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「マンション」の基礎知識(その4)

 「マンション」の基礎知識(その3)では、京都市の高経年要支援マンションの事例(一例にすぎませんが・・・)をお話しました。
 あそこまで行くと・・・マンションの維持管理(というか、マンション管理をたて直す)にも大きなマンパワーや費用負担が必要となります。
 また仮にたち直れたとしても、お金の問題から建物の抜本的な修繕ができず、漏水等の様々な不具合が頻発するパターンに陥りがちです。

 どのマンションも・・・そうなる前に手を打たなければ八方ふさがりに陥ってしまうのですが、京都市でも(たぶん・・・全国的に見ても)要支援予備軍マンションが多々見受けられます。
 要支援予備軍マンションが陥ってるパターンの1つに・・・マンション内に「管理は、管理会社に任せているから大丈夫!」という認識があり過ぎて、管理組合が主体的に管理運営できてない(「管理会社に任せ」になっている)があると思います。
 今回は、管理会社について深堀していきたいと思います。

 過去記事は、こちら! 「マンション」の基礎知識(その1)
            「マンション」の基礎知識(その2)
            「マンション」の基礎知識(その3)

管理会社に任せているから大丈夫?

 例えば、京都市のマンション調査でマンション管理組合の当事者にヒアリングするため、やっと見つけた役員(理事長等)宅に訪問すると・・・「管理会社に任せている。私は何も分からないから管理会社に聞いてくれ!」と言われることがあります。

 どこのマンションでも、管理会社と管理委託契約しているから(管理を任せているから)・・・「マンション管理は安心!」とイメージされているマンションの区分所有者も多いと思います。
色々なマンション管理運営の現場を見てきた今は、自分の財産管理を盲目的に他人に任せるって危険が危ない(笑)と思います。マンションも財産の1つです。自分の財産は自分で守らないと!あきません!!
 と、言いながら・・・以前の私は「管理会社に全部任せたら大丈夫!」みたいなイメージを持ってました。(笑)(詳しくは「管理会社に全部お任せはNG!と痛感した出来事」でお話しています )

京都市マンション調査の事例

 ここで、京都市のマンション調査で資金不足に陥っているマンションの事例をお話します。このマンションは、間もなく築40年を迎える30戸程度のマンションで、ずっと同じ管理会社に管理を委託してこられました。
 修繕積立金(将来の大きな修繕工事に備えた貯金みたいなもの)もきちんと貯めて来たのに・・・管理会社の言うがままに修繕してきた結果、給排水やエレベーター等の更新時期を迎えているのにお金が足りない・・・みたい事態に陥っていました。
 しかもこのマンションでは、いざ修繕にお金が必要!となってから・・・お金が貯まってないことに気がついたそうです。年に1回の総会はきちんと開かれ、管理組合の会計の状態も報告されていたのにです。
 マンション内に「管理会社に任せているから大丈夫」みたいなバイアスがかかっていたのでしょう。

 管理会社にクレームしても仕方ありません。おそらく管理会社は、マンション管理組合との契約どおりに仕事を進めておられると思うので、責任を追及することは難しいと思うからです。資金不足は、あくまで当事者であるマンション区分所有者の責任です。

 結局このマンションは給排水管の更新工事を先延ばしして、部品が入らなくなりつつあるエレベーターを新品にリニューアルされました。
 これも管理会社が主導権を握って進められたようですが・・・私なら、お金を1円でも多く残すためエレベーターリニューアルは主要部品だけの交換にとどめる検討をするかな?(更新コストが半分以下に抑えられ、少なくとも数百万は支出をセーブできそうなので)

管理会社は提案できないかも?

 管理会社がエレベーターの新品リニューアル提案をするのは理解できます。その提案は、王道だと思います。
 主要部品交換だけにすると・・・(三菱・東芝・日立・フジテック・OTISといった)エレベータ―メーカー製ではなくなるデメリットもあります。何よりもメーカーのメンテナンスが受けられなくなるし、保守点検の契約内容も変わるということも考えられるからです。

 ただ・・・当事者の立場になれば「背に腹は代えられない」こともあると思います。こうした検討は、当事者たるマンション管理組合が主体的に考えないと行えないと思います。

そもそも管理会社って何なん?

 管理会社はマンション管理の当事者ではなく、マンション管理委託契約の受任者(イメージ的には・・・契約内容を履行してお金をもらう会社)に過ぎません。当事者は、あくまでマンションの区分所有者です。

 管理会社がマンション管理委託業を行なうスタンスは以下の2つです。
  ① 契約書に書かれていないことは基本的に行わない
  ② マンション管理の当事者ではなく自社の利益(営利)のための事業

 もちろん「(契約先の)マンション管理組合が円滑に運営されている=(管理会社の)利益につながる」という側面もありますが、最終的には「自社の利益(都合)が優先する」と考えておいて間違いないと思います。

 うちのNPOでは、マンション管理組合の役員さんから「管理会社は、こんなことすらやってくれない!けしからん!管理会社を変えたいけど、どうすれば良い?」みたいな相談(愚痴?)を受けることがあります。
 でも、持参されたマンション管理委託契約書を拝見すると・・・「こんなことをします」とは、委託契約書のどこにも書かれていません。

 辛抱強く相談者の話を最後まで聞いた後、「管理会社はマンション管理の当事者ではありませんよ。マンション管理委託契約に書かれた内容のことしかしてくれません。そこを誤解しないでくださいね」とお話します。
 その上で「管理会社変更を検討する前に、まずは『やってくれるのが当然』ではなく『契約書には書かれていないけど・・・場合によっては追加費用が発生するかもしれないけど・・・』という気持ちで、管理会社の上席の方と話し合われたら如何ですか」みたいなアドバイスをします。

管理会社は営利団体なん?

 管理会社は、間違いなく「営利団体」です。
 ここまでの話を聞くと・・・「管理会社は営利団体?マンション管理組合から搾取している会社か?悪者か?裏切られた!」みたいなイメージを持たれる方もおられるかもしれませんが、それは違います。
 「資本主義国家」は、国民がお金を儲けて支払った税金を分配して社会のインフラ整備や福祉を行なう仕組みです。つまり、原則的に資本主義国家において営利(=営業して儲けること)は、正義!です。
 でも、そこを理解していないというか誤解しているマンション管理組合って少なくないように思います。(私もそうでしたし・・・(笑) )

 管理会社は、マンション区分所有者の団体である「マンション管理組合」のパートナーなのです。マンション管理委託契約の受任者、マンション管理組合と対等の立場である契約当事者(しつこいようですが・・・マンション管理の当事者ではありません)です。
 「マンション管理組合が主体的になる」とは・・・
 例えば「エレベーターの更新は主要部品更新だけで行ったらどうなるのか検討して欲しい」と管理会社にリクエストする、ということです。その時に「頼りになる存在」が管理会社なのです。管理会社に全部任せきり・・・はNG!ということです。(超しつこい!(笑))

まとめ

 このブログを読んでくださった方々が、「管理会社全部お任せ」は楽ちんで良いんだけれど、「当事者としてマンション管理を主体的に考えないと将来に拙いことになる(SDG’sが達成できない!)」と理解してもらえたら、うれしいです。
 また、そうならないようにするためには、まずは「気づき」が必要です。そして「気づき」の次は実践することが肝要です。
 そして実践する時は、(対等に管理会社と渡り合うためにも)マンション管理の専門家を上手く活用するのがお奨めです。

 次回は、今回お話しできなかった「マン適法」ができた背景の深堀をしていきたいと思います。  (つづく)



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