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不登校の修理屋さん

健太はふてくされてゴロンと横になった。

健太は中学3年生、身長185センチ、体重85キロの巨漢である。

「あーむかつく」

今思い返しても腹が立つ。

起き上がり壁を殴る。

穴が空く。

『ズボッ』という音が鳴る。

ドアを蹴る。

ドアが吹っ飛ぶ。

『バカーん』


流石に不味いとおもったのか、健太はドアを元に戻す。

ドアの構造は意外にシンプルなものだ。


再び、健太はベッドに寝転がる。

そこに猫のたまがドアの空いた穴から入ってくる。

「にゃーオー」

ドアは穴が空いていて、もはやドアの役目を果たしていない。

もはやドアは要らない気もするが、

やはりあったほうが良い気もする。

そのうちに健太は自分がなぜ腹を立てているのかを忘れてしまった。

そして、なんだか腹が減ってくる。

健太は中学3年生でまだまだ伸び盛りなのだ。

健太は立ち上がり叫ぶ。

「かあちゃん、飯はまだー???」

聞こえていないようだ。

さらに叫ぶ。

「かあーちゃん、今日の夕飯はまだー??」

「これから焼き鳥を買いに行くところだよ」と母の返事。

母の雅美は健太の部屋まで来て部屋の様子を見て呆れ返る。

「あんたは図体ばっかり大きくて、、、」


次の日、母の雅美は子供の不登校と暴力に疲れ果て、

インターネットで探した不登校支援のハヤトに電話をかけた。

しばらくして折返しがかかってきて、

「子供が発達障害と診断されていて、不登校で困っています」的なことを述べた。

ひとまずハヤトが家に来ることになった。


ハヤトは家の中の様子を見てドン引きした。

家中の壁やドアに穴が空いているのだ。

うーん、これは資産価値がガタ落ちですな、、、

と思いつつ2階へ行く。

すると、健太があらわれた。

「ちわーす」

うーん、こいつはデカイ。

俺よりも強そうだ。。。

ハヤトは暴力には容赦なく暴力で返す方針だが、

これは敵わなそうだと悟った。


以前、家でナイフを振り回しているという子の家に行った時、

ドアを開けた瞬間にナイフで刺されたことがある。

ただ、それはおもちゃのナイフだったのだが。
(殺意は全く無かった)

もはや現代の忍者ビックリ屋敷である。

健太はあっさりと家庭教師のハヤトの生徒になることになった。

これにはハヤトも驚いた。

また、意外に健太と話しても疲れないことにも驚いた。

素直で普段からストレスを発散しているため負のエネルギーが意外に少ないのだ。。。


次の週、学校の宿題をすることになった。

が、10分位で健太は言った。

「先生、麻雀をやろうぜ」

といって、麻雀セットを出してきた。

ハヤトは残念ながら麻雀が詳しくない。

早稲田の同級生は昼間から麻雀をしていたがあまり気が進まなかったのだ。

が、それも良かろうと思い、

麻雀を2人ですることにした。

ご丁寧に麻雀のガイドブックもあり、それを見ながら麻雀をした。


次の週、今度こそは学校の宿題をしようとしたら、

「先生、音ゲーをしようぜ。俺の腕を見てくれよ。」

と言ってきた。

そして、早業で音ゲーを始めた。

けっこうレベルが高いなと感心していたが、

それどころでもないなとも思ったがなかなか終わらない。。。


そんなことが何回か続いた。

ハヤトは悟りを得た。

大自然を人間の手で変えようとしてもダメだ。

人間は大自然の良さを活かす方向にするしか無いのだ。

子供はある意味では大自然の一部なのだ。

母親の雅美も疲れ果て、その方向で同意した。

ある日、健太は授業中にラジオを分解し始めた。

なぜ分解するのか謎であったが、

機械いじりが好きな人は分解するのが好きだと何かで聞いたことがある。

が、授業中でなくても良いではないかとは思うが、

思い立ったら吉日で、

居ても立っても居られないのがADHDタイプ様の特徴である。


次の回で、ハヤトは健太をロボット教室に誘った。

健太は乗ってきた。

そこでは好きなだけ機械を分解することが出来る。

スマホにパソコンに掃除機に分解した。

で、ロボット教室の先生は『君は今スグ修理屋になれるな。大したもんだ。』

と健太を褒めた。

次からロボット教室に休まず通うようになった。

で、健太はそこで意外な才能を発揮した。

年下の子供を教えるのが上手だったのだ。

ADHDタイプは同年代が苦手でも年上や年下との相性は抜群に良かったりする。

ハヤトは思った。

ロボット教室の先生か修理屋にはなれそうだなと。

健太は何ヶ月後かにロボット系の高校に進学した。

そして、後に英語圏に留学し自分と似たような人が世界にはたくさんいると喜んでいた。


つくづく、

荒れ狂う大自然に感謝し、

それを活かす方向を考えることが、

哀れな我々人類に出来る唯一のことなのであった。


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