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【書評】プラットフォーム革命―経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか

<本の概要>

米国人の著者がアメリカのIT企業における実例を踏まえながら、プラットフォームというビジネスモデルについて余すことなく描いた本。GAFAをはじめとした世界を席巻するIT企業の多くがプラットフォームとしての特性を持っており、筆者も「今後はプラットフォームが世界を支配するだろう」との見解を持っている。このビジネスモデルの何が優れているのかを分かりやすく説明した上で、成功するプラットフォーム/失敗するプラットフォームの違いについて詳細に語られている。

<この本を読んだきっかけ>

今の仕事に直結する内容だから。私も勤め先でプラットフォームビジネスに従事しているわけだが、まだまだ発展途上のフェーズであり、もっと良いサービスを作り上げるべく日々格闘している。そんなわけで「良質なプラットフォームとは」という根本を考え直すにあたって参考になればと思い本書を手に取った。

<良質なプラットフォームを形成するために必要なこと>

本書によると、良質なプラットフォームを形成するためには以下の5つのステップがある。プラットフォームが成熟する度にこのステップが上がり、質も向上するというわけだ。

ステップ1:コネクション(参加)
ステップ2:コミュニケーション(マッチング/取引)
ステップ3:キュレーション(情報整理)
ステップ4:コラボレーション(ユーザー間の協力)
ステップ5:コミュニティー(1つの社会の成立)

【ステップ1:コネクション】

何よりも最初にやるべきことはプラットフォーム内に人を呼び込むことだ。当然ながらユーザーがいないプラットフォームに価値はない。金銭を使った大規模な初期投資なども集客の一案だが、本書では「臆面もない手段を取ることが有効な場合はある」と書かれている。

事例として挙げられているのがウーバーとエアビーだ。ウーバーはドライバーを確保するために秘密工作員を組織し、同業他社で働くドライバーの引き抜きを行なっていた。エアビーは競合のWEBサイトで物件を掲載しているオーナーに、自社への「寝返り」を促すようなスパムを送っていた。こうした行為は決して褒められたことではないが、結果としては両者の成長に大きく繋がることになった。

当然こうした眉唾ものの戦略だけではなく、その裏で伝統的なマーケティング戦略も駆使している。とはいえ、いずれにしてもプラットフォーム初期はなりふり構わぬ方法を使ってでもユーザーを確保する必要があるということだ。特に競合他社や既に成功しているネットワークからの切り替えを促すことは、効率もよく重要な戦略の一つとなり得る。

【ステップ2:コミュニケーション】

プラットフォーム上に人がいるだけでは意味がない。プロデューサーと消費者がマッチングし取引を行うことで初めて経済効果が生まれるため、それが円滑に行えることもプラットフォームに必要な要素だ。データを活用した自動マッチングの重要性なども記載されているのだが、加えて「不要な機能は削ぎ落とし必要最低限のみを残す」ことも重要なのだと言う。

例として挙げられているのはティンダーとフェイスブック。出会い系プラットフォームのティンダーは表示された相手の写真を見て右スワイプするだけで簡単にマッチングが成立するシステムを導入した。従来のマッチングサイトにありがちな、長々しいプロフィールを読んだり・自己アピールばかりのメッセージを読むというような煩わしさを一切剥いだわけだ。結果、シームレスで使いやすいシステムがユーザーに受け人気が爆発した。フェイスブックも最初はプロフィール作成と友達申請という2つの機能しかないシンプルなプラットフォームだったが、その圧倒的な使いやすさがフェイスブックを勢いづけることになった。

機能はユーザーの声を反映させながら後々付け加えれば良いとうのが著者の意見だ。初期段階ではとにかく使いやすさに拘り、円滑なマッチングを誘導することに全てを捧げよと書かれている。

【ステップ3:キュレーション】

世の中良いユーザーばかりではない。ストレートに言うと、周囲の人間に悪影響しか及ぼさないような害悪ユーザーは必ず存在する。そういった存在を締め出すためにもプラットフォーム上でのルールは明確にし、悪質なユーザーが入ってこないように入口部分で選別を行うことが重要になる。無秩序なプラットフォームは瞬間的に流行ったとしても長続きしないだとうと著者は語る。

一例として挙げられているのがチャットルーレットというサービス。自動マッチングで知らない誰かと繋がりWEBカメラで話ができるというものだ。未知の出会い系サイトとして、リリース当初は爆発的な人気を誇った。しかし、時間が経つにつれて「淫らな姿を晒す」などの悪さをするユーザーが増えた結果、良質なユーザーが離れ瞬く間にプラットフォーム上から人は消え去ったのだ。

チャットルーレットは誰でも登録できたし、当初は利用のルールなども特に設けられていなかった。この自由さが、最終的には己の崩壊を招いた。悪質なユーザを締め出す施策として、登録時に身分証明証の提示を必須にしたり、強制退会/アカウント停止などを措置をスムーズに行えるようにすることが重要であると語られている。

また、レビューや評価といった機能も非常に効果的である。悪いユーザーを締め出すという意味だけでなく、良質なユーザーに末長くサービスを使ってもらうことを促すからだ。正しく使えば使うほどユーザーにメリットをもたらすプラットフォームこそが真に求められるのだ。

【ステップ4:コミュニケーション / ステップ5:コミュニティー】

多くの良質なユーザーを取り込みマッチングが円滑に行えうようになった。そのフェーズまで進んだプラットフォームがさらに価値を高めるためには、ユーザーに権限を与えて最終的にネットワークの統治を任せることが必要だと語られている。

ユーザーがプラットフォームに対して当事者意識や帰属意識を持てるようになるとネットワークの価値や質は飛躍的に高まることになる。そのためにはユーザー間の協力(コミュニケーション)を促し、熱心なユーザーが集まるコミュニティーとしての地位を確立するために施策が必要になる。

一例としてあげられているのがのオフ会だ。エアビーやリフトなどが事例として上がっているが、それぞれ「物件オーナー間の繋がりやドライバー同士の繋がり」を強固にするために対象者向けのリアルイベントを頻繁に開催している。こうしたイベントがコミュニティー参加者の意識を高め、結果として極めて熱心なユーザーを生み出し、コミュニティー内の統治を自発的に行うようになる。単なる物件オーナーではなく、”エアビーの”ホストなのだと言う意識付けが大事なのだ。ここまでステップを駆け上がれば、競合が類似サービスを始めてもユーザーが簡単に寝返ることもないし、プラットフォームの価値は確固たるものになる。

<結論>

我々のプラットフォームもまだまだ未熟であると改めて痛感させられた。コネクションフェーズですら十分に完成されているとは良いがたい。悔しいことに認知は広がっているがユーザーが思うように増えないのだ。「なぜ使ってもらえないか」「どうしたら使ってもらえるか」の声を集めて、サービス改修に活かさねばと考えさせられた。

本書ですが、プラットフォームビジネスに従事する方や興味がある方には非常に学びになると思うのでオススメです。久しぶりに有意義な本に出会えたこと非常に嬉しく思います。

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