事業創出の原理原則4 顧客提供価値の構成要素

・顧客提供価値の構成要素 : 顧客提供価値の主な構成要素は5つあります。①商品。②価格。③利便性。④関係性。⑤共感性です。①商品の内容は、機能、性能、品質、デザインなどです。②価格の内容は、安さ、費用対効果、保証、コスト全般、納得感、お得感などです。③利便性の内容は、使い勝手、良い対応、良いサービス、購入しやすさ、選択しやすさなどです。④関係性の内容は、理解してくれる安心感、人間関係、信頼関係などです。⑤共感性は、ブランドイメージ、知名度、好感度、企業への共感などです。

テレビショッピングを見ていると、売れるバイヤーは、顧客提供価値の構成要素から自分の得意な説明をしています。例えば、①商品では、よく切れる包丁で「トマトのスライスも、こんなにきれいに切れます。」と実証して説明していました。いいなと思いましたが、考えてみれば、私は居酒屋さんでしかトマトのスライスを食べません。②価格は、「男性用の時計が、1万円のところ、今回は、女性用の時計も付けて、ペアウォッチで、1万5千円。」と説明していました。いいなと思いましたが、考えてみれば、私には新しい時計は必要ありません。③利便性は、「テレビとビデオをセットでお買い上げいただければ、面倒なセッティングや配線は、当社で行います。」と説明していました。いいなと思いましたが、考えてみれば、配線ぐらいは自分できます。⑤共感性は、食品の味などテレビで伝えづらいものに関して、生産者を紹介しています。試食して大げさに「ものすごく美味しいです。」と説明していました。いいなと思いましたが、考えてみれば、そんなに好きな食べ物ではありませんでした。④関係性は、テレビショッピングでは、あまり見ることはありませんが、多くの物を買ってくれる優良顧客に対しては、個別に有利な条件の商品を案内するケースはあるようです。B2Cの保険営業などでは、特に人間関係や信頼性で差別化しています。

商品、価格、利便性は、機能的(付加)価値に、関係性、共感性は、情緒的(付加)価値に分類されます。機能的(付加)価値の行動は、論理的に説明して、顧客を納得させで購買行動につなげようとします。情緒的(付加)価値は、感覚的な説明をして、顧客の感情に訴えかけて購買行動につなげようとします。テレビショッピングで売れるバイヤーはマーケッターとしても優秀です。

技術革新のスピードが速く、多くの商品やサービスがある現代では、「機能的価値」だけの差別化で優位性を保てる期間は短くなっています。次々と高機能で便利な新商品が開発されていく状況では、たとえ今は優位性がある「機能的価値」であっても、競合他社から新商品で、その優位性がすぐに無くなります。「機能的価値」での競争では、直ぐに「レッドオーシャン」での競争になってしまいます。だからこそ、多くの企業は、関係性と共感性を強化して、競合他社と差別化して、優位性を高めようとしています。関係性や共感性は、企業文化や社風にも関係します。簡単に模倣することが難しい要素です。

「好きな気持ちや嫌な気持ち」の感情は「自然に湧き出てきます」。言い換えると「無意識」に発生するため、感情自体を抑えることはできません。近年の脳科学では、私たちはあらゆる状況において、何らかの「感情」が「理性(思考)」に先立って発生していることが証明されています。人は“感情”で決めて“理性”で言い訳している。と言われている理由です人の判断は、理性より感情で行われます。であれば、感情に上手に訴えかけるマーケティングが効果的です。

 

・顧客満足度 : 顧客満足(Customer Satisfaction / カスタマー・サティスファクション)とは、企業が提供する商品やサービスが、顧客の期待値にどの程度応えているかを定義する用語です。顧客は「商品」を買っていると考えられがちですが、製品を買うことで得られる「満足」を買っています。経営学者のドラッカーは、「顧客は、満足を買っている」と言っています。テレビを見ていると、「スニーカー」を何百種類も集めている芸能人を取り上げています。芸能人は、「スニーカー」を買っているのではなく、満足度を買っています。履くための「スニーカー」なら、せいぜい5足もあれば十分です。

パレートの法則は、「全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出している」という経験則です。マーケティングでは、「売上高の8割は、全顧客の2割の顧客によって占められている。」と言われます。私の経験からも実感はあります。全顧客の2割の顧客は、すべてが多くの商品・サービスを購入してくれるリピーターです。要するに、全てのビジネスは、大口のリピーターの顧客に支えられているということです。企業の売上は、熱心なファンに支えられています。だからこそ、顧客満足度が重要視されます。

 顧客満足度は、「顧客の期待」と「企業の提供価値」の相対で決まります。顧客の期待に対して、どのような価値を提供できたかによって顧客満足度が変わります。顧客が満足するのは「商品購入前に持っていた期待値を、商品の魅力が上回ったとき」です。期待値を上回れば、「満足、喜び、感動」に繋がります。期待値を下回れば、「落胆、失望、怒り」に繋がります。多くの人がSNSで繋がっている現代では、企業の、良い評判も悪い評判もすぐに拡散します。そして良い情報を見た顧客は、最初の段階から、期待値が高くなっています。期待値に応えるのが難しい時代になってきました。例えば、食べログで高評価の飲食店に行くときには、最初から期待していきます。

提供価値が、期待値の①「当たり前」のレベルに収まれば、「安心」のレベルになります。提供価値が、②「期待の範囲」であれば、「満足」に繋がります。提供価値が、③「期待以上」であれば、「満足」のレベルになります。提供価値が、④「予想外」であれば、「感動」のレベルになります。ファンになってくれる顧客、ロイヤリティの高い顧客は、「期待以上」と「予想外」の提供価値を企業から受けた経験のある顧客です。ドラッカーは「企業の目的は利益を追求することではなく、顧客を創造することである」と言っています。顧客とは、「継続的にお取引をしてくれる顧客」のことを意味していると思っています。

提供価値が「当たり前」「期待の範囲」以下だと感じた顧客は、2度と取引をしないか、機会があれば取引を止めたいと考えています。私たちは、購買者の立場でもあります。自分自身のことを考えたときに、「期待以下」の提供価値だと感じた、商品、サービスは二度と買いません。「期待以上だと」感じればリピートします。

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