事業創出の原理原則5 自社分析-事業の3要素

「孫子の兵法」で有名な孫氏とは、紀元前500年頃の中国古代・春秋時代の武将、軍事思想家、孫武の尊称です。兵法書『孫子』の作者とされています。「孫子の兵法」は、現代では、戦略のビジネス本としても読まれています。「知彼知己 百戰不殆(相手と自社のこともよく知るなら、100%勝てる)。不知彼而知己 一勝一負(自社を知っていても相手を知らなくければ、五分五分の戦いになる)。不知彼不知己 毎戰必殆(相手のことも自社のことも知らないなら、戦うたびに負ける)」。ビジネス的に解釈すると、このようになります。「彼」は戦国時代では「敵」ですが、現代のビジネスで一番に知るべき「彼」は「競争相手」でなくてまずは、「顧客」です。「彼」と「己」は同等に書かれていますが、語順を考えると、孫子は「己(自社)」の方が、優先度が高いと考えていたと思います。
 
・自社のミッションとビジョンを知る : 私は、初めて担当させていただく企業は、その企業の「事業概要」と「企業理念」と「社長のご挨拶」は必ず最初に見ます。その企業がどのようなビジネスをやっているかとともに、どのようなことを目指そうとしているのかを知るためです。「企業理念」は「ミッション」と表現されることが多いです。一般的な定義ですが、ミッションは、使命、目的、企業の存在意義を意味します。会社がどんな社会を実現するのかをあらわしたものです。会社内部に浸透させたい考え方で、企業の判断基準にもなるものです。ビジョンとは、目標、方向性。行動指針を含む場合もあります。会社が組織としてありたい姿や、ミッションを達成させるための行動指針を示したものです。表向きに会社がどういうものかを示したものです。私は、特に「ミッション」を注意して見ます。ゴールはありませんが、企業が目指す最終目的だと判断します。表現は違いますが、ミッションを何社か見てみます。①セブンイレブンは、私たちは、いかなる時代にもお店と共に、あまねく地域社会の利便性を追求し続け、毎日の豊かな暮らしを実現する。②ユニクロの、ステートメント ( Statement)は、服を変え、常識を変え、世界を変えていく。ミッション (Mission)は、本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します。独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します。③リクルートの、基本理念は、私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。ビジョンは、 [ 目指す世界観 ] Follow Your Heart。一人ひとりが、自分に素直に、自分で決める、自分らしい人生。本当に大切なことに夢中になれるとき、人や組織は、より良い未来を生み出せると信じています。ミッション [ 果たす役割 ]は、まだ、ここにない、出会い。より速く、シンプルに、もっと近くに。です。読むと、会社として、そうした方向性を目指して仕事をしているのだろうなと納得感があります。
 
・事業の3要素 : 企業はミッションの実現のために事業を行っています。事業は3要素で構成されています。①何を(What)。②どこで(Where)。③どのように(How)です。①「何を」は、どんな商品やサービスを取り合っているかです。マーケティングミックスの4PのProductに相当します。Priceもここに含めて考える場合もあります。②「どこで」は、どこの市場で、どのような顧客に対して販売しているかです。4PのPlaceに相当します。③「どのように」は、どのように販売しているか、どのように製造しているかです。4Pでは、Promotion (販売促進) に相当します。そして、企業は、この3要素から、何らかの④「顧客提供価値」を生み出して、ビジネスを行っています。ですから「顧客提供価値」は、企業理念(Mission)と繋がっています。
 例えば、私の会社の主な3要素は、①「何を」は、プロジェクトマネジメント研修、法人向け営業研修、マーケティング研修とそれに付随するコンサルティング」です。②「どこで」は、「国内企業、外資企業、主に、製造業と製薬企業とIT企業、近年は、ベンチャー企業」です。③「どのようには」は、小規模な会社ですから、販売活動に時間はさけませんので、「色々な研修会社とパートナー契約を結ぶ。HPへの問い合わせ。顧客からの紹介」になります。④の「提供価値」は、「企業の中で、暗黙知で行われている最適な営業活動、プロジェクト活動を可視化し標準化することで、企業の組織能力を強化する」です。提供している「何を」は、一見して別々の内容のようですが、共通しているのは、ロジカルシンキングでありPDCAです。
私が目指している(ビジョン)のは、「勘と気合と、経験と根性」で行われている企業の活動を精神論中心の活動ではなく、もう少しロジカルな活動にして、「楽しい仕事楽しい会社」になるようにお役に立ちたいと考えています。いろいろな企業で、人事の方などと「研修や人財育成」に関してお話しさせていく機会がありますが、多くの日本企業は、個人に対しての「知識やスキルやマインド」にフォーカスしますが、組織として、「どのようなプロセスやルールや仕組み」で運用していこうかと考える、「組織に対する視点」が弱いと感じています。個人的偏見ですが、個人としては日本人の能力は高いですが、組織としてシステマチック(systematic、体系的な、計画性のある)に効率的に運営することは劣っていると思っています。多くの仕事が個人の能力と努力に依存しています。例えば、「プロジェクトマネジメント」の知識とスキルがない企業でも、変化の激しい時代ですから、プロジェクト的な業務は頻繁にあります。プロジェクトの定義は、独自性があり有機的な活動です。そうした企業でプロジェクトが始まると、最初に「どうやってやろうか?」と方法論の議論が延々と始まります。当然、標準的なプロセスもありせんから、何時までも作業が先に進まないか、行ったり来たり戻ったりします。運よく、力業で何とか終了しても、何の文書化もされていませんから記録が残りません。こんなことを毎回繰り返しています。企業の重要なリソースとして「人、物、金」が挙げられますが、現代では、さらに「情報(知識、ノウハウ)と時間(スピード)」があります。このやり方では、それらすべてを、無駄に浪費しています。こんなやり方で、世界と競争できるわけがありません。
無印良品の元社長の松井忠三氏は、「仕組みが9割」と著書に書いています。店舗でやるべきことをきちんと文書化(マニュアル)して決めておくという内容でした。共通化は、共通言語に繋がります。話し合うための土壌になります。例えば、事業が急拡大している企業ほど、多くの人材を中途採用で採用します。その場合、各々の経験や知識の中で仕事を進めていきます。そのため、個人のスキル知識はあっても、組織として集合した力にはなかなかなりません。そうした企業に対して、業務の「可視化、プロセス化、ルール化、ドキュメント化」を行うことにより、京塚言語化でき、業務が効率的になり企業力が強化され、さらに発展する土台になります。実際にそのようにした企業は、急成長しています。

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