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街に染み出す拠点のために。「11-1 Studio Fellowship」プログラム中間発表 / / レポート②

「断片的になったかつての地域資源を再編する」をテーマに、2022年8月から10月までの3ヶ月で行われた「11-1 Studio Fellowship」プログラム。11月17日から活動報告展示が始まり、19日土曜日には参加チームによる最終発表会が行われます。

それぞれのテーマに向き合い、地域を尊重しながら日常を柔らかく変えていった3ヶ月間の実験。本記事では、「11-1 Studio Fellowship」プログラムに採択された3組のアーバニストたちによる活動の様子をレポートします。

プロジェクトの概要について、詳細は前回のレポートを参照ください。

3ヶ月間・3組によって行われた「11-1 Studio Fellowship Program」のプロセス

毎月一回の「Monthly Open Studio」の様子。

11-1 Studio Fellowship」プログラムでは、期間中、3つのプロセスを繰り返しながら各チームのプロジェクトをブラッシュアップしました。まず、本プロジェクトのオーガナイザーである一般社団法人for Citiesと共に街のリソースを深掘り、その可視化を行う「Collaborative Research」。そして、毎週水曜日に都市と地域についてフランクに語り合う「Dinner Club」、最後に、
月に1回、プロジェクトの進捗をシェアしメンタリングを受ける「Monthly Meeting」です。

都市生活における”休息”を考える

まずご紹介するのは、仕事に最適化された都市生活のなかで、“休息”のハードルが高いのではないか?という問いから生まれた「おやすめないまちに、もうおやすみ」プロジェクト。無意識的な「居眠り」ではなく、意識的な「仮眠」である「仮「寝(かりね)」時間の総和を増やすことを目的として、発起人の安藤智博さんを中心に、3ヶ月という短期間に関わらず活動の域を広げパワフルに展開してきました。

11-1 Studioを出入りするなかで、「睡眠」に関わる風土や文化にも着目。睡眠の歴史的脈、さまざまなターゲット層に注目し、仮説と検証を重ねていきました。椎名町駅周辺を中心に、メンバーの福田和さんが大学時代に過ごした山梨県甲府市でフィールドリサーチを重ね、大学生や路上で生活されている方へのインタビューも実施しました。

フィールドリサーチでは、緑道沿いに施されて芝生が惹かれた休憩所を発見。

リサーチの結果、「オンからオフへの切り替えをシームレスに」という提案で「ONOFF(オノフ)/Street Nappers Commnity」というブランドを発足させることに。「仮寝」をより気軽に都市の生活者に体験してもらうために、どのような仕組みが必要か、実験を重ねました。

また、板橋区・大山で10月29・30日に開催された「いたばし画廊アートフェスタ2022」に参加。約2500人が参加したイベントで、「都市と休息」をテーマに休憩所を設置しました。そこで並びのブースに出店していた畳店さんがこの活動に共感し畳を寄贈いただいたことから、畳を置くことで休憩所を拡張すると同時に、参加者に都内50の休息スポットを聞き取り、Googlemapに登録しました。

親子連れや友達同士など、たくさんの人が畳の休憩所を利用
いつの間にか公式休憩所に
都内50の休息スポットをヒアリング
並びのブースの畳店から寄贈していただいた畳。ONOFF特製の焼印を入れてもらいました。

”米袋”をアイコンに、新しい近所付き合いの形を追求

次にご紹介するのは、ご近所づきあいが少なくなっている現在、軒先に並ぶ植栽につながりを生み出す力があるという仮説から発足した「植栽でひろがるご近所つながり」プロジェクト。商店街の一角から、植栽を通じて街の人が「なんかいいなぁ」と思える心地よいつながりをゆるく広げていくことをミッションに活動しています。

プログラムの期間中は、商店街の一角に置く植栽として、身近にある米袋をアイコンに野菜や花を育ててみることから活動が始まりました。米袋プランターを実施・発信している方にインタビューを実施し、Dinner Clubにお招きしてお話を伺ったり、小さな点をつなげて形を作っていきました。

実際に米袋プランターを作ってみて、使い勝手を確認してみると、固定しにくかったり、底が抜けやすい、水はけが悪いなどの問題を実感することになります。偶然Dinner Clubに参加した方から「蜜蝋」という手法があることを教えてもらい、米袋を蝋引きすることで米袋の性質を活かしたプランターができることを発見しました。

また、「植栽でひろがるご近所つながり」プロジェクトは、蜜蝋の粒をアイロンの熱で溶かしながら伸ばしていくワークショップを開催。板五米店の常連さんに告知したことで遊びに来てくれた方や、通りがかりで参加してくださった方など、街の方が参加するイベントになりました。

蜜蝋を紙袋の上に丁寧に置いてプレスしていく
作業を通して自然に会話が生まれる
作りたいものに合わせて、切ったり、貼ったり。
蜜蝋を知るきっかけとなったなかのみかさん

屋台が巡り、人とものが巡っていく

3つ目のプロジェクトは、「屋台が巡り、人とものが巡っていく」。屋台を用いて様々な活動をする人々との出会いを通して、可動性を持つ屋台の面白さに気づいた発起人が、地域で自由に使えるフリー屋台を作るプロジェクトです。11-1 Studioの周辺に散らばる地域資源を活用しながら、DIYで屋台を作っていきます。実際に屋台を引いて街を歩くことで、どのようなことができるのか、フリー屋台が地域の資源としてどんな影響を与えるのか実験を行いました。

自分たちで屋台を作るのか、もしくは地域の人と一緒に作るのか。作り方や使われ方、屋台の居場所を描くまで一歩一歩進めていった屋台チーム。

まずは屋台に関する情報収集を行うため、Dinnar Clubを活用し、上池袋で昭和の木造賃貸住宅を活用し「くすのき荘」を運営する山本直さん、コミュニティナースとして活動する山賀雄介さんを招いて、くすのき荘で作られた屋台「足りなさ荘」についてお話を伺いました。

そこで得られたのは、イベントのためのハレの日を作る屋台にはしないということ。いかに足りない要素を作り、地域の人に使われる存在になるか。畳める、バラせる、車で運べるなど、使われ方によってどういった屋台の日常を描くかが課題となりました。

その後、実際に11−1 Stidioを使って1週間既存の屋台を置いてどのような使われ方をするのか検証。11-1studioを取り巻く地域の文脈や生態系を探りながら、この地域のための屋台のあり方を検討しました。

11月には、11-1 Studioの周辺に散らばる地域資源を活用しながら、DIYで屋台を作り、実際に屋台を引いて街を歩くイベントも開催。何を持ち帰って来れるのか、フリー屋台が地域の資源としてどんな影響を与えるのか実験を行いました。

お団子屋さん、お花屋さん、焼き鳥屋さん、お茶屋さん、お惣菜屋さんなど、商店街を巡りながら、フリー屋台活用の可能性についてヒアリングしながら街歩き、ニシイケバレイでお茶を飲みながら、シーナと一平の日神山さんと「まちをひらく楽しみ」や「フリー屋台」の可能性についてお話を伺いました。

屋台を押して商店街を歩く
ニシイケバレイで日神山さんと話す
新東京木材商業協同組合の前には自由に持ち帰れる木材が。屋台チームは木端を活かして屋台に取り付けるオブジェに。
近くにある野口材木店の木をいただき、屋台の天板をゲット
和菓子店の前で休憩
ONOFFとコラボし、屋台のそばにゴザを敷いて休憩

気軽に街について話し合う場を

都市のことを語り合いたい創造的な人々に開かれた、毎週水曜の夕食交流会「Dinner Club」も本プロジェクトにおいて重要な役割を果たしました。豊島区を拠点に活動するまちづくりの実践者をお招きし、夕飯を共にしながら彼らの場所や活動についてお話を伺ったり、食のユニットを呼んで「地域と食」をテーマに語り合ったり。

時にはメンバーが拠点とする「板五米店」に場所を変えることも。都市のこと、商店街のこと、コミュニティのこと、屋台の可能性、地域の食など、都市にフォーカスしたさまざまな会話が生まれました。

足りなさ荘の山本さん、山賀さんを招いた手巻き寿司パーティー
美味しい食事を前に、自然と会話も弾む
ユニット「おばんざいと日本酒や」とコラボしたスペシャルなDinner Club

3組のプロジェクトによる最終活動報告会は、2022年11月19日18:00より。活
動報告展示は11月17日12時〜11月27日17時まで。ぜひお越しください。



最終活動報告会:https://fb.me/e/2kQa72TtV 
活動報告展示:https://www.facebook.com/events/1123286054981547 
プロジェクト詳細:https://11-1fellowship.studio.site/


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