【本解説】疲れた貴方に染み渡る本。 『あやうく一懸命生きるところだった』
フリーのイラストレーターであるハ・ワンさんが書いた「あやうく一懸命生きるところだった」は、報われずに頑張っている人におすすめの一冊。
一生懸命に取り組んでも結果が出ないこともあることを踏まえ、自分が走っているレースが本当に自分の行きたい方向か確認することが重要だと伝えている。
また、40歳を目前にして自分の生き方を再考し、幸せを見つけた人物の実話を紹介している。授業を受けることで生きることの意味を再確認できるという。
あやうく一生懸命働くところだった。
あやうく一生懸命生きるところだった【ハ・ワン】
今回はフリーのイラストレーターであるはわーさんが書かれた名著「あやうく一生懸命生きるところだった」を解説していこうと思います。この本は、一生懸命生きているのに報われないと感じている人におすすめです。そういう気持ちになったことは皆さんも経験があるでしょう。頑張っても給料は上がらないし、誰も褒めてくれないし、モテないし、おまけに親は早く結婚しろと言います。
そんな時は一度ブレーキを踏んで、自分が進んでいる方向が本当に行きたい方向なのか確認してみるといいでしょう。もしかしたら、一番お金持ちになる競争や誰が一番出世するか競争、30歳までに結婚するべき競争といった、誰かが作ったレースの上を一生懸命走っているのかもしれません。
ゲーテは言いました。「人生とは速度ではなく高さである」と。あなたは今、忙しくて考える暇もないまま他人が引いたレースの上を全速力で走っているのかもしれません。
この本の著者、はわーさんもそうでした。一生懸命生きてきたのに幸せになれなかったので、40歳を目前にして会社を辞め、自分がどう生きたいのかじっくりと考えることにしました。この本を読むことで、本当に生きるとはどういうことなのかを見直すことができます。
努力は必ず報われるわけではない
まず一つ目は、「努力は必ず報われるわけではない」ということです。当たり前ですが、努力したからといって報われるとは限りません。努力は私たちを簡単に裏切ることがあります。実際に一生懸命やったのに結果が出なかった経験があるでしょう。例えば、プログラミングや物理など何回勉強しても理解できなかったりします。
逆に、一生懸命努力しなくても報われる人もいます。数え切れないほどのオーディションを受けてもデビューできない人もいれば、友人のオーディションについていったことがきっかけでデビューしてしまう人もいます。つまり、必死に努力したからといって必ずしも見返りがあるわけではないし、必死にやらなかったからといって見返りがないわけでもありません。
努力したからといって、YOASOBIのような歌声や作曲センスを身につけることができないのと同じです。では、努力する意味はないのでしょうか。いえ、そうではありません。歌が上手くなりたい人はボイストレーニングをし、努力すれば良いし、足が速くなりたい人は走る練習をすれば良いのです。ただ、その努力は必ず報われるわけではないということを理解することが大切です。
この世の中には、「自分がこんなに努力したんだから必ず見返りがあるべきだ」という考えを持っている人が多いですが、その考え方こそが問題の始まりです。報われることはいつだって気まぐれです。努力したからといって良い結果が出るわけでもないし、努力しなかったからといって結果が出ないわけでもありません。もちろん、努力した分だけ結果が出ることもあります。
この現実を受け入れれば、少しは楽になるでしょう。何事も頑張ればかなうわけではないけれど、やってみる価値はあると考え、気を張りすぎずに生きてみるべきだと著者は書いています。このメッセージには、多くの
人々が救われる力があります。努力すること自体は大切ですが、結果に執着しすぎず、プロセスを大切にすることが重要です。自分の努力や結果に対する期待を適切に管理することで、心の負担を軽減し、自分らしい人生を歩むことができます。
人生はいつも思い通りにはいかないものですが、その中で自分がどう向き合い、どのように成長していくかが大切です。著者は、自分の人生において、努力と報われることのバランスを見つけることが重要だと伝えています。
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やる気がなくても働いていい
二つ目は、「やる気がなくても働いていい」ということです。よく「どうやったら仕事のやる気を出せますか?」という相談を受けますが、この悩みはちょっとおかしいと著者は指摘しています。どこがおかしいかというと、やる気というのは愛情のようなもので、無理に出すべきではないということです。
「どうやったら仕事のやる気が出せますか?」と聞くのは、好きでもない人を目の前にして「どうやったら彼女のことを好きになれますか?」と聞いているようなものです。確かに、どんなに努力しても好きじゃないものは好きになれないように、やる気が出ないものはやる気が出ないのです。
やる気は自ら作り出すものであり、誰かに強要されて作り出すものではありません。しかし、「やる気がないなら辞めろ」と言われることが多いため、困ってしまいます。ですが、そもそもほとんどの人が働くのはお金を稼ぐためであり、やる気がなくても好きじゃなくても働けばいいのです。
この世界の全員がやる気を持って好きな仕事をしているわけではありません。時間と労働量を使っているのにも関わらず、さらにやる気まで要求してくる会社はちょっと欲張りすぎです。
やる気がないなら、無いなりに目の前の仕事を淡々とこなせばいいのです。続けていれば、そのうち好きになってくるかもしれませんし、やっぱり好きにならないかもしれません。他にやる気を見出せる仕事が見つかるかもしれないし、その時にやる気を注ぎ込めばいいのです。無理にやる気を出そうとすると、反動で無気力になることもあるので注意が必要です。
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世間の風潮を捨てて自分らしく生きる
三つ目は、「世間の風潮を捨てて自分らしく生きる」ということです。この世の中には年齢相応にこうするべきだという風潮があります。例えば、「30歳までに結婚するべき」、「仕事で出世するべき」、「子供を作るべき」、「夢を持つべき」、「男はマニュアルの車に慣れるべき」、「女は子育てするべき」などです。
この本の著者も、最初は他人の期待や世の中の風潮に合わせて生きようと頑張りました。出世してお金持ちになるために努力し、誰に見られても恥ずかしくない立派な人生を目指しました。しかし、努力は必ず報われるわけではなく、結局出世できず、平凡な生活を送っていました。40歳になっても結婚できず、車も持っていなかったのです。
みんなによく見られようと頑張れば頑張るほど苦しくなった著者は、周りの目を気にするのをやめて自分らしく生きることにしました。そもそも、結婚したい理由もなかったし、車が必要なわけでもありませんでした。そして著者は気づきました。本当に恥ずかしいことは、この年で何も持っていないことではなく、自分なりのポリシーや方向性を持たずに生きていることだと。
自分なりのポリシーを持って生きることが大切であり、何のために頑張っているのかを考えるべきです。もし頑張っている理由が他人のためであるなら、一度自分の生き方を見直してみるべきです。
人と比べてはいけない
次に、人と比べてはいけないという考えです。最も手っ取り早く簡単に不幸になる方法があります。それは、誰かと自分を比べることです。自分よりも稼ぎが良い人やイケメンの友達、芸能人などを思い浮かべ、自分を横に並べてみると、すぐに不幸な気持ちになります。自分はなんて不幸なんだろうと思ってしまうでしょう。新しい車がないし、頭も良くないし、お金もないし。
私たちは誰かと自分を比べないように気をつけなければならないのです。しかし、自分が気をつけていても、親や友達が勝手に比べてくることがあります。そこの家の子はニンテンドーに就職して結婚したとか、本当にどうでもいいことを比べられることがあります。
人間は人生の大事な時間を、幸せを探すより不幸を探すことに費やしているのかもしれません。私たちが自分と比べてしまうのは、いつも自分と近い存在です。例えば、ビル・ゲイツやイチローがいくら稼いでいても、彼らとはレベルが違いすぎて比べる気にならないでしょう。
私たちが比べてしまうのは、自分と同じレベルだと感じている人です。バカだと思っていた同級生が東大に入ったり、後輩が美女と腕を組んで歩いていたりすると、嫉妬してしまいます。つまり、人間はほとんど自分と似たレベルの相手と比べて落ち込んだり、優越感に浸ったりしているのです。
それは、どんぐりの背比べにすぎません。ビル・ゲイツやイチローから見たら、私たちの比較はくだらないことだと思っているでしょう。だから、人と比べられそうになったら、「これはどんぐりの背比べだ」と思うことです。そうすれば、その比較を受け流すことができます。
期待しすぎないこと
次に、期待しすぎないことです。人生の真理として、期待しすぎると必ずがっかりすることになります。例えば、友達から「この映画すごく面白かったから、絶対に見て!」と言われて期待して見た映画がつまらなかったら、すごくがっかりしますよね。また、期待していたゲームがつまらなかったら、イライラしてしまうことがあります。
逆に、期待せずに観た映画がそこそこ面白かったら、少しは得した気分になるでしょう。同じ映画でも、期待していた人はガッカリして、期待していなかった人は普通に面白かったと感じます。つまり、期待と失望はセットなのです。期待するから失望するのですね。
これは映画だけではなく、あらゆる場面でもそうです。新しくできた飲食店に行く時も、マッチングアプリで誰かに会う時も、新作のゲームをプレイする時も、期待しすぎると必ずがっかりします。しかし、期待しなければそこそこ楽しめるのです。大きな期待をしなければ、毎日が小さなラッキーの連続になります。
逆に、期待すればするほど人生はつまらなくなっていくのです。楽しく生きていきたいのなら、過度に期待するのはやめたほうがいいでしょう。適度な期待を持つことで、毎日の小さな喜びを大切にし、人生を楽しむことができます。
他の選択肢がないという執着を捨てること
次に、他の選択肢がないという執着を捨てることです。例えば、「この仕事を失ったら終わり」とか「この女性を逃したらもう結婚できない」と信じると、悲劇が始まります。悲劇が起こるのは、他の選択肢がないと思い込んでいるからです。
例えば、著者は高校生のころ、韓国で一番難しいと言われている大学に入学することに執着していました。他の大学では意味がなく、その大学に合格することだけが唯一の希望であり、他に道はないと思い込んでいました。しかし、3回受験に落ち、自殺まで考えたそうです。結局7年かけてその大学に入学することができましたが、大学に入っても人生は大して変わりませんでした。
この話は、あきらめずにチャレンジし続ければ夢は叶うというサクセスストーリーではなく、他の選択肢がないと考えることがいかに愚かであるかという話です。執着しそうになった時は、顔を上げて周囲を見渡すことで、他の選択肢がたくさんあることに気づくでしょう。そうすれば、余裕を持って生きることができます。
また、やりたいと思っていたのにやらなかったことが誰でもひとつやふたつあります。著者は子供の頃、映画監督になりたいと思っていましたが、その夢はかなわなかった。なぜなら、映画監督になるための努力をしていなかったからです。何も行動しなければ、何も叶わないのは当然です。
しかし、安心してください。この世の中は夢だけ見て何もしない人がほとんどです。だから、失敗してもいいからもっと行動すべきだと言っています。自分の心に従って行動すれば、少なくとも誰かのせいにすることはありません。拒絶されたとしても、試さずに諦めるよりはマシです。夢や恋が叶わなくても、その行動には十分意味があります。だから、今より少しだけ自分の人生に忠実になってみましょう。
ダメな自分を認めたら自尊心が増す
次に、ダメな自分を認めたら自尊心が増すということです。最近、SNSで金持ちや美人セレブと自分を比べ、自分がダメだと感じたり、受け入れられないと思い、自分は生きる価値がないと卑下する人が増えているようです。しかし、自分を卑下して生き続けるのは苦しいですよね。
そもそも、自尊心が下がる一番の原因は何でしょうか。もちろん、すごい人と自分を比べてしまうこともあるでしょう。しかし、一番の原因は、自分を過大評価しているからです。自分は本当はもっと凄いはずだと思っているので、理想と現実のギャップが大きくなりすぎて悩むのです。
現実の自分が嫌いになり、最悪の場合、自ら命を絶つ人もいます。しかし、動物たちはどうでしょうか。他のリスより木登りが苦手だとか、どんぐりを集めるのが下手だからといって自殺することはありません。動物たちは幻想を持たず、自分を過大評価せず、ありのままの自分で生きています。だからこそ、自由に行動できるのです。
私たちも、幻想を捨ててありのままの自分を認める必要があります。「ダメな自分を認める」というのは、「自分はこれくらいの人間で、それでも悪くない」と考えてみることです。そう思って今の自分を受け入れると、逆に自尊心が高まってくるでしょう。100%満足していなくても、心の中に「もっとすごくなりたい」という気持ちを持ち続けても構いません。でも、「今のままの自分でも悪くない」と思うことが、自尊心を保つことなのです。背伸びをすることではなく、自分を認めることで、人生がより充実したものになります。
お金のために自由を後回しにしないこと
最後は、お金のために自由を後回しにしないことです。この著者は仕事を辞めてから1年間、わざとお金を稼がない生活を送りました。40歳の男性が働きたくないというのは、情けないと思われるかもしれませんが、彼は人生で一度くらいは自由な暮らしを満喫してみたいと考えていたのです。
確かに、そんな生活は羨ましいですね。彼がお金を稼がないと決めた理由は、これまでお金のために自分の自由を犠牲にしてきたからです。年収300万円の人も1000万円の人も1億円の人も、お金が足りないと嘆いています。つまり、お金のために自由を後回しにし続けたら、私たちは一生自由になれないのです。
しかし、お金を稼がなければ生きていけないのも事実です。そこで著者は、現在の生活が維持できるだけの収入を得ることを目指し、働くことを決めました。彼は、これまでよく分からない未来のために我慢してお金を稼いで貯金していましたが、その考えを改め、現在の生活が維持できるだけの収入を得ることを目指しました。彼はフリーランスのイラストレーターとして働いており、必要以上に働くことはなくなりました。
彼の目標は、現在の自由のために適切な収入を稼ぎ、死ぬまで自由に暮らすことです。このような生き方も、素晴らしい選択肢の一つですね。
まとめ
努力が必ず報われるわけではない。
やる気がなくても働くことは許される。
人生マニュアルを捨てて、自分らしく生きよう。
他人と比べてはいけない。
期待しすぎないこと。
他に選択肢がないという執着を手放そう。
やらなかったことへの後悔は長く続く。
ダメな自分を認めることで、自尊心が増す。
お金のために自由を犠牲にしないこと。
もし毎日の生活に余裕がないと感じたり、何のために頑張っているのか分からなくなったら、一度立ち止まって、自分が進んでいる方向が本当に望む方向かどうか確認してみることが大切です。もしかすると、誰かが作った「一番お金持ちになる競争」や「一番早く結婚する競争」のようなレースに追われて、無意識に一生懸命生きていることに気づくかもしれません。
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