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管理会社の不祥事 具体的な事例(2)

 「マンション」の基礎知識(その5)では、「管理会社による着服や横領事件について」お話し、管理会社の不祥事 具体的な事例(1) で、「管理会社の不祥事」の事例紹介をしました。今回は、その続きです。

管理会社の不祥事(か行~た行)

関兼不動産
 2012年に区分所有者から国土交通省に通報があり、同社の親会社が分譲した全てのマンション(16マンション)に対し「マン適法」で定められた管理会社の義務行為をことごとく行っていないことが発覚した。
 例えば…管理受託契約更新時の重要事項説明書の未交付、管理受託契約書の未交付(総会での口頭説明のみ)、管理組合財産の未分別管理(管理組合口座名義が分譲親会社の名義のまま)、(管理会社が出金可能な)収納口座から(管理組合が保管する銀行印がないと出金できない)保管口座への未移管(翌月末日までに移管するのが義務)、(収納口座の)保証契約未締結、保管口座の印鑑所持、月次報告(毎月翌月末までに行なうことが義務)の未実施などなど。

山陽山興
2012年に組合役員が国土交通省に通報し、管理を受託している3つの管理組合の保管口座の銀行印を所持していることが発覚した。

星光ビル管理
 会計担当の女性社員が管理組合の保管口座の印鑑を(管理会社が所持しては絶対にいけない印鑑だったが、契約関係の書類手続きのため)預かった。(それによる不正引き出しはなかったが、30日間の業務停止となった)
 不正引き出しをを調査する中で、当該会計担当女性社員が2002年から2012年にかけて管理組合の収納口座から保管口座に移管する際に現金の一部を着服していたことが発覚した。(被害額は6管理組合総額約4000万円)
 管理組合には口座残高が正しい通帳と改ざんした残高証明書を提出し、着服していた口座の通帳は提出しないことで10年間も着服が発覚しなかった。

西部ガスリビング
 フロント担当者が2003年から2008年の間に担当する4つの管理組合の銀行口座から総額2840万円を着服した。
 手口は、銀行の払出請求書に(管理員室に保管されていた)銀行印を不正に押印、もしくは理事長に嘘の小修繕工事の支払いがあると騙して押印させて出金した。(架空の領収書を作成して隠ぺい)

双日総合管理
 管理員やフロント担当者がマンション住民から預かった小口現金を着服した。被害にあったのは京都・大阪・兵庫の4つの管理組合で、被害額は合計35万円弱だった。
 管理員が突然出勤しなくなり管理会社にサラ金業者から管理員の借金を催促する電話があったことから、管理会社が(管理員が勤務する)マンションの調査を行い着服が発覚した。
 この調査によってフロント担当者も同じように着服していた事実が判明し、このフロント担当者は、他3管理組合(合計4管理組合)で着服していたことも判明した。

大成有楽不動産株式会社
 男性フロント社員が大阪市内の2つの管理組合から総額約230万円を着服していた。管理員が預かった滞納管理費を管理組合口座に入金せずに着服したり、管理会社変更に伴って解約された銀行口座から新規口座に管理組合のお金を入金しなかったりする手口で着服していた。
 収支報告書の改ざんや残高証明書を提出しない等して発覚を逃れていたが、滞納者からの滞納金の残額確認の申し出があったことがきっかけとなり、不正行為が発覚した。

太平ビルサービス
 2003年から2008年にかけて、住込みの管理員が管理組合の銀行口座から1億8千万円を着服した。管理組合の銀行印は理事長が保管し通帳は管理人が保管していたが、管理員が印鑑を偽造して現金を引き出していた。
 なお総会での決算報告は、管理員が残高証明書の原本は提出せず改ざんされたコピーをして発覚を逃れていた。

大京アステージ
 中間管理職だったフロント担当者が2000年から2008年にかけて、担当する19の管理組合から約8000万円を私的流用していた。
 手口は、架空請求を起こして理事長の承認印を得たり、ペイオフ対策と称して修繕積立金の口座移管をする際に一部を横領し残高証明書を偽造したりしていた。社内の会計管理システム変更に伴い発覚した。

ダイナシティコミュニケーションズ(廃業)
 2005年から2006年にかけて新築のマンション管理組合のフロント担当者が、管理組合の会計担当を務めて横領した。
 管理会社としても・・・分譲時に徴収される「繕積立基金」を管理する銀行口座(=管理組合設立前なので分譲会社名義)のまま管理組合名義の口座に名義変更(または移管)していなかったり、決算時は他の管理組合のお金を口座に振り込んで帳尻を合わせたり、フロント担当者が管理組合の会計担当を務めさせたり、不正が発覚しても公表なかったり・・・どこを切っても超むちゃくちゃ、超悪質かも?

テス(セコムのグループ会社)(その1)
 フロント担当者が2003年から2004年にかけて担当する3つの管理組合から言葉巧みに銀行印を借り出し、社内の会計担当に管理組合の預金口座から自分の口座に振り込ませる手口で1654万円を着服していた。総会の決算報告では、通帳・残高証明書が改ざんされたコピーで済まされていた。
 また、管理委託契約更新前に必要な重要事項説明や書面交付が行われていなかったり、管理会社が管理組合の収納口座から自由に出金する契約をする際に必要な保証契約を締結していない時期があったことも発覚した。

テス(セコムのグループ会社)(その2)
 同社から他社に管理会社が変更され移管手続きが行われた中で、フロント担当者が修繕積立金会計の銀行口座より7年間に約2600万円を着服していることが発覚した。(銀行印は管理組合が保管していたが、偽造されていた)

東急コミュニティ(その1)
 3人のフロント担当が合計13管理組合の小口現金を(3名合計)で約360万円を着服していた。(着服した現金は、管理員が預かっていた集会室使用料や駐輪シール代など)
 3人のフロント担当者は、管理員から受け取った現金を社内の会計担当部署に入金処理せず、そのまま着服していた。管理組合によっては発覚を恐れて決算報告内容を改ざんしていた。(管理会社内の監査により事件が発覚)

東急コミュニティ(その2)
 フロント担当社員が2009年か2011年にかけて管理組合の口座から約1600万円を着服していた。手口は、物品購入などで振込みができない場合に管理組合の指示に基づき組合口座から現金を引き出せる社内ルールを悪用して行われていた。フロント担当に言われるがまま・・・理事長は銀行の払い戻し請求書に押印していたが、払い戻し名目の1つだった役員報酬を自身が受け取っていないことに気がつかなかった。
 別の社員が総会資料を準備したことで、着服の事実が明るみに出た。

東洋コミュニティサービス(その1)
 住み込み管理員が13年間にわたり1100万円をだまし取った。手口は、小口現金の支払いの中に私物の購入代金を含ませたり、架空の領収書を作成したり、領収書の額面を改ざんしたりして行われていた。横領発覚の調査で1100万円以外にも使途不明金が600万円あることが判明した。

東洋コミュニティサービス(その2)
 管理員が2009年から小口会計口座から約80万円を着服していた。
 手口は、備品購入費用と称して理事長に小口現金用の預金口座に入金手続きをしてもらい、小口現金預金口座のキャッシュカードを使って無断で現金を引き出したり、管理事務所に持参された滞納管理費に自作の領収書を発行してたりして着服した。
 小口会計の収支と残高証明が合わず不正が発覚した。

最後に

 やっと「た行」まで終わりました!(笑)
 管理会社のフロント担当者や管理員が、着服や横領等の犯罪に手を染めてしまった事例をお話しするのは・・・実は気が滅入ります。
 でも知ることが、マンション管理組合の立場から考えて見て。どうすれば未然に防げるのか?どこを留意すれば不正を早く見破れるのか?そのヒントには、なると思います。

 管理会社もこうした不祥事が後を絶たないことを受けて・・・フロント担当者や管理員が極力現金を扱わないようにしたり、(端から見ていてかわいそうになるくらい)社内がギスギスする位までにガバナンスを強化(=業務管理ルールや仕組みの強化)したりしているのですが、こうした不祥事の撲滅はできていません。

 ここで、私の子供の頃のお話です。
 食いしん坊の子供だった私(いやいや・・・今でも食いしん坊!(笑))は、水屋のお菓子を見つけると「少しくらいは大丈夫かな?」と弟の分も食べてました。それが高じて弟の分も全部食べてしまって母親から叱られる&弟から文句言われる&謝る・・・みたいなことがありました。この当時から、私は誘惑には滅法弱いです。(笑)
 だからこそ・・・不正を最初に犯した時のフロント担当者や管理員の「心のざわつき」みたいな部分は分かるかも?と思います。
 犯罪は許されませんし、横領は大罪だと思います。でも、誰も管理組合の(他人様の)お金を・・・最初から横領したいとは考えないと思うのです。

 その辺りのことも踏まえて、次回は管理組合がどうしなければならないのか?残った事例を紹介しながら、考えたいと思います。  (つづく)

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