まれたのは初めて。それがパソコンだなんて情けない。

パソコンを失い、虚けな気持ちのままバルセロナ滞在の時間を過ごし、気づけば旅は3日目が終わろうとしていた。どこへ行っても頭の中にはパソコンのことばかり。どこを歩いても、ついついパソコンを捜してしまう。サグラダ・ファミリア、グエル公園。こんなとこにいるはずもないのに。

翌日には午前中の飛行機で帰らなければいけない。万が一と思い、バルセロナの空港や道中で足を運んだレストランにも忘れ物の問い合わせをしていた。

しかし、望んだような回答はなし。見つからないままのパソコン。それはそうだ。だって盗まれたんだから。カフェの座席確保で荷物置きっぱなしにできる日本最高。

ちくしょう。ちくしょう。ちくしょうううおおおおおおおぉぉぉわあああああああ。ブルガリアあああああああ。

再び沸点に達した怒りも帰りの飛行機の中で収まった。冷静さを取り戻し、「パソコンがなくても死なない」と気持ちを切り替える。さあ、明日からまた頑張ろう! ロンドンに到着!




ロンドンの空港でご飯でも食べて帰るかと思ったところでふと頭に過る。







バルセロナへ行く前の出国手続き。




手荷物検査。





コンベアに流すかごに入れたiPhone、ベルト、家の鍵、小銭、パソコン。





かごからパソコンを取り出した記憶がない。








私「すみません、パソコンの忘れ物届いてませんか? MacBook Airなんですけど」

サービスカウンターのお姉さん「ああ、ありますよ」




いた。こんなところにいた。ヒカルが佐為を見つけた場所くらい意外なとこにいた

ほらね。やっぱりバルセロナでパソコン盗まれるなんてわけないよ。だって防犯対策ちゃんとしてたし。ていうか、そもそもバルセロナまでパソコン持っていってないんだもん。


「持っていないものは盗まれない」


これ、結構盲点じゃないですか? ブルガリアの方々がそんなひどいことするわけないって最初から信じてたし。


海外でパソコンを失くした時に絶対やってはいけないたった1つのこと。それは、「何の根拠もなく人を疑うこと」です。

あの時出会った3人、本当に申し訳ありませんでした。元気ですか? 私は元気です。


おわり

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