『ベルファスト』

「街を出たとしてもベルファストは失くならない」「(未来へ)行きなさい、(過去を)振り返らず」『ノマドランド』(=No Mad Land)で綴られた"心の平穏とその所在"と同義。他者(この作品では故郷)に安心を求めるのではなく自分自身の中に見つけることが大事。

"悲劇の中の愛"については『ジョジョ・ラビット』と似た雰囲気があるが、ジョジョの盲目的なマインドセットとは乖離しているように思える(あちらは少年が先の見えない戦禍で自分の生き方の舵を取る成長のお話)。ある意味でジョジョの次の段階のお話とも言えるかもしれない。

『鉄コン筋クリート』における街の意義は、この作品にも通ずる部分がある。故郷の街に強い思い入れがあること、その街が危険に晒され崩壊しかけていること、それゆえに街を出なければいけないこと等々。街とは場所や土地を指す物であるが、結局のところ人々の集合体だ。思念体、とまで言ってしまうと急に幽波紋感が出てしまうが、意識の集合体と言えるだろう。だから、綻びが出たり、酷い時には完全な分断が発生することもある。

"未来への希望を携えた少年の目"というレンズ越しに、移ろい行く激動の時代の変化を、私たちは見ることができる。モノクロ世界の中のカラーフィルムのような小さな希望で、明日に向かって飛べ。

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