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75歳の生き方~「メタモルフォーゼの縁側」vs「PLAN75」

 根が単純なので、どうしても元気をもらえる映画が好きです。公開中の「メタモルフォーゼの縁側」と「PLAN75」どちらも70代の女性が主人公のひとりなのですが、こういう風に75歳を迎えられたら素敵だなあ、と思ったのは「メタモルフォーゼの縁側」の雪さんでした。ふたつの映画の感想になります。

1.メタモルフォーゼの縁側 狩山俊輔監督

メタモルフォーゼの縁側

 主人公は17歳の高校生うらら(芦田愛菜)と75歳の雪さん(宮本信子)。書店でアルバイトするうららが、きれいな表紙に魅かれてBL本を手にした雪さんと出会ったことから、二人の間に、BL本を通じて友情が芽生えていく様子が描かれます。
 母子家庭で学校でさえなくて、毎晩、こっそりBL本を読んでいるうららと夫に先立たれ、習字教室をしながら一人で暮らしていた雪さん。ふたりの好きな漫画が、コメダ優(古川琴音)のBL本で、好きが一緒で繋がっていきます。縁側で感想を言い合い盛り上がったり、二人で優先生のサイン会に参加したり、雪さんの協力でうららが自分で漫画を描いてプリマに出してみたり。
 「ハケンアニメ!」同様、いくつになっても、好きって素晴らしいなあ、と思わせてくれる映画でした。後半、下手ながら一生懸命漫画を仕上げるうらら。そんな彼女を腰痛で身体を壊しながらも応援し、自分自身の若いころと重ねる雪さんの呼応する様子に、温かい気持ちが胸に広がりました。(雪さん、死なないでと祈りながら)
 恐らく、一人暮らしの孤独や体調の不安もあるでしょうが、それ以上に強い気持ちで雪さんが「好き」を獲得していく様子は、お茶目な人柄もあいまって、素敵でした。メタモルフォーゼとは、ギリシャ語(ドイツ語)で、変身、という意味だそうです。縁側で、うららと話す度に変身していく様子、こちらまでわくわくでした。

2.PLAN75  早川千絵監督

PLAN75

 第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれた作品です。
 残酷な設定でした。尊厳死とは名ばかりで、政府主導のもと、75歳以上の老人の死の介助をするというもの。主人公ミチ(倍賞千恵子)は78歳で夫に先立たれ、ホテルの清掃係をしてましたが、投書があって老齢を理由に仲間と解雇されます。
 高齢を理由に職はなく、友人の孤独死から、誰にも迷惑をかけたくない、という思いでPLAN75に申し込みます。電話応答の成宮(河合優実)との束の間の会話を楽しみますが、やがて死の時期が来て・・・。

 まだ元気な78歳の生き方、誰にも迷惑かけて死にたくないという気持ちはわかるのですが、「メタモルフォーゼの縁側」の雪さんのように好きをみつけて生きてほしいと願ってしまいました。真面目なミチさんならではの選択かもしれないですが。ラストに一抹の希望があって、りんごの歌が哀しさとともに明るさも感じられました。

3・それぞれの主人公の生き方

「メタモルフォーゼの縁側」では、後半、うららの漫画が下手で売れなかったり、雪さんとうららが優先生のサイン会ではしゃぐ場面は温かい気持ちで嬉しくて泣きました。一方で、「PLAN75」は律儀なミチさんが執行が決まり、成宮さんにお礼を言う場面は、切なくて悲しくて泣きました。どちらの70代の主人公の女性にも共感できるし、応援したくなりましたが、やはり、「好き」を持った雪さんの生き方の方に憧れてしまいました。

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