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管理会社の不祥事 具体的な事例(1)

 「マンション」の基礎知識(その5)では、「管理会社による着服や横領事件について」お話しました。今回は、番外編です。
 マンション管理を支援する法律「マン適法」が施行されて以降に明るみに出て業界新聞で紙面をにぎわせた「管理会社の不祥事」を具体的に事例紹介したいと思います。
 その手口を知っておくことで、輪番で管理組合の役員が回ってきた時に何に注意すれば良いのか?見えてくると思います。

「マン適法」施行以降の行政処分数

 「マン適法」が施行されて5年経過した2006年に総務省が行った抜き打ち調査では、国土交通省関東整備局で登録されている1,410の管理会社から31社を抽出して, 「分譲マンション管理業務などに関する行政評価・監視」を実施したところ、 8割に当たる24社で「マンション管理適正化法」違反事例が見つかったそうです。その中で行政処分が行われたのは、ごく一部だったようですが・・・どんだけ~(笑)って感じです。

 「マン適法」施行以降、どの位の行政処分があったのか?数えて見ると(私は74までしか)把握できませんでしたが・・・施行後20年経って100近くはありそうな気がします。

 なお、国土交通省のホームページには「国土交通省ネガティブ情報等検索システム<マンション管理業者>」というページがあります。このページには過去2年間に行政処分を受けた管理会社名と処分内容、そして処分を受けた管理会社の反省文(笑)「業務改善措置」がアップされています。
 過去2年間の行政処分を検索すると、(罪が重い順に)「登録取り消し処分」0件、「業務停止処分」3件、「指示処分」11件、「行政指導処分」0件でした。

 でもこれって、氷山の一角だと思います。国土交通省が調査した不祥事の中でも(処分するほど悪質でないと判断され)行政処分が見送られた事例もあれば、管理会社内で隠密裏に処理された不祥事もあれば、現在進行形で明るみにでていない不正行為もあるのでは?と思うからです。
 「マン適法」ができて20年経っても・・・「未だ管理会社の不正行為は撲滅されていない」ということは、頭の片隅に置いておく方が良いと思います。

管理会社不祥事の具体例

 手口が分かった事例をお話します。エクセルにまとめたら、テキスト数が7000文字を超えてしましました。(笑)
 丸2日かかった(汗)力作ですので、何回かに分けてお話します。管理会社名はひらがな順、屋号から「株式会社」の表記は削除しました。

管理会社の不祥事(あ行)

穴吹ハウジングサービス
 2012年実施された社内検査で、フロント担当者が2011年から2012年に架空の工事請求や小口現金等を着服するなどして6つの管理組合から総額290万円の着服を行っていたことが発覚した。
 着服の手口は、管理員から預かった施設利用料を組合口座に振り込まなかったり、管理組合の銀行口座から引き出された役員報酬を渡さなかったりして行われた。
 また同じ社内検査で、管理員が管理組合備品購入の際に自らの生活用品を購入するなど37万円分を私的流用していたことも発覚した。

イオンディライト
 管理員が、2009年頃から巡回担当する数件の管理組合で総額2000万円弱を着服していた。
 手口は、組合員が管理費を入金する預金口座(収納口座)の通帳と銀行印が同時保管されていることを悪用して無断でお金を引き出したり、数百万円の架空の工事請求書を作成し理事長に修繕積立金預金口座(保管口座)の銀行印を押印させてお金を引き出したりした。
 定年退職に不正が発覚し、懲役2年4月の実刑判決となった。

伊藤忠アーバンコミュニティ(その1)
 管理職のベテラン社員が2002年から2007年にかけ、担当する5つの管理組合から376万円を着服した。
 手口は、新築マンションの管理開始時の備品購入費として仮払いを受けた後に領収書なしの会計処理を行ったり、(架空の)防災用備品の購入を名目に理事長から理事長印(銀行印)を借り受けて110万円を横領したりした。
 また現金で回収した滞納管理費や駐車場・駐輪場等の使用料を管理組合の会計に計上しない手口の着服も行われていた。
 現金を持参した組合員には管理員室に備え付けの領収書を発行し、本来郵送される滞納管理費の請求書は「自身が直接届けるから預かる」と社内で偽り、(当人に請求書が届かないよう)処分していた。

伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社(その2)
 ベテランの女性管理員が組合員から預かった現金から約200万円を着服していた。被害を受けた管理組合は高齢住民が多く、管理組合からの要望もあり毎月30人ほどの組合員が管理員に直接現金で管理費等を納めていた。
 領収書は、入金確認後に管理会社が管理員に一括送付し、管理員が組合員に配っていた。
 しかし2005年に60万円を着服したことを皮切りに、自ら領収書を発行するようになった。着服により不足した管理費等は、翌月分の管理費等で穴埋めすることで何とか帳尻を合わせていたが、他の管理員による告発で着服が発覚した。

エヌケー建物管理
2006年から2007年間にフロント担当と経理と管理員が共謀し、数回にわたる小修繕工事の架空会社の請求書を作成し、合計約150万円を管理組合の預金口座より支出し横領していた。

大阪ガスコミュニティライフ
(伊藤忠アーバンライフに吸収合併)(その1)
 2001年から週4日2つのマンションに勤務していた管理員が2003年から2009年にかけて、合計1000万円を着服した。
 現金で受け取った管理費等を未収金として報告したり、同金額の架空領収書を偽造して支払ったと報告したり、交代したばかりの新理事長に「修繕費がいる」と偽って(前年度の理事長より同じ名目で既に押印してもらっているのに)出金伝票に銀行印を押印させたりする手口で管理組合の預金口座から不正に引き出していた。
 管理費等の滞納が増えていた組合員に管理組合役員が訪問し、支払いの督促を行なったことから発覚した。

大阪ガスコミュニティライフ
(伊藤忠アーバンコミュニティに吸収合併)(その2)
 フロント担当者による着服で、3つの管理組合で総額6600万円の被害があった。
 驚くべきことに・・・そのうち1つの管理組合は、前回処分を受けた管理員による着服事件で被害を受けた管理組合だった。(着服したフロント担当者は、管理員の着服事件の事後対応にあたっていた)
 着服は、2010年から2013年の間に数十回に分けて行われていた。
 手口は多岐にわたっており、工事費や保険料の水増しや架空工事の請求、理事長がマンションから退去する際や死亡された際に管理組合の印鑑を一時的に預ったタイミングで数十枚の(社内の)払い戻し伝票に無断押印し、必要に応じ会計担当部署に書類提出し不正な支払い処理を行った。
 不正行為を隠ぺいするために年度決算報告書は、フロント担当者が改ざんし管理組合に提出したが、月次報告書は提出されていなかった。
 定期総会の議案書の事業&決算報告に、実施した覚えのない修繕工事が記載されていたことで発覚した。

オークラハウジング
 2011年の定期総会後の理事会で理事長が決まらなかったことから、前年度の理事長は、保管口座の銀行印を新理事長に引き継げなかった。
 フロント担当者は、前年度の理事長から、保管口座の銀行印を(フロント担当者が)預かるよう指示されたため、管理員室で印鑑を一時保管することにした。
 その後1年以上理事長が決まらず・・・管理員室での保管が2013年まで継続した。フロント担当者の引き継ぎ時に発覚し、国土交通省に届けた。

小田急ビルサービス
 経理課在籍15年以上(経理のプロ)でマンション管理課主査を務めるベテランのフロント担当者が、2002年から2008年にかけて担当する4管理組合から9800万円の横領を行っていた。
 経理のプロだけに・・・巧妙な手口で隠ぺいされてきたが、同社のマンション管理事業をグループ会社に移管することになり発覚した。
 このニュースを伝える記事には被害に遭った組合員のコメントとして「管理会社にお任せしているので簡単に横領されないようにして欲しい」と書いてありました。(笑)

 そりゃあ・・・6年間も横領を見抜けなかった管理会社が一番悪いと思うけど、管理会社に全部任せているからと管理組合は何もチェックしなくて良いとは思えません。被害を受けた管理組合にも責任があると思うなあ・・・
  (つづく)

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