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フーテン族のライブへ行く2【2024.4.5】

こちらは前回に引き続き個人の随想・散文となります。お読みいただく方はライブレポートではないことをご承知おきいただきますよう。

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はじめてライブに行ってからしばらく、頭の中がフーテン族の音楽でいっぱいだった。
自分の傾向として、好きなものができると、食傷気味になるまで摂取してしまうことがある。あまりにも聴きすぎて「なんだかこの状況はヤバいのでは」と、ふと我に返った。
それに、彼らの音楽は自信を持ってカッコいいと言えるけれども、およそいい大人が、心酔して馬鹿みたいに聴き浸ってよいアーティストではない。と思う。(再生履歴を誰に知られているわけでもないのに、何故かそんなことを気にしてしまうのは変だろうか。)
均衡を保つ処置として、対極的なTWICEやLE SSERAFIMのK-POPガールクラッシュを聴いて頭と耳をリセットしつつ、また再びフーテン族のアングラ世界へ戻るという状態になっていた。
甘いものとしょっぱいものを交互に食べると無限にいける、的な感じで。

人事の仕事をしている私にとって、この年度末年度始めの時期というのは、非常に憂鬱で仕方なく、例年音楽を聴く心の余裕も無かった。いっそ仕事を辞めてやろうかと思うほどだったりするのだが、今年はそれがなく軽快な気分だ。ありがとうフーテン族(とK-POP)。おかげで私の就業と、職員たちの福利厚生は保たれた。

またライブに行くぞ!という意気込みでいたところ、その後彼らは名古屋→大阪の地方へ。直近に予定されていた東京でのライブは4月5日(金)、それを逃すと1ヶ月以上予定が無いことに気づいた。これは行っておかなくては。
しかし、4月5日は他2バンドとの対バンだ。初めてのライブがワンマンだったことにより、ここでまた赴くにあたっての壁に直面する。他の出演者のYouTubeを見たが、まったく客層が予想できない。私なんぞが行って問題ないものか…
でも一度乗り越えた壁ではあるし。と、迷った末、前日にチケットをXのメッセージで予約。
はちゃめちゃに忙しい仕事を差し置く影響は、全く考慮しないことにした。未来の私がなんとかするだろう。

4月5日当日、やや修羅場状態の仕事を定時で抜け出し、今回もまた東高円寺U.F.O.clubへ向かう。その前に、職場で靴をマーチンに履き替えた。最寄り駅構内の化粧室で眼鏡をコンタクトにし、髪を下ろし、ピアスと指輪を装備。メイク直しもやや念入りに。ザ・事務員の装いでライブに行くわけにはいかない。少しでも観客に相応しい恰好になれただろうか。しかしながら、職場から会場まで1時間ちょっとで行けるなんて、私はとても恵まれている環境にあるなと思う。
開演10分前には到着し、ライブハウス内へ。中は既に、DJの音楽と観客で満ちていた。
やはりワンマンのときと会場の客層が違う。男性がやや多い気がした。賑やかな分、ひとりでいると、ひょっとしたら場違いなのかもしれないと少し逡巡することもあったけれど、流れる音楽を聴きながら、ひっそりとスタートを待った。

二度目のUFOクラブ

幕が開ける。一番手としてステージに立ったのは、フーテン族彼らだった。出演順をまったく意識していなかったので、急に現れた彼らに、心の準備ができておらず一瞬たじろいだ。
が、音が鳴った瞬間、会場の雰囲気が一気に彼らの――どどめ色のような不思議な空気に呑まれる。それがなんだが痛快だった。
前回以上に楽曲を頭に叩き込んだ上で観たライブのため、音源とLIVEアレンジの違いとか、バンドに対する解像度がちょっとだけ高くなった気がする。でも、感想としては「楽しい」「最高」「圧倒的感謝」しか出てこない。深刻にボキャブラが貧している。とにもかくにも、大変良かったとだけ伝えたい。
私が前回のライブで、彼らに衝撃以上のものを感じ得たのは、ひとりでライブハウスに来た緊張感や特別感、外因的なバフがかかってのことではないかと後から考えるようになっていた。でも今回、2度目のライブを見て、そうではないと言い切れる。純粋に私はこのバンドの世界観と音楽が好きで、がっつりハマってしまっていることを実感した。今回も観にきてよかったと思う。

幕間、物販のテーブルを覗く。
CD「フーテン族の世界」を購入。サブスクで聴けるし、CDプレイヤーを持っていないからという理由で入手していなかったが、ファンとしてフィジカルの音源を持っておきたいと思った。
会計を済ませ、係のお兄さんからCDを貰おうしたところ、それは隣にいた別の男性に手渡された。え、何故に。と思っていると、手渡された先にいたのはギターの小杉氏だった。ワンテンポ遅れてそれに気づき、盛大にキョドる。CDを彼から直々に賜り、さらに少し話もさせていただいた。
先日、彼らが大阪でゲスト出演したKING BROTHERSのラジオを聴いたと伝えると、「ちゃんと喋れてましたか?」と笑顔。ギターの音もその風貌も、あまりに渋すぎる彼のことを、「キミはだけは絶対私と同じ昭和の生まれだろうよ」と思っていたけれど、実際に話してみたら20代の瑞々しさを感じ、眩しくて胃がキュッとなった。

よくよく見れば、出番を終えたメンバーの面々はフロア内に居て、なんなら私の眼前で他のバンドの演奏を見ていたりするタイミングもあったのだが、普通に居すぎて会釈すら憚られた。いつかは勇気を出して、然るべきタイミングでサインをお願いできるようになりたい。

ライブが終わり退散するとき、出入り口付近の喫煙スペースで、ボーカル山下氏を発見。二言三言会話をしたが何を話したか思い出せない。多分さっきと同じく「ラジオ聴きました」とか言った気がする。
本当はメンバーにありったけの賛辞を伝えたく、喉まで出かかっていたのだけれども、人見知りと、いい大人としての謎なプライドが、冷静になれよとブレーキをかける。
本当に君たちは最高にカッコいいよね。ヤバいよね。凄いよね。これからもっと凄くなるんだろうね。めっちゃくちゃ応援してるよ。次のライブも必ず行くよ。次の次のライブいつやるの?楽しみにしてるよ。新曲めっちゃいいよね。LP予約してるよ。届くの待ってるよ。地方のライブは友達誘って行くよ。

どれも言えなかったので、ここに供養として残しておく。

帰路の私は、笑えるくらい全身煙で燻されていた。U.f.O.clubは喫煙推奨店とも言え、さらに喫煙者のほとんどが紙タバコだったりする。煙草に厳しいご時世、これを苦手とする人もいるかもしれないけれど、あの空間にいた証として家に持ち帰れるものなので、私は結構好きだったりする。
いまだ鞄やジャケットからふと苦い薫りがすると、U.f.O.clubのライブを恋しく思う。

飾った


どのバンドのステージも楽しめた。3組もあると、もっとタイトなタイムテーブルで回すものと想像していたけれど、それぞれしっかり時間と曲数が確保されていて見応えがあった。新しい音楽に出会えるし、対バンとはなかなかもよいものだ。
会場規模による相場とかがあるのだろうけど、これでチケット代3,000円(1D+500)って対価として安すぎる気がする。もっと私から搾取してほしい。

おわり

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