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【第一弾】物語論、脚本術から記事をより面白くする研究まとめ

梅雨に入り、湿度と気温が高くなるにつれ、本格的な夏の到来がこわくて仕方がないです。そんなこわさを「夏はかき氷もあるし!アイスも美味しい!かき氷もあるし!………(汗)」と紛らわしているのは、私だけでしょうか。

さて、ここ1ヶ月半くらい「記事をどのようにしたら面白くなるか」という問いをもって研究していました。

web記事において、正しい文章の書き方を示す本は多いですが、いかに読者に面白く読んでもらうかというナレッジはまだまだ世の中に広まっていないなと感じます。しかし、「物語」という軸をに探すと、世の中にはさまざまな物語があります。例えば、脚本やお笑い、映像など。ゆるジャンルで語られている「物語を面白くする工夫」を取り入れたらweb記事でももっと面白いものが生まれるのでは!と考えた次第です。

今回は、「web記事以外のナレッジからどう記事を面白くするか研究」の第一弾ということで、物語論と脚本術からweb記事に活かせそうなことをまとめてみました。

📚今回研究で使用した本


物語を“進める”方法

物語にはスピードがあります。家から学校に着くまでを一コマ一コマ丁寧に書くこともあれば、新卒入社からの30年間を要約的に進めることもできます。

どこを重点的に描いて、何を読者に届けたいかを考えることで、どこを丁寧に進めるか、またどこを要約的にまとめるかが導き出されます。(また、目的から不必要な部分を描くことを避けることができる)

💡 物語の時間的展開は1コマずつゆっくりと進めることもできれば、要約的にどんどん進めることもできる。つまり、叙述には速さがある。情景法では叙述の速度が遅く、要約法では早い。=中略= 細かくみてみると、叙述の速度は必ずしも一定ではない、メリハリも重要である(「物語論」p.54)

1. “状況”から選択肢を浮き彫りにする

何か新しい状況が発生すると、論理的にいくつかの選択肢が生まれ、そのさまざまな可能性の中から1つが実現し、するとまた論理的にあるうるあたらな選択肢が出現する。単に実現した行為だけでなく、実現する可能性のあった行為についても考えたのである。(「物語論」p.26)

取材ではインタビューイーに「何をしたか」を聞くことが多いかもしれないですが、その時の“状況”を聞いて記すことも大事です。

状況を示すことで、いくつかの選択肢が生まれて、なぜその選択肢をインタビュイーが選んだのかの説得力が増す。また、時代背景が今と異なるときは、特にその記述が大事になります。

上記の工夫が反映されている記事:

米津:「当時、僕らが共通して覚えていた違和感は『世の中に、こんなにたくさんモノが必要なんだっけ?』というものでした。周囲を見渡せば、毎年数多くの新商品で溢れかえっています。それなのに、自分がほしいと思えるモノがひとつもなかったんです。THEは、そんな社会の状況に対するアンチテーゼとして始まりました。

まだiPhoneもiPadもない時代。当初はプロダクトデザインの観点から、これからのあるべきユーザーインタフェースを検討していたという。 ほどなくしてインターネットが一般に浸透し、一気にWebデザインの必要性が高まる。IA(Information Architecture)に基づき、情報を適切に伝えるためのデザインを習得することが求められた。

上記の記事は状況を踏まえて、なぜインタビューイーがその選択をしたのかがうまく書かれています。

1つ目の記事では、「インタビューイーの違和感」「状況」「インタビューイーの決意」という順番で描かれています。2つ目の記事では、「iPhoneもiPadもない時代と時代背景」「インタビューイーが行っていたこと」「状況の変化(時間の経過)」「インタビューイーの行っていたこと」というう順番で描かれています

💡ポイント

  • 「状況説明」⇨「インタビューイーの行動」の順番になるため、第一段落、第二段落など記事の早い段階に入れられることが多い。(記事の最後で状況説明することはあまりない)

  • 気をつける点:

    • 状況説明が長くなってしまうと、物語のメリハリもなくなってしまうので、読者を疲れさせてしまう可能性が高い(つまり、離脱率が上がってしまう)。なので、なるべく上京説明が短く書くことが大事になってくる。


2. “状態変化”を効果的に描く

人は変化するものに魅了されます。主人公が変化しない物語はつまらないし、壁を乗り越えてサッカーが上手くなったり、人見知りな子がどんどん友達ができていったり、主人公の“変化”を楽しむために物語があると言っても過言ではないです。状態の変化を効果的にかけると、読者が面白く読み進められる記事になります。

「王が死んだ。」では、とある王が生きている状態から死んでいる状態へ変化している。つまり時間の展開がある出来事が語られている、ゆえに物語の定義に合致している。一方で、「原子は電子から構成されている」「メアリーは背が高く、ピーターは背が低い」という文は、世界において常に通用する事実を述べているだけであり、具体的な場面で一度だけ起こった出来事ではない。(「物語論」p.37)

上記の工夫が反映されている記事:

矢原氏の研究者としてのキャリアはユニークだ。純粋に植物を扱う研究から、次第に「人」に向き合う領域へとシフトしてきた。植物生態学から始まり、人とのかかわり合いの中で生態系の保全を考える保全生態学、人間が植物を利用してきた歴史を研究する植物利用史などを経て、生態学的な観点で人間の行動や意思決定を科学する「決断科学」という領域を確立した。

  • 最初に「矢原氏の研究者としてのキャリアはユニークだ」とまとめを言い切ってしまうことで、矢原氏の研究者としての変遷が頭に入ってきやすい。

  • また「保全生態学、植物利用史」などの知識があまりない人でも、これらのキャリアはユニークなんだと思いながら読むことができる。

さらにこの10年ほどで、太宰府の雰囲気はずいぶん変わってきたという。2011年、参道にスターバックスを開業する際には、地場の協力者とともに「太宰府になじむ店舗デザインを」と調整。隈研吾氏による、杉材をふんだんに使った店舗がオープンした。その後も、太宰府名物である梅ヶ枝餅を販売する昔ながらの店とともに、パン屋やファストフード店ができたり、古民家を改装した宿泊施設が開業したりしている。

  • 上記は、比較的わかりやすい時間の経過を表している文章である。太宰府の変化とともに太宰府天満宮が何をしたか、最初に「さらにこの10年ほどで、太宰府の雰囲気はずいぶん変わってきたという」と記すことで伝わりやすくなっている。

💡ポイント:

  • パラグラフの最初に状態変化を表す文章を書くことで、読者に負担なく読み進めてもらうことができる。

💡気をつけるポイント:

  • 一段落のなかに何度もこの手法を使ってしまうと、変化が多すぎて逆に読者の負担になってしまう。(「さっきは30年前の話をしていたのに、今は10年前の話をしてる?!」みたいになってしまう)

  • 「ここは特に物語を早めたい」など見極めて使うことが大事で、最低でも一段落で1回の使用が限度のような気がする。


3. 大事なことの伝え方

記事の目的は、たいてい1記事につき1つです。なので、さまざまな角度から読者に伝えたいことを伝えないといけません。しかし、同じことを何度も書いていては単調になってしまう。そこで、エピソードに対して大事なことを1度だけ語るのか、複数にわたって語るのかなどを検討できるといいです。

💡 「頻度」の分類
①単起法(一度起こったことを一度だけ語る)
②反復的単起法(一度起こったことを複数回語る)
③括複法(何度も起こったことを一括りにして語る)
(「物語論」p58)

※こちらはweb記事に応用できそうだなと思ったものの、該当する記事が見つけれなかったため、また見つけ次第記入をします🙏

“惹きつけられる”物語を作る方法

私たちは物語で主人公の“葛藤”を楽しんでいます。どんな葛藤を抱き、どんな選択を選び、物語が展開されているか。葛藤がない物語は、単調なで面白くないでしょう。

記事も同様に、インタビューイーがその選択をとるのにどんな葛藤を抱いたかは重要です。また、葛藤を描くことで、その選択をした説得力も増し、かけている想いの重さも伝えることができます。

どんな物語でも何らかの葛藤や対立がある以上、1,2行に要約されたログラインに明確で関心を惹きつけるような対立があれば、たとえそれがあまり独創的でなかったとしても、読者の目を引く武器になる。対立の内容がりかいしやすいほど良い。誰が誰と何を巡って争うのか。読者の気を引く理由は何か。負けると何を失うのか。見送られる脚本のほとんどが、この対立が面白い(「『感情』から書く脚本術」p.50)

上記の工夫が反映されている記事:

井上「子どもの頃、近所の工作教室に通っていたんですが、そこの先生に『おまえはいつも中途半端に終わるな』と言われたことがあるんです。以来、『何かをつくりたい』という気持ちが湧く前に、『自分には無理』という観念が先行するようになりました。美術や映画、小説といった作品に触れるのはずっと好きでしたが、あくまで自分は鑑賞者や読者の側。憧れる気持ちはあっても、『つくろう』という発想は全く起きませんでした。絵も下手でしたしね」

自分はできない」という呪縛に囚われていたインタビューイーがどう変わっていったかが記されています。

ポイント:

  • 葛藤を描くには、記事を書くよりかは、インタビューでどれほど聞き出せているかが重要だ。当時どんな想いだったか、なぜそのようなリスクをとれたのか、その選択ができたきっかけは何だったのか、質問の角度を変えて葛藤を浮き彫りにするのが大事になってくる。

まとめ

みなさん、いかがでしたでしょうか。面白いと思う漫画や本などは、ある程度なぜ面白く感じるかの法則があります。その法則は、さまざまなところで研究されてまとめられているので、web記事でも参加になる部分が大いにあります。

今回は物語論と脚本術をメインに調べてみましたが、次はお笑いや映像などからもweb記事に応用できないかを調べてみようと思います。

お知らせ

今回参考にさせていただいた記事に使った「designing」は、私が所属しているinquireの自社メディアです。先日、designingのサイトがリリースされましたので、ぜひ読んでみてください。

私が所属している株式会社インクワイアでは、編集アシスタントの採用をしています。web記事のライティングに興味がある方、文章の研究をしてもっと技術を上げたい方、ぜひ以下の募集要項を読んでみてください。


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