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不登校の子の部屋に入るということ

ハヤトは高校を辞めた。


そしてしばらくブラブラしていた後に定時制高校の試験を受けた。


当日高校の最寄りのバス停を降りて歩いていると、


ふと中学校のサッカー部の奴らを何人も見かけた。


サッカー部は不良の巣窟で高校を辞めている奴らがたくさんいたのだ。


少年院に行った奴もいた。


試験前の教室内で少年院で同じ部屋だった話とかをしていて、


ハヤトはドン引きしたものである。


「お勤めご苦労さまです!!」


ハヤトはさらにドン引きした。


お前らお勤めというよりかは他人に迷惑をかけただけやろ,,,


とぼやいた。


しかし、ハヤトは不良ではないが、同じ部活の奴らとは仲が良かった。


小学校の頃から放課後は一緒にサッカーをして、


一緒に合宿に行き、


土日ともなれば一緒に遠征をしてきたからだ。


しかし、中学あたりから不良になる奴が増え始め、


みるみるとサッカー部が弱体化した。


不良ぶるのはファッションとしてはいいかもしれないが、


サッカーは真面目にやってほしいと思ったものである。


とはいえ、そんなことを言う勇気は全く無かった。


1学年上のキャプテンは心労のためか不登校になった。


超絶サッカーが上手かったので非常にもったいなく思ったものである。


キャプテンは卒業直前に復帰したが実力がガタ落ちで見ていてなぜか無性に悲しかったものだ。


不良集団に話を戻すと、奴らは早めに就職をして、結婚して、子供を作り、


冷静に考えるとハヤトよりもはるかにまともな社会人になっている。


あまりゴチャゴチャと考えないのが良いのかもしれない。


勉強すると考える力がつくので、


人間は勉強しないほうが良いのかもしれない。


特に中学受験などをして賢くなってからグレるとたちが悪いのである。

さて、不良集団は信じ難いことに超絶簡単な定時制高校の試験に落ちた。


しかし、奴らはそんなことは全く気にせずに、


「ハヤト、スノボー行こうぜ」


と何ヶ月後かに誘ってきた。


ハヤトは早くも学校に行くのにうんざりしてきたので、


2つ返事でOKした。


クラスの奴らと趣味がどうしても合わなかったのである。


クラスの奴らはマイナーなビジュアル系バンドの話をしていて、


髪の毛もピンクだったりでついていけないと思った。


ライブハウスもうるさいし行きたくなかった。


また授業も簡単すぎて行く意味がわからなかった。


まー、前の高校でもなんで行くのかわからなかったので、


当然に新しい学校も行く意味がわからなかったのだ。


親は悲しんだがハヤトがビジュアル系になっても悲しんだであろう。


どの道、悲しむ定めであったのだ。


ハヤトはどちらにしても常に憂鬱であった。

で、長野のスキー場に10人くらいでスノボーに行った。


そこでじゃんけんで負けたやつがナンパしてくるということになった。


ハヤトは負けて赤坂くんとナンパに行くことになった。


赤坂くんは非常に明るい性格でスグにナンパが成功した。


楽しい時を過ごした。

ハヤトはその後、東京の大学に行ったが、


きっかけは謎だが対人恐怖症になってしまった。


あまりにも雑多な人種と付き合ったせいで、


もはやわけがわからなくなっていたのかもしれない。


少年院に行った奴らから日本有数の大商社の役員の息子までいたわけだ。


そんなこんなで、エネルギー切れで1年くらい低空飛行をしていた。


幸い大学はレジャーランドであり、


試験さえ受ければ単位は取れた。


そんなどうしようもない日々を過ごしていた頃に、


ハヤトはあるカウンセリングを受けた。


カウンセラーは言った。


「君は度胸がない。宿題としてナンパをしなさい。」


なんじゃそれはと思ったが、


とりあえず出来ることは何でもやろうと思っていたのでやることにした。


ナンパは意外に普通にうまくいった。


世の中は意外に優しい良い人ばっかりだと思ったものである。


が、ハヤトは彼女が出来ても対人恐怖症は治らなかった。


どうやら度胸の問題では無かったようだ。


不思議なことに対人恐怖症はなぜかナンパの時とバイトの面接を受ける時は発動しなかった。


が、なぜか面接の後にバイトをすると発動した。


というわけで、すぐに疲れ果ててバイトには行かなくなった。


余談だが、意外に元引きこもりのナンパ師というのはけっこういて、


ネットでブログを書いているやつが多くいる。


そういう奴らはゲーム依存がナンパ依存に変わっただけでやはり不毛であることには全く変わりがない。


救いはこの世のどこにも無いのかもしれないし、


生きていても死んでも、どの道、、、不毛なのかもしれない。


ハヤトはスグに卒業した。


そして、10年の時が経った。


ハヤトは横浜のマンションにいた。


目の前にはミスチルの桜井に似たお父様と下手したら20代に見える美人なお母様。


ミスチルの桜井様は話しだした。


「息子のハジメは高校をやめて、通信の高校もやめて、引きこもっています。


家で暴れていて困っているんです。」


ハヤトは美男美女のカップルなんだから、


子供が暴れていても別にいいのではないかと思ったが、


ミスチルの桜井は「本当に辛いんです」とおっしゃる。


イケメンだとあまり辛そうに見えないのだが、、、


とはいえ、ハヤトは言った。


「わかりました。お子さんに手紙を書きましょう。


3回くらい訪問するとお子さんに会える確率が高いです」


そう言ってハヤトは手紙を書いた。


「起きたらタイミングを見て息子さんに渡してください。」


と言って帰った。


その後、ミスチルの桜井さんからメールが届いた。


「ハジメはあれから暴力が減りました。」


ハヤトは「そりゃ良かった」と思いつつ、


手紙の2通目を書いた。


何日か後にミスチルの桜井さんからメールが届いた。


「ハヤトさんの手紙はビリビリに破られてコーヒーをぶちまけられました」


ハヤトは「そりゃ、ひでーや」と思いつつ、


手紙の3通目を書いた。

で、ハヤトは何日か後にまた横浜のマンションに来た。


ミスチルの桜井さんが迎えてくれた。


ハヤトはしばし歓談した後、


桜井さんに促されてハジメ君の部屋に入っていった。


正直、ハヤトも子供に会う時はいつも緊張する。


ましてやこういう場合はなおさら緊張するものである。


不登校の支援者でも子供には会わない人が多いのは、


1つの理由は難しいからだと思う。


ハヤトは思う。


これはナンパに似ているな、、、


うーん、人生に無駄なものは無いものだ、、、


ハジメくんはやせ細っていて暗いが、


意外にフレンドリーであった。


考えてみれば、


親に敵対的な子も他人である私のような大人に敵対的なことは全く無い。


が、ハヤトも正直この子と何を話して良いのかわからない。


仕方ないので適当に目についたものを話す。


主に部屋に散乱した漫画の話であった。


それなりに仲良くなって部屋を出た。


何週間後かにまた部屋に入った。


ハジメくんの部屋は汚いので片付け始めた。


面白いことに、


不登校の子の家は親はキレイ好きだが、


子供の部屋は汚いことが多い。


ハヤトは部屋に入ると大体において散乱しているものをを片付ける。


エネルギーを吸い込む部屋というものがこの世にはあるからだ。


しばし話をしてハヤトは帰った。


その後、何回か部屋に通い、


何ヶ月後かに、


どういう話の成り行きかは忘れたが、


ハジメくんはカナダに留学することになり、


あれよあれよと、


カナダに旅立って行った。


ミスチルの桜井さんはとても喜んでくれた。

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詳しくは下記より

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