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「マンション」の基礎知識(その5)

 「マンション」の基礎知識(その1) では、国に「600万戸を超えて今後も増加の一途を辿るマンションは、適正に管理できていない!」という危惧があったことから、2001年に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(通称:「マン適法」)が施行された!とお話しました。
 今回は、前回お話できなかった「マン適法」ができた背景を深堀していきたいと思います。

 過去記事は、こちら! 「マンション」の基礎知識(その1)
            「マンション」の基礎知識(その2)
            「マンション」の基礎知識(その3)
            「マンション」の基礎知識(その4)

「マン適法」とは?

 「マン適法」は、2001年8月1日に施行されました。
 この法律によって、マンションの管理会社が定義され登録制になり、業務に制限が加えられました。

 例えば・・・管理委託契約更新の前に管理組合に「管理業務主任者」という資格者が「重要事項説明」が行わなければならないとか、毎月の業務報告を書面にまとめて翌月末までに管理組合に提出しなければならないとか・・・
 その他、管理組合の出納代行や銀行印・通帳の取り扱いについても様々な規制が設けられました。
 その一方、管理組合や管理関係者を支援する目的のために・・・マンション管理士制度の創設や「マンション管理センター」という(管理組合のサポーター的な立ち位置の)公益財団法人が設けられました。また国や各地方自治体にマンション管理組合の相談窓口等を設ける努力義務(条文には「国及び地方公共団体がマンションの管理の適正化に資するために必要な措置を講ずる努力義務・・・」と書いてあります)も課されました。

 この背景の一因には、当時から管理会社の不正や不祥事が頻発し社会問題になっていたことがあったようです。
 例えば(マンションを直接担当する)フロントマンや管理員が、管理組合の通帳からお金を引き出して着服・横領した上に残高証明書を偽造して隠ぺい工作したり、マンション管理組合の出納口座が管理会社の口座を利用していたため、管理会社が倒産した時に管理組合の資金が戻ってこなかったり・・・といった事件が発生していたのです。
 そうした管理会社の不正や不祥事を未然に防ぐ目的もあり法律ができた!ということなのですが・・・

管理会社による着服や横領事件について

  実は「マン適法」が施行された後も管理会社による着服や横領は後を絶ちません。国土交通省の発表によると「マン適法」が制定されてからも127件の横領事件があったようです。私が認識している最大の着服・横領金額は5億円!だと思います。(1億円以上の着服・横領事件も数件あったかも?)

 また大手の管理会社も例外ではなく、大京アステージ(2021年管理戸数NO1)、日本ハウズイング(2021年管理戸数NO2)、東急コミュニティ(週刊ダイヤモンドの管理会社ランキングNO1)、その他、長谷工コミュニティ、三菱地所コミュニティ、伊藤忠アーバンコミュニティ等々、名前に聞き覚えのある管理会社でも着服・横領事件が発生しています。

 管理会社の中でも不正を撲滅するために出納管理は厳しくやっている筈なのですが、やっぱり抜けができると言うか、マニュアルはあってもその通りのチェックせずに担当者任せにしてしまうとか・・・どこかエラーが起きてしまうようです。(特に不祥事を起こした管理会社では、管理員やフロントが現金の取り扱いや出納管理を直接できなくする等・・・かなり厳しいルールやシステムに移行しています)

 でもこれって・・・マンション管理組合側のチェックも甘いというか、管理会社を信じ過ぎているというか・・・ここにも大きな問題がありそうです。
 マンション管理組合は「管理会社に全部任せはNG」ということが、ここでも言えると思います。

 実はこのブログを書くため・・・これまでニュースになった管理会社の不正事件を調べ直しました。なので「こんな感じで着服・横領が行われるのか!」を次回に紹介します。

「マン適法」施行の背景は?

 これまでマンションは、急速に普及してきました。そして、普及と同時に新たな問題が発生しました。(戸建て住宅では起きない)分譲マンションならではの問題です。例えば・・・
   ・「建物の不具合に関する問題」(例:水漏れ、外壁落下等)
   ・「マンション管理運営の問題」(例:管理費滞納、修繕資金不足等)
   ・「マンション居住者間の問題」(例:騒音、駐車場・駐輪場不足等)
 ・・・といった問題です。

 こうした事態となった時に「マンション管理の一般原則についての法律「区分所有法」(正式名称「建物の区分所有等に関する法律」)だけでは足りない!(原理原則だけでは解決困難!)」という認識ができたようです。
 そして上記のような問題を解決していくために「マンションの適正な管理のための管理組合の支援や管理業者との関係等を規定する法律の制定」が必要!となったのだと思います。

 法律の解説書なんかを読むと・・・
 急速に普及した「マンション」は、新しい所有形態(=区分所有)であり、新しい居住形態(=賃貸でないのに壁・床・天井が繋がっている中で居住する形態)だった。
 当時の「マンション」は、日本の中で熟成度の低い(=馴染み切れていない)所有形態&居住形態だったことから、(前述したのようなマンション特有の)新たな問題を生む一因になっていると考えられた。
 「マンション」が日本の良質な住宅ストックになっていくためには、快適な居住環境の確保との維持保全が必要になることから、マンション管理を支援する法律が必要となり「マン適法」が制定された。
 ・・・みたいなことが書かれています。

 また、その他にも老朽化するマンションが増加することが見込まれることも大きいと思います。
 現在(2020年)築40年超のマンションは、全国に81.4万戸あるそうですが・・・10年後の2030年には198万(2020年比:243%)、2040年には367万戸(2020年比:451%)に増えるそうです。
 加えて、総務省統計局によると・・・2042年に65歳以上の高齢者人口が3935万人とピークを迎えて高齢化率が30%を超えるらしいです。

 「2040年のマンションは(特に高経年マンションは)どうなっているのか?何か一抹の不安を感じてしまいます。
 実は・・・こうした将来予想を受けて「マン適法」は2020年に改正されたのですが、その話は別の機会にしたいと思います。

最後に「マン適法」の条文を紹介します

 「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の第1条には、法律を作った目的が記されています。第1条を記して今日のお話を終わらせたいと思います。(こういう・・・短く明瞭な文章を書ける人って尊敬するかも?)

【目的】第1条
この法律は、土地利用の高度化の進展その他国民の住生活を取り巻く環境の変化に伴い、多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大していることにかんがみ、マンション管理士の資格を定め、マンション管理業者の登録制度を実施する等マンションの管理の適正化を推進するための措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
  (つづく)

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