ベルリンが晴れていた理由は(読書感想文)
今回取り上げるのは、深緑野分作・『ベルリンは晴れているか』。
本屋大賞や直木賞候補にも挙がった作品なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
かく言う私は、読書感想文の名手・くなんくなんさんのnoteでこの本を知った。
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舞台はもちろんベルリン。
第二次世界大戦が終わった直後と、戦争中の話がクロスしながら進んでいく。
この描写が非常にリアルで、まるで目の前でドキュメンタリー映画を見せられているのかと錯覚するほど。
これを書いたのが私と同年代の日本人というのだから驚きだ。
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もう一つの特徴として、難しいドイツ語が頻繁に登場するという点が挙げられる。
共同体とか生存圏とか 国民受信機とか。
もはやルビが長すぎて入りきっていない。そして私の狭小な脳みそにも入りきらない。
フォルクスエンプフェンガーって。
フォルクスエンプフェンガー。
そんなわけで、初めて読み終えた時は壮大なストーリーとドイツ語に圧倒されて感想が思い浮かばなかった。
(大学で学んでいた第二外国語がドイツ語だったのは内緒である)
しかし意を決して2度目に挑戦すると、結末が分かっていることもあり 初見ほど苦労せずに読む事ができた。
あれほど圧倒されたドイツ語のオンパレードも、9割くらいはドイツの雰囲気を盛り上げるための舞台装置と言うか、仕掛けのようなものだと分かった。
そして、この作品の新たな面が見えてきた。
それは「人間のグレーな部分を徹底的に描いている」という点。
この事について、主な登場人物4人に絞って話す。
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まずは主人公のアウグステ。
ドイツ人でありながら、反ナチスの思想を持つ17歳の少女。
ナチスが迫害の対象とする障害者や移民の子どもに心を寄せるが、実はある罪を犯していて…(ネタバレのため自粛)
そしてひょんな事から主人公と行動を共にするユダヤ人男性カフカ。
彼はXXなのに△△と嘘をついていて…(ネタバレのため自粛)
続いてベスパールイ下級軍曹。
ソ連の行政機関に所属しているが、元々は⬜︎⬜︎出身で…(ネタバレのため自粛)
最後にドブリギン大尉。
ベスパールイの上官にあたる。
国(ソ連)の体制に反対する者を取り締まるのが仕事だが、実は自身が◯◯で…( ネ タ バ レ の た め 自 粛 )
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まとめると、4人ともそれぞれ自分の信条や国家に反する罪を背負っているのだ。
しかしその罪に対する考え方は四者四様。
ある者は開き直り、またある者は他人を陥れて己の罪をチャラにしようとする。
結末も、裁かれる者あり、生きながらえるも罪を償うか逃げるか答えが出せない者あり…
そんな人間の弱さ、狡さをありのままに描写、綺麗に上書きすることをしない…というのがこの作品の印象だ。
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そんな訳で、なかなか読み進めるのがしんどい作風ではある。
しかし緊迫のラストシーンで、主人公アウグステは空が美しく晴れていることに気がつく。
本当は自分の心の中と同じように重苦しい曇天であればよかったのにと思いながら。
ただその直後、彼女はこう思い直す。
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この時、彼女の後頭部には銃口がつきつけられていた。
死を目前によぎった思い─それは、これまで自分を苦しめてきた物事から解放されることへの安堵だったのではないだろうか。
彼女はナチスの過激思想が蔓延るベルリンに生まれ育ち、そのせいで両親や大切な人を失った。
やっと戦争が終わったと思いきや、今度はベルリンに侵攻してきた連合国軍の兵士から 嘲笑や欲望の対象とされた。
17歳の少女にしては、あまりにも暗く重すぎる人生。
終盤の青空は、彼女の心の影をより濃く際立たせるための描写なのではないだろうか。
先に述べたドイツ語の多用と同じく、これも作者が織り込んだ「仕掛け」なのかもしれない─。
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おわりに
くなんくなんさんのご紹介のおかげで、この本を手に取ることができました。
読むたびに疑問や発見に出会える、非常に読みごたえがある作品です。
(この感想文も、様々な切り口から3回ほど書き直しました💦)
ここに実際私が拝読した記事をご紹介させて頂き、感謝の気持ちにかえたいと思います。
お読み下さり、ありがとうございました。
・参考
Wikipedia
《 国民ラジオ 》
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