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セネカ読書案内【応用編】

前回、【基本編】では、最も有名なセネカの著作のひとつ、『人生の短さについて』を紹介しました。
今回は【応用編】として、『倫理書簡集』を取り上げます。

じつはこれ、文庫にもなっていないし、入手も簡単にできないんです…。とても親しみやすいし読みやすいのに。転売ヤーから高額で買うのも癪なので、ぜひ図書館で借りてください。もしくは、出版社のかた、復刊してください!
『セネカ哲学全集』の、5巻と6巻に入っています。

愚痴ですけど、うちの県の、「映え」で評判の県立図書館、セネカの全集置いてないってどういうこと!?
キケロの全集は置いてあるのに(むむむ)。
取り寄せ希望したら、5巻は愛知県、6巻は富山県の図書館からやってきて、びっくりでした。

図書館員さん、お手数おかけしました


◆セネカ哲学全集(5)(6)◆

さて、『倫理書簡集』について。

こちらは、セネカ師匠から、親友のルキリウスくんに宛てた書簡集。「セネカより、親愛なるルキリウスへ」で始まり、「お元気で。」で終わる、短めのお手紙がたくさん入っています。
それぞれの手紙のあとに、内容の要約(ポイント)があり、註もついていて、理解しやすくなっています。

最初の手紙㈠が、こちら。

セネカより親愛なるルーキーリウスへ

わがルーキーリウスよ、君がなすべきことを言おう。
それは君自身の権利を護ること、これまでに奪い去られ たか、くずね取られたか、あるいは、こぼれ落ちたかした時間をかき集めて守ることだ。

君が心得るべきことを次に記す。
私たちの時間はときに奪い取られ、ときに削り取られ、ときに流れ去る。だが、もっとも恥ずべき損失は怠慢のせいで起きるものだ。
それに、君がよく注意しようと思っていても、人生はこぼれ落ちる。大部分はなすべきではないことをしているあいだに、もっとも多くは何もしないあいだに、全人生は筋違いのことをしているあいだに。

誰か知っているなら教えてほしい。 誰が時間にそれだけの価値を認めているか。誰が毎日の価値評価をしているか。自分が一日一日と死につつあることを誰が理解しているか。
(後略)

『倫理書簡集』ルキウス・アンナエウス・セネカ


何回読んでも痺れる文章です。ほかの手紙にも、言い回しを変えて同様の考えが書かれます。

私たちは日一日と死んでいる。私たちはすでに幼年期を、次いで少年期を、さらに青年期を失ってきた。いま過ごしている今日この日も、私たちは死と分かち合っている。水時計を空にするのは、最後に落ちる水滴ではなく、それまでに流れ落ちたすべてだ。

『倫理書簡集』ルキウス・アンナエウス・セネカ

哲学する上で「死」に言及することは避けられないのだけど、もちろん死ぬことばっかり書いてあるわけではなく、大衆受けすることしか考えてないような哲学者にはムカつく〜!とか、この前めっちゃ船酔いしてひどい目にあったわ〜、とかいう手紙もあります。もちろん、友情についても、アツい言葉が綴られていてぐっときます。

基本的に、ともに哲学を志すルキリウスくんにアドバイスしたり、自分の考察を伝えたりする、といった内容であり、読んでいると、セネカ師匠といっしょにストア派哲学がんばる!と、勇気が出る感じ。

セネカ師匠晩年の、ほぼ引退した時代の著作なので、おちゃめな部分も垣間見えて楽しめます。
(言うても、いつ死刑宣告されるかわからない状況ではありましたが。そして実際、皇帝ネロ暗殺未遂に関わったとして、自殺させられるのです…)

ぜひ、少しずつ大切に読んでみてください。
ではお元気で。

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