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いいかねPaletteと光の踊り場

東京、埼玉、大阪、京都、福岡(田川)と普段会わない人に会いまくった3週間だったので、自分の中が共鳴したり少し不安になったり忙しい。気持ちよさも気持ち悪さも無視はしない。感じていることをメタに見るしかない。

田川に来たのは2回目だ。1回目は田川に嫁に入った友達のお家に泊まりに行った時、そして今回。

これまで私はこの町がキライだった。私自身がなにか直接の害を被ったことはない。私の友達の心を蝕んだ環境だから好きになれない町だった。実際に、足を運んで思う。私は何も知らない。何も知らないし、町や環境を良くするために一ミリも行動をしていない。だから批判も出来ない。何も知らない私の目に映る、のどかな田舎の風景と寂れゆく町並み。けれど、この町にはドロリとしたなにかが根深くあることを知っている。

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いいかねPaletteは、廃校になった小学校を利用した施設で、オープンスペースだったり楽器スペースだったり、宿泊施設やプロが使うような音響施設が利用できる。初めていいかねPaletteに足を踏み入れた時の「マジ学校やん」という感覚。私にとっては古い思い出だが、一緒に遊びに来た友達の娘は、リアル小学3年生なので「学校に泊まるなんて怖いよ!」と怯えていた。幼稚園児の妹ちゃんのほうが「私は泊まりたい!」と意気揚々だ。いいね、今度は泊まろうよ。GWとかどうかな。みんなで泊まったらきっと楽しい。

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今回の主たる目的は、樋口さんとのPodcast収録だったのだけれども強烈なインスパイアは踊り場から見た風景だった。樋口さんのワークショップ(パソコンを使った音楽制作(DTM)の講義)の参加者と樋口さんが、玄関においてある楽器ブースでセッションを始めた。私はそこに偶然に居合わせた。

セッションする樋口さんと旅する漫画家シミさん

なんだろう…その時の私は、傍から見ていただけで、ただ音楽と一緒にスウィングして拍手してその時間を享受しただけなのに、思い出したら泣きそうになる。「弾けない、弾いたことない、忘れた」と言って楽器に触ることを戸惑っていた人たちが、樋口さんと一緒にセッションをすると、目がキラキラして笑顔になって、自然と拍手が起きた。あの煌めきはなんなんだろう…。あの踊り場から見た、光の景色はなんだったんだろう…。照明がついわけじゃないのに空間のトーンが明るくなる、あの時間はなんだったんだろう…。「できた」という小さな達成が胸に宿った時の、あたたかくなる感じは…。うまく言葉にできない。

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2泊の滞在を終えて、私のいいかねPalette体験は終わった。田川はまだ好きじゃないけど、いいかねPaletteは好きだ。集まっている人たちも、こころなしかゆるやかで穏やかに過ごしているように感じる。

ファンタジー小説の十二国記に出てくる野木を思い出した。主人公が投げ出された異世界は、魔物が人を襲い、人が人を騙す殺伐とした世界だった。十二国記の世界では動物も植物も人間も木に実って生まれてくる。命を生み出すのが野木であり、その木の下では殺生ができない。だから獣にも人間にも襲われない。厳しい世界を主人公がサバイブしていく旅の中で、唯一心を休める場所が「野木の下」なのである。

いいかねPaletteでそんなことを思う。生きてるだけでいいんだ。サバイブするのに苦しくなったら休み休みさ。

またこの場所にまた遊びに来ようと思う。今度は友達と一緒に。

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