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「マイブロークンマリコ」~天職と感じた女優~

 NHKの朝ドラ女優には、「はかない、はんなり、はつらつ」の3Hが必要だ、と知人のY氏がフェイスブックに投稿されており、なるほどなあと思いました。若手女優に置き換えると3Hは、「はかない、はにかみ、はつらつ」になり、それを満たす演技力のあるのは誰だろうと考えると、わたしは一番に永野芽郁さんを思いました。
 去年公開の「そしてバトンは渡された」での主人公の演技は、そのたたずまいだけで絵になりました。原作を読んだときは、親が幾度も変わってもひねくれず、素直な、そして恥ずかしがり屋の女の子にぴんとこなかったのですが、映画で彼女が演じるとしっくりときたのです。今回も親友を失って逃避行する難しい役柄ですが、彼女は見事に主人公のシイノを演じています。

 超美人でないけれど、こういう人、透明感あり、どんな主人公も演じ切る永野芽郁さんのような女優さん、女優さんが天職だと思った人でした。


☆「マイブロークンマリコ」タナダユキ監督作品

 1.あらすじ

 85分全編永野芽郁が出ています。逆に、彼女だから観れる、惹き込まれました。父親や恋人から虐待されていた親友マリコ(奈緒)が自殺します。マリコに前ぶれなく死なれたシイノ(永野芽郁)は、彼女の家族から骨壺を奪い、彼女が行ってみたいといっていたまりもがおか岬に散骨することにします。ブッラク企業を無断欠勤し、夜行バスに乗り、朝食には牛丼を二杯食べ、スリに逢い、鞄をとられ、暴漢に襲われている女子高生を救い、シイノはマリコを散骨する旅をします。途中で出会うマキオ(窪田正孝)が彼女を励ます言葉は、「死んだ人を思いだしてあげることが生きている人間にできること。生きなくては」は金言でもありました。散骨後、帰宅したシイノの家にマリコの遺書が届いていました。

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 2、女ともだちを描く

 タナダ監督は、社会のなかで報われない若者たちがもがく姿を上手く描き、駆け抜けるようなストーリー展開でした。
 永野芽郁さんの、煙草をふかし、クソ上司と呼び捨てし、暴言を吐き、包丁を振り回して骨壺を奪取するヤンキー的スタイルは、見ている内にイタについてきます。たった一人の友達マリコのために。彼女なりに、できる最善を考えたのです。一見、滑稽にみえる行動ですが、熱い思いが伝わってきました。損得を超えた行動、女ともだちをただ、ただ思う行動。

 恋愛や家族愛でなく、友人のためにとる行動。誰かを思って生きる姿。

 ラストは賛否両論ありますが、わたしはこの終わり方で良かったと思いました。あえて、手紙の内容にふれず、彼女の表情だけで魅せたので、余韻、広がりができました。お涙頂戴の手紙の内容にすれば、彼女とマリコの二人の関係に収束してしまうのが、伏せたことで、読者にゆだねられ広がったと思いました。

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3.シイノを演じて

 シイノ自身も恋人おらず、ブラック企業の営業で、煙草を吸い、一人アパートに住むという女性です。永野さんは演じるために、ニコチンのない煙草を使って、喫煙シーンを4カ月間練習したそうです。

 食事のシーンでは、食欲旺盛で、気持ちの良い食べっぷりでした。マリコの供養の分まで牛丼注文したうえに、遺骨前に牛丼に箸をさして、朝から二人分平らげたシイノの強さには、生命力あふれる若さとあっけらかんさが出て、好感シーンでした。マキオに貰った弁当を駆けこむ姿も。

  NHKの朝ドラ「半分。青い」や映画「キネマの神様」「帝一の國」でみせた正統派の演技とは違い、今作品は、一見ヤサグレスタイルの企業戦士を演じているのですが、永野芽郁さんは見事に演じきって、疾走しています。

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