終わっている自分の経歴を、たった1日で「最高の経歴」にロンダリングした話
こんにちは。天竜川ナコンと申します。
突然ですが私は、他人の経歴を羨ましく思うことが多いです。
※他人の経歴のイメージ※
著名な経営者やアーティスト、作家など…。脚光を浴びる人間の経歴は、読んでいるだけでワクワクします。
なのでふと、私も自分の経歴を、ありのまま書き起こしてみたのです。すると…?
…
あまりに雑魚(ざつぎょ)すぎる。
書きながら、暗い気持ちになってしまいました。残念ながら、これでは誰にも魅力的だとは思ってもらえません。
なので今日は、自分の経歴を「最高の経歴」にロンダリングするため、さまざまな行動を起こすことにしたのです。
まずやってきたのは本郷三丁目駅。ここに来た理由は、日本を代表する、とある施設があるからです。
それは、東京大学です。言わずと知れた日本の最高学府。学生時代たくさん努力しなければ、この門をくぐることはできません。
着いたら早速、一度、東京大学から離れます。適当にそこらのコンビニなどで時間を潰し、再び、東京大学へ向かっていきます。
そして二回目の到着。一体私は何がしたいのか?
勘の良い方であれば、もうお気づきでしょう。東京大学に行って・戻ってを繰り返す行為、すなわち「過去に、東京大学に通ったことがある」という”経歴”を産み出すのが狙いだったのです。
それにより、先ほどの私の経歴は、下記のようにロンダリングすることができます。
天竜川ナコン
東京生まれ。東京育ち。
かつて、東京大学に通っていた。
自作ラップの歌唱が唯一の趣味だが、 再生数は伸びない。
休日は大体ひとりで過ごし、 私服は非常にダサい。
将来に対して、 全く期待が持てない人間の一人。
指を差して笑いたければ、笑えばいい。けれど私は、本郷三丁目駅までの切符代と、ほんの少しの時間で、「かつて、東京大学に通っていた」という魔法のような経歴をゲットすることができたのです。
その後、九段下駅に向かいます。ここにもある重要な施設があるからです。それは…?
日本武道館です。言わずと知れた歴史的建造物であり、アーティストの聖地でもあります。
そして私は心の中で、過去に自分が作った曲を歌い始めました。
その一曲を歌い終えた瞬間、またしても、あるエピソードを経歴に上書きします。それは「武道館で単独ライブを成功させた」ということです。
天竜川ナコン
東京生まれ。東京育ち。
かつて、東京大学に通っていた。
2020年、武道館で単独ライブを成功。
休日は大体ひとりで過ごし、 私服は非常にダサい。
将来に対して、 全く期待が持てない人間の一人。
他人にとって、私は武道館を通り過ぎただけ。ですが、私にとってはスピリチュアルな意味で「ライブ」だったし、一曲歌い終えて大成功だったのです。この調子でどんどん行きましょう。
息つく暇もなく渋谷駅へ到着。ここで、皆さん信じられないかも知れませんが、あの日本を代表する有名女優、新○結○さんと待ち合わせを行います。
待ち合わせの時間になっても中々来ません。それも計算済み。私は新○結○さんと面識が全くありませんし、連絡も当然取っていません。私が勝手に、ハチ公の前で新○結○さんを待っているだけだからです。
しかし、この時間を経たおかげで、私はまた黄金の経歴をゲットします。
天竜川ナコン
東京生まれ。東京育ち。
かつて、東京大学に通っていた。
2020年、武道館で単独ライブを成功。
休日は有名女優と渋谷駅で待ち合わせ、 私服は非常にダサい。
将来に対して、 全く期待が持てない人間の一人。
繰り返しになりますが、勝手に私が、新○結○さんと待ち合わせていただけです。しかし経歴に書き起こした瞬間、それは誰もが羨む情報に、化学変化を起こすのです。
そして速攻、ドラ○もんの擬人化みてえな服装で渋谷のセンター街を練り歩きます。この短時間でまた経歴をゲット。
天竜川ナコン
東京生まれ。東京育ち。
かつて、東京大学に通っていた。
2020年、武道館で単独ライブを成功。
休日は有名女優と渋谷駅で待ち合わせ、
ファッションリーダーとして センター街を練り歩く。
将来に対して、 全く期待が持てない人間の一人。
「お前はファッションリーダーじゃない」という意見もあるかもしれません。では逆に、本物のファッションリーダーは、何をもってして「ファッションリーダー」なのでしょうか?多くの人がそう思っているから?それはどのくらいの人数から認められるのでしょうか?
突き詰めて考えれば、つまるところ、自分が自分のことをファッションリーダーだと思えれば、ファッションリーダーなのです。
その後は、A4用紙にボールペンで絵を描き、画家としての才能を開花させたり…
それをメルカリで販売することで、経営者としての自分も手に入れたり…
はたまた、家の周りを3分くらい走って、何かの世界大会を視野に入れてトレーニングを行う選手としての顔もゲットしました。
また、新聞をアンダーラインを引きながら読み込み、今後の日本の政治を考えました。すなわち、政治家を志し始めました。
森へ向かい、微生物や昆虫など、おそらく数百万匹相手に講演活動も行いました。
…
今日1日、行動を起こしまくった結果、最終的に私の経歴は、下記のようなものに生まれ変わりました。
なんということでしょう。とても最初の私と、同一人物の経歴とは思えません。たった一日で、誰が見ても尊敬できる、そんな黄金経歴へロンダリングすることができました。
この経歴をひっさげて、執筆やタレント活動、最終的には大金持ちになれるチャンスが広がっています。ここから俺は一発逆転を目指し…
目指(めざ)…?
ポロポロ(←涙が溢れる音)
何故でしょう。素晴らしい経歴を手に入れたにも関わらず、何か虚しくてたまりません。
そっと自分の胸に手を当て、その虚しさについて考えました。そして、理解しました。この経歴が、本当の自分の経歴ではないから、なのです。
──そうか。経歴は、「本当の自分」を表すものでなくちゃ、意味がねえんだ──
──今日は休日だけど、頑張って朝の7時に起きました──
──気分良く1日をスタートするため、すぐにお部屋をコロコロしました──
──普段より手間をかけ、朝食にベーコンエッグを作ってみました──
──外に出て、小鳥さんの声を聴きながら散歩しました──
──午後は近所の商店街をプラプラとし──
──コーヒー屋さんで、少し高めのストロベリージュースを頼んじゃいました──
…
以上が、俺の経歴です。地に足が着いた、「本当の俺の経歴」なのです。
おそらく、先ほどの黄金経歴と違い、他人には良いと思ってもらえないかもしれません。ですが、不思議と気分がすがすがしいのです。明日から、前を向いて歩いていけそうなのです。
ここで一つ、みなさまに訴えてえことがあります。
自分の経歴は、他人に良いと思ってもらえなくても大丈夫、ということ。
自分が自分で良いと思えれば、納得できれば、どんな経歴だって構わないのです。
どうか皆さんも、自分が良いと思える「本当の自分」を、この先の人生でたくさん見つけてあげてください。
紆余曲折する中で、最終的にそんな境地に思い至ることができました。
ありがとう。経歴のロンダリング。
「終わっている自分の経歴を、たった1日で「最高の経歴」にロンダリングした話」
〜FIN〜
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