夢日記#9 知らない国の
こんな夢を見た。
外が薄暗くなってきた夕方。
わたしと同い年の同僚・Sが「帰りにOHPのシート、買っといてくれる?」と頼んできた。
「いまどきOHP?! (若い子は知らんやろ…)」
「だからアナタに頼んでるのよ」
人に頼んだくせに、Sもいっしょに買いに行くらしく、二人ならんでスクランブル交差点を渡っている。こちらが青信号なのに車がふつうに突っ込んでくるため、間をぬうようにして渡り切る。
商店街の入り口にある書店。店舗の端のほう、文具が置かれている平台のところで商品を見る。
「ところで何に使うの?」と聞いてみると、Sは「じつはいま歴史の勉強をしていて」と、A4用紙にプリントアウトしたレジュメを取り出す。昔からそのセカンドバッグ使ってるよね、微妙におっさんくさい。と考えながらその動作を見ているわたし。
渡された、カラーでプリントしてホチキス止めしてある十数枚の用紙には、西洋らしき国の歴史がまとめられている。パラパラとめくってみるが、カタカナの人名はどれも聞いたことがない。冒険小説の巻頭にあるような、茶色と白で描かれたノスタルジックな地図も描かれていた。
(了)
◇夢に出てきたSについて書いておく。
もと同僚のSは2023年7月23日に亡くなった。
新聞のお悔やみ欄で知った。
少し前に、T薬局を病気で退職したと人づてに聞いて久々にメールしたが、返信はないままだった。
二十代の頃、ブラック企業だったK薬局で一緒に名ばかり管理職として働いていたが、Sが一足先に転職した。その後わたしも体調を崩して転職した。
同僚でなくなったあとも数人の飲み仲間と集まった。彼はアルコールは一切飲まなかった。「ウーロン茶で酔える」と、酔っぱらいと同じテンションの毒舌で盛り上がっていた。
久しぶりに会うと「老けたねぇ」と言ってくる失礼な男だった。同い年のくせに。自分は三十前から若白髪だったくせに。
子供は大学生になっただろうか。男の子が二人いたはず。奥さんも薬剤師だった。一度ケアマネジャーの研修会でいっしょになり、声をかけてもらって話をしたことがある。
狭い業界だからまた会うかもしれない。五十一歳で死別するなんて、何と言ったらいいのかわからない。でももう大人だから「Sさん、何と言ったらいいか」とか言っちゃうんだろうなと思い、姑息な自分にうんざりした今日のわたし。